成田凌インタビュー「人には愛で向き合いたい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

成田凌インタビュー「人には愛で向き合いたい」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.45は俳優、成田凌にインタビュー。

強烈な住人が暮らす〈ギザギザアパートメント〉に、全身タトゥーと赤いモヒカンの楽人(成田凌)と、くたびれた30代半ばの草太(井浦新)が、自堕落な共同生活を送っていた。大麻の密売で生計を立てる彼らの破滅と再生の物語を描いた異色の映画『ニワトリ★スター』に込めた想いと、俳優とモデルという2つの仕事について成田凌に語ってもらった。 井浦新と男二人の共同生活 ──〈楽人〉は破滅的でありながら天真爛漫さをもつキャラクターですが、共感した部分はありますか? 「この作品は、まず脚本が面白かったんですよ。そして〈楽人〉はすべての感情を全身で表現するキャラクター。そういう役に出会えるのは少ないので、やりがいを感じました。作品を作っていく過程も面白かったし、その環境を用意してくれたこともありがたくて」 ──本作のコピーは「傷だらけのファンタジー」ですが、この映画でのファンタジーを一言で説明すると? 「夢も、愛も、宇宙もなんでも詰まってる。主語をつけるとしたら〈僕らの〉だから、メインは友情です。〈ファンタジー〉は『ナルニア国物語』のようなものありますし、サッカーでいうと、ロナウジーニョがファンタジスタと呼ばれたりもします。観た方がそれぞれに解釈してくれたら嬉しいです」 ──撮影の前に、草太役の井浦新さんと大阪で1週間の共同生活を送ったそうですが、そこでどんな役作りをしたのでしょうか。 「まず、お互いを役の名前で呼び合いました。新さんは関西弁で喋って、僕は敬語をやめました。共同生活はお互いが馴染むことが目的だったので、それ以外は普通の日常です。一緒に食事して、眠って。作品の舞台は東京なんですが、大阪で撮影したので、観光では行かない場所にも、二人で足を運びました。この仕事をしていると本当に時間がないので、ある意味で時間を無駄にして過ごすことがとても贅沢な経験でした」 ──共演した井浦新さんの印象は? 「すごく優しい人です。今回、撮影が手持ちのカメラだったので、カメラを持つ人とピントを合わせる人がそれぞれ担当していたんですが、新さんと『どっちの演技にフォーカスが来るか勝負だな』と言い合ったり。撮影中は兄弟のように心の距離が近いところにいたので、撮影が終わって井浦新と成田凌に戻ったときに、寂しいというか、普通の共演者としての距離感に戻っちゃったんだなって、親に勘当された子どもみたいな気持ちになりました(笑)。今でも連絡して会うこともあります」

映画制作の一員なんだと責任感が生まれた

──作中では、赤く染めたモヒカン、全身タトゥーという、これまでにないハードなルックスですね。

「僕自身は懐かしくて。この仕事を始める前は美容学生だったので、髪は基本的に白で、そこに色を入れていたので、いつもカラフルだったんです。赤い髪だったこともあるし、あの頃に戻ったような感覚がありました。タトゥーはシールなんですが、全部貼ると1時間以上かかるし、貼ったら簡単には落ちないし、どちらにしても時間がかかるので、なるべく付けっ放しにしてました。睡眠時間優先です。朝、起きたらニワトリ印のワックスでセットするだけで、メイクもしないから15秒で準備は完了してました」

──撮影中に印象的だったことは?

「実は、撮影中の出来事はよく覚えてないんです。忘れたわけじゃなく、それだけ役に入り込んで〈楽人〉として生きていた。僕はそう信じています。撮影期間中は東京で別の仕事があっても、東京の友達には会わないようにしてました。自分の中から〈楽人〉が抜けてしまうという恐怖心もありましたし、集中して取り組みたかったので」

──かなた狼監督は巨大アート建物〈道草アパートメント〉のオーナーであり、ヒップホップ集団〈TOM YUM SAMURAI〉を率いて国内外で活動するミュージシャン、映像作家と様々な顔を持つ人物ですが、どんな交流をしましたか?

「監督とは撮影中もじっくり話しました。いつもカッコつけてますけど、すごく繊細でロマンティストで愛のある人です。監督は今回、映画3本分くらいカメラを回していたんです。それで知らない間にスピンオフを作っていたらしく、去年、監督に呼び出されてそれを観たんです。熊さん菊さんという個性的な共演者に挟まれて。2017年で一番無駄な時間でした(笑)。本人にもそう伝えましたけど、そういう時間っていいですよね」

──撮影の合間に、共演者と話す時間はありましたか?

