大谷亮平インタビュー「現役の野球選手を演じてみたい」 | Numero TOKYO
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大谷亮平インタビュー「現役の野球選手を演じてみたい」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.50は俳優、大谷亮平にインタビュー。

現在公開中の映画『ゼニガタ』で、闇金を営むダークヒーローを演じる大谷亮平。韓国で俳優デビューし2016年から日本に拠点を移した彼の破竹の活躍ぶりと、その私生活にフォーカス!

闇金の「富男」に近いのは、人を直感で見抜くこと

──映画『ゼニガタ』では、寡黙な闇金「銭形富男」を演じていますが、現場はどんな雰囲気でしたか?

「2週間、沼津でロケをしていたのですが、ほとんど毎日雨で、台風が来るほどの荒天だったんです。また、夜のシーンが多かったので、現場も映画のダークな雰囲気そのまま。だから、素に戻ることなく役のままでいられました」

──「富男」は、表向きは居酒屋の店主、深夜からは10日で3割という暴利の闇金です。役柄と自分がシンクロするところはありましたか?

「唯一の共通点は、人を見るところです。富男は店のカウンターの中にいて、借金の債務者を品定めするようにじっと見るんです。この人にはどんな価値があって、その人の今後を見届けるか、それとも突き放すのか。僕も同じように人を見定めようとするところがあるんですね。ソウルで12年間過ごして、日本とは少し価値観が違う場所で俳優のキャリアを始めました。芸能界以外でもそうかもしれませんが、そこにはいろんな思惑の方々がいるわけです。でも、雰囲気と話し方でなんとなくその人のことがわかる。富男とはそこが近いかもしれません」

──富男は感情の起伏がなく、何を考えているのか読み取れないミステリアスなキャラクターでした。

「富男はカウンターの中から、債務者に対峙するわけですが、感情がブレないように軸をしっかりと持つようには心がけました。闇の世界で生きるには、心が揺れて感情を見抜かれることは絶対に許されない。ただ、弟の静香(小林且弥)に対してだけは特別な感情があるので、それはあえて表現して、コントラストをつけました。でも、完成試写で見た時に、思っていた以上に感情が漏れていることに気付いて、それは興味深かったですね。感情を表現しないつもりでいたけれど、この場面ではこういう表情になるんだ、と。この役はダーク“ヒーロー”なので、そのヒーローの優しさが滲んでいればいいなと思います」

──ダークな役柄を演じることについてはどう思いました?

「僕には、裏表のない正義のヒーローより、どこか闇を抱えていたり、暗い部分を持っていたりする人物の方が合っていると思います。この映画には、100%幸せな人は誰もいないんです。誰もが何かを抱えています。富男も闇に生きているけれど、同じ闇の世界に落ちてしまった人間に対して、自分は何ができるのか、もしくは何もしないのか。それをカウンターの中から見定める。そんな人間像がしっくりきました」

──ちなみに、ご自身のお金の使い方は

「あまり物欲がないんです。食にこだわりもないし、何かをコレクションする趣味もない。使わないものを置いておくなら、むしろ減らしたい。だから自宅も最小限のものだけでミニマルです。身の回りのものは、大事な人からもらったもので固めたいので、デザインやブランドよりも、誰がくれたのかを大切にしたい。でも、車と家は欲しいかな。服もそろそろ、何か買ってみようかとは思っています」

──じゃあ、お金は貯まる一方?

「そうでもないので、何か原因があるはずなんですけど(笑)」

日本一を目指したバレーボール。その先に見つけた俳優の道

──富男は感情を表に出さない人物ですが、大谷さん自身は?

「突き抜けて明るくはないですが、根暗なわけでもなく。でも、感情は抑えるタイプかもしれません」

──それは昔から?

「中学校の頃は、もっと感情の起伏がありました。小学生からバレーボールをやってきて、中学までは自分が一番上手いと思っていたんです。それが高校、大学と進学するにつれ、自分よりも身体的に恵まれていて技術も高い選手がいることを知り、挫折を経験し、負ける側の気持ちも理解するようになった。それで少しずつ性格も変わっていった気がします。自分が前に出るよりも引いて周囲を俯瞰して見るタイプです。だから、あまり調子に乗ることもないですね」

──バレーボールでポジションは?

「全てのポジションを経験しました。中学のときはエースアタッカーでしたが、周囲が190cmを超える選手ばかりになると、エースだけじゃなく守備もつなぎもやらないと。ずっとバレーばかりやってきたので、一度くらいは日本一を経験してみたいと考えたことがあったんです。そのためには、国体に大阪代表として先発で出るしかない。それでセッターに転向しました。それで国体には出場したんですが、三回戦で負けちゃいました」

──大阪代表になるほどの実力がありながら、モデルに転向した理由は?

「バレーボールはどうしても身長が重要になるスポーツなので、高校に入った頃、身長がそんなに高くない自分はこの先、難しいのかなとは感じていました。大学で進路を選ぶ段階になって、体育教師を目指そうかとも思ったんですが、今ひとつしっくりこない。それで別世界にチャレンジしてみようとモデルを始めて、すぐに韓国から声をかけてもらったんです」

年齢的に最後だから、現役の野球選手を演じてみたい

──モデルを始めて、すぐに韓国へ?