「鳥肌実さんには、にんにく卵黄を勧められたり、若くて痩せてる頃の画像を何度も見せられたり(笑)。鳥肌さんは今でもカッコいいですよ。今回は、監督だけでなくスタッフの方々や出資者の方とも話す機会が多かったので、プロジェクトの一員という意識が強くなりました。表に出る側として、この作品を背負う責任も感じています」

友達に注意できる優しい人と一緒にいたい

──俳優とモデルの仕事は、どうやって切り替えていますか?

「モデルは成田凌として服をどう見せるかに集中しますが、演技はその役を生きるわけだから、全く違う仕事です。モデルも企画によってシチュエーション設定やキャラクターを作ることもありますが、基本は自分自身。その点では難しさもあります。芝居はセリフを覚えることが大前提なので、ずっと宿題をしているような感覚です。一番難しいのは、演技には正解がないことですね」

──ドラマ、映画、モデルと多忙ですが、オフの過ごし方は?

「時間の使い方が下手で、寝過ぎて逆に疲れたりしてます。丸1日休みがあると、体が縦になってる時間がないくらい、いつも横になっていたい(笑)。ダラダラしちゃうんですよね。だからといって、休みの日にわざわざ出掛ける理由も見つからなくて。理想的なのは午前中に仕事が終わって、午後に出かけること。絵が好きなので気になる個展や美術館もたくさんあるし、動物園や博物館、画材屋さんにも行きたいけれど、すっかりamazonに頼っています」

──プライベートで絵を描くんですか。

「絵は好きでよく家で描いてますが、小学生のような絵なので、人前に出すものではなくてただの趣味です」

──休みは友達と食事に行ったり?

「実は、先日、携帯に入っているアドレスを全部消したんです。LINEや電話の着信にストレスに感じてしまって。とはいえ、こっちが消しても相手は僕の連絡先を知っているから、全く連絡が取れないわけではなくて。本当に僕に用事がある友だちなら連絡をくれるから。そもそも、約束が好きじゃないんですよ。飲みに行く約束をしても、その時にお酒を飲みたい状態かわからない。飲みに行きたいと思ったら、それが1週間先じゃなくて今この瞬間なので。約束があると、せっかくの休日に、予定に追われるし、1日が不自由に感じるんです。まあ、自由を守っても結局、家でバラエティ番組を観るだけなんですけど」

──プライベートで一緒にいたいタイプは?

「行動に優しさがある人。相手にちゃんと『ダメだ』と注意できるのも優しさです。やっぱり愛がなきゃ。人には愛で向き合いたいです」

──10年後、20年後の自分はどうなっていたい?

「10年先のことはわかりません。来年のことすら読めない仕事ですし、どの作品がヒットするか、いい作品に関わっていけるのかもわかりません。まずは今に集中しないと」

──今後、演じてみたい役柄は?

「どんな役でも挑戦だと思っています。好きなのは映画『ファイト・クラブ』でのブラッド・ピット。ズルいくらいにカッコいい役ですよね。ジェシー・アイゼンバーグも好きです。普通の大学生の役なのに、彼しかできない演技を見せてくれる。ルーニー・マーラやトム・ハンクスも、映画ならではの細かい演技が素晴らしい。僕も、彼らみたいなカッコ良さを表現できる俳優になれたら、と思っています」

衣装協力:シャツ¥7,800/ヴィンテージ(ツナギ ジャパン 03-6427-0717) ロングTシャツ¥12,000/ウル サンダル¥17,800/ドン ぺぺ(ともにスタジオ ファブワーク 03-6438-9575) パンツ¥36,800(レインメーカー 075-708-2280) メガネ¥21,000/エーディーエスアール(シック 03-5464-9321)

映画『ニワトリ★スター』の情報はこちら

Photos:Ayako Masunaga Styling :Shogo Ito Hair&Makeup:Ai Miyamoto Interview&Text:Miho Matsuda Edit:Masumi Sasaki

Profile

成田凌(Ryo Narita) 1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。2013年より『MEN’S NON-NO』(集英社)専属モデルとして活動。主な出演作は映画『残穢-住んではいけない部屋-』(16)、『君の名は。』(16)、『キセキ-あの日のソビト-』(17)、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(16)、『人は見た目が100パーセント』(17)、『コードブルー 3rdシーズン』(17)など。ラブドッグ コードブルー

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