「モデルを始めて少し経ったころに、韓国のCMに出演したんです。『次に韓国に来るときは、帽子とサングラスが必要だよ』と言われたんですが、てっきり冗談だと思って、後日、明洞でCMの巨大ポスターが貼られているというので記念写真を撮ろうと向かったら、いきなりたくさんの方に囲まれて。初めての経験だったし、CMを評価してくれたことも嬉しくて。その後、本格的に韓国でのオファーをいただいて、身体ひとつで韓国に飛びました」

──韓国では言葉の壁は感じましたか?

「韓国語を勉強したとはいえ、俳優デビューはネイティブから程遠い韓国語で、周りの人が何を言っているのかわからない。言葉の面では難しさがありましたが、韓国の方は日本人が好きなのか、可愛がってもらったという印象しかありません。もちろん苦しいことはあったけれど、韓国での生活も人間関係もすごく充実して楽しかった。最初は2年契約でしたが、結局約12年間、人生の約3分の1を韓国で過ごしました」

──2016年春から日本での活動が始まりますが、日本に戻ろうと思った理由は?

「韓国でたくさんの作品に出演して、人気と知名度は上がっても、やっぱり言語がネイティブじゃないから、重要なキーとなる役であっても、メインを演じることができない。外国人をメインにしてもらうのはこの先も無理だろうなと限界を感じたときに、日本からお話をいただいて。縁ですよね。そのタイミングで全ての条件が揃ったので、本当に運が良かったと思っています」

──拠点を移してから2年経ちますが、日本での生活はいかがですか?

「ふと気を抜くと、どこにいるのか、わからなくなります。日本にいるのに『今、日本語が聞こえた!』と思うこともあるし、韓国の友人に似た人を見かけると『ここは韓国? 日本?』と錯覚することもあります」

──この2年で、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』や『奪い愛、冬』のようなラブストーリーから今回の『ゼニガタ』まで、様々なジャンルの作品に出演していますが、これから挑戦したい役柄は?

「ラブストーリーでも、毎回、異なるタイプの役をいただくので、それぞれの作品で新しい発見もあるし、いつも新鮮な気持ちで臨んでいます。挑戦してみたいのは現役の野球選手。今年、38歳なので現役アスリートをリアルに演じられるのは年齢的に最後かなと思っています。それに、もし小学校のときに選んでいたのがバレーボールではなく、野球だったらどんな人生だったんだろうという思いがあって(笑)。肩が強いのでピッチャーになっていたら…。もしかしたら全然ダメだったかもしれないし、甲子園に出られたかもしれない。そういう意味でも野球には興味があります」

結婚は慎重派。パズルのピースがはまったときに

──休日の過ごし方は?

「軽く走ったり、ジムに行ったり。セリフをゆっくり覚えたりして、次の仕事の準備に充てることが多いです。趣味がないので、買い物にもいかないし、特別なことはなにも。まとまった休みがあれば、韓国や台湾の友だちに会いに行きたいとは思っていますが」

──オフでスポーツはしていますか?

「バレーボールのチームに入っています。バレー好きの仲間が集まったチームなんですが、レベルも高く、全日本男子には勝てないけれど、全日本女子とはいい勝負ができるくらいのレベルはキープしています。とはいえ、年齢とともに自分のパフォーマンスが落ちていく歯がゆさはあるし、この年齢だと太りやすかったりもするので、そこはギリギリ踏ん張りたいなと。ジャンプサーブも身体に負担がかかるんですけど、アタックの瞬間が爽快なので、できる限り続けていきたいですね。芸能界にサッカー経験者は多いんですが、バレー経験者が少ないんですよ。いつか芸能人男子チームで、全日本女子に戦いを挑んでみたいですね」

──2年後に40歳を迎えますが、それまでにやりたいことは?

「仕事もそうですが、全ては縁とタイミングなので、年齢で目標は設定してません。自発的に動いてもうまくいかない方なので、流れを受け入れてなるようになるんじゃないかな。2年後というとオリンピックの頃だから、あっという間でしょうね」

──そろそろ結婚を考えたりもするのでは?

「いずれは。今どきじゃないかもしれないんですけど、結婚に対しては慎重なんです。ひとつパズルのピースが噛み合わないと、違うのかなと思ってしまうタイプなんです。親には心配をかけてますが、これもやっぱり縁とタイミングですね」

──子どもが欲しいという願望は?

「それなんですけどね(前のめりで)、最近、初めて姪ができたんです。それがすごく可愛くて。仕事で大阪に行くたびに、実家に帰って姪を抱っこしてます。最近ハマっていることを聞かれたら、姪と遊ぶことと答えてしまうくらい。毎日、家族から送られてくる姪の動画に癒されています(笑)」

大谷亮平主演作『ゼニガタ』の見所をチェック

Photos:Gen Saito Interview&Text:Miho Matsuda Edit:Masumi Sasaki

Profile

大谷亮平(おおたに・りょうへい) 1980年大阪府生まれ。2003年、モデル・俳優として韓国を拠点に活動を始め、『神弓-KAMIYUMI-』『バトル・オーシャン 海上決戦』などに出演。2016年より日本で活動を開始し、ドラマ『ラブソング』『逃げるは恥だが役に立つ』『奪い愛、冬』でブレイク。公開中の映画『ゼニガタ』で映画初主演を果たす。さらに6月8日公開『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています』6月22日公開『焼肉ドラゴン』ほか公開作品が控える。

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