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柄本佑インタビュー「三半規管の弱い自分がダンスに初挑戦します」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.35は俳優、柄本佑にインタビュー。

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確かな演技力であらゆる役柄をこなし、映画、ドラマにひっぱりだこの俳優、柄本佑。9月8日より、コンテンポラリーダンスの演出家ユニット、インバル・ピント&アブシャロム・ポラックが手がける百鬼オペラ『羅生門』に挑戦する。自身初となる歌と踊りへの意気込みや俳優としての自身を語るオンの顔、ダンスにまつわる学生時代の思い出、仕事と地続きというオフの顔とは。

ダンスは高校時代に半年で挫折

──今回の『羅生門』は歌って踊る「百鬼オペラ」ですが、これまでダンスの経験は?

「昨年末からダンスの基礎レッスンは始めています。これまでダンス経験らしいものはほとんどないんですが、高校1年のときに始めたブレイクダンスは半年で挫折しました。中学の時にイマイチ冴えなかったので、高校デビューを目指して友だちと2人でチームを組んだんですけど、イベントに出ても他のチームとハイタッチしたりしたり交流したりするのが苦手で…」

──雰囲気に馴染めなかったんですね。

「同じ時期にバスケ部にも入ったんですよ。身長を生かそうと思って。でも背が高いだけに期待も高く、でも技術はヘタなので、その落差が激しくてガッカリされるので、それも半年でやめました。バスケも普通なら小学校から始めて、そこで上下関係を学んで、中学、高校も続けるというルートがあるんですけど、自分は高校からいきなりだったので『俺みたいな新参者が気軽に先輩にパスしていいのだろうか?』と迷っているうちに、ボールを取られるという」

──模索の時期だったんでしょうか。

「模索といより迷走でした。挙句、鉄道研究部にも入りましたが長続きせず。それなら1人でできるスポーツをしようと卓球部に入り直しまして、それは卒業まで2年半続きました」

──俳優になってからスポーツは?

「去年、ドラマ『スクラップ・アンド・ビルド』で、体を鍛えている無職の役柄を演じたんです。そのとき、本番で80回近く腕立て伏せするシーンがあったので、ジムでトレーニングしてたんですよ。その収録が終わっても、3日に1回のジム通いは続けています。いつ止めてもいいと思ったほうが、意外と続くものらしいです。今は、ダンスレッスンが始まるので体幹を鍛えています。最初は何もできなかったけれど、続けているうちに体重が4kg減りました。どうやら体を動かすことは好きみたいなんですよ。チームプレーが苦手なだけで」

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薬師丸ひろ子になりたいのかもしれない

──コンテンポラリーダンスを観ることは?

「インバルさんの前回の公演『DUST』は拝見しました。テーマは深いけれど、動きが軽やかでチャーミング。得体の知れない、何か煮えたつものがあって面白かった。あとは、映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』はヴィム・ヴェンダース作品ということで観たんですが、歩くこと、手を上げることなどの所作、生きていること自体がダンスになるんだと思った記憶があります」

──ダンスと演劇は違いますか?

「ものづくりをすることは一緒だと思いますが、どうなんでしょうね。とにかく初めての経験なので、今はセリフを覚えて体幹を鍛えるくらいしかできることはないです。それから、自分は三半規管が弱くて、以前『エドワード2世』の舞台稽古で2回転半ほど回っただけで倒れてしまい、15分現場を止めたことがありまして。自宅で1点を見つめて回転する練習はしています。今回、吉沢亮くんもコンテンポラリーダンスは初挑戦なんですよ。2013年のミュージカル『100万回生きたねこ』にも出演した(満島)ひかりは楽しいよと言うので、ひかりがそう言うならきっとそうなんだろうと思います」

──今回、オペラなので歌もありますが、歌はお好きですか?

「酔っ払ったときにカラオケで歌うのは好きですが、人前で歌うのは苦手です。家でひとり、ヘッドフォンで薬師丸ひろ子さんの曲を聴きながら歌うのは好きなんですよ。歌っているのは自分だけど、聞こえるのは薬師丸さんの声という。あれ、もしかして俺は薬師丸さんになりたいのか(笑)」

──薬師丸ひろ子さんがお好きなんですね。

「もちろん歌も好きですが、薬師丸さんは圧倒的に〈映画女優〉ですよね。『翔んだカップル』『Wの悲劇』『セーラー服と機関銃』…。あの声と観客を思わず前のめりにさせる存在感は彼女独特のもの。『セーラー服と機関銃』の冒頭、ブリッジしながら『カスバの女』を歌ってる空撮シーンは、それだけで泣けます」

──これまでに共演されたことは?

「ありませんが、緊張しちゃって無理です! でもミーハーだから、サインをもらうことを考えて、色紙とマジックペンを持って現場に入るでしょうね。最後の打ち上げでファンだと初めて告白します(笑)。でも、ご本人にお会いしたことはまだないんですよね」

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小学生の頃、親の稽古を楽しそうだなって見ていたんです

──14歳でスクリーンデビューしましたが、演技を始めたきっかけは?

「マネージャーさんが映画『美しい夏 キリシマ』の役柄に僕が合ってるんじゃないかと思ったらしく、自分が知らないうちに書類が提出されていて。『オーディションに行けば、本物の映画監督に会えるよ』と言われて、映画が好きだったので監督に会うためにオーディションを受けたというのがきっかけです。当時まだ中学生だったのですが、2カ月間、親元を離れての撮影でホームシックになりました。それでも、今まで見たことのない大人の世界や日常では味わうことのない緊張感に触れて、この世界に入りたいと思った。それくらい圧倒的に楽しい経験でした」

──映画もチームワークですが、それは大丈夫だったんでしょうか。

「もともと映画が好きですからね。それに小学生の頃、親が舞台稽古をしているとき、放課後に本多劇場で若い劇団員のお兄さんたちに遊んでもらっていたんです。みんなでひとつの舞台を作り上げる様子を見ていて、どうも楽しそうだと脳裏に植え付けられていたのも関係あるかもしれません。でも、今も人前で演技をするのは恥ずかしいですけどね。『羅生門』は、ダンスと歌もあるから、その羞恥心をどう払拭するか、本番までにやらなきゃ行けない壁がいくつかあります」

──ところで、弟の柄本時生さんも俳優の道に進みましたね。

「どういうわけか、そういうことになっちゃいました。あいつはバカなヤツですけど友だちは多いんですよ。一番上に姉がいるんですけど、俺も姉貴も内側に籠るタイプなので、あいつはそれを反面教師にして積極的に友達を作ったらしいんです。最近はバンドも始めて、ベースを担いで出かけたりしているんですが、ハットをかぶってメガネのヒゲ面で“売れないバンドマン”感がすごいんですよ。“売れてる”感じじゃないんですよね。でも、優しいやつなんですよ。会話に変な間を作らないように気を使うし。だから、友だちからも信頼されてるみたいですね」

──兄弟の仲がいいんですね。

「そうですね。うちに電気がついてりゃ勝手に入ってきますしね。時生と“ET×2”というユニットで芝居もしていますが、兄弟で舞台をするのは、小さい頃に楽しそうだと思った記憶があるから。映画がずっと大好きで、今でも映画の現場は憧れの場所という感覚がありますが、舞台は『道場の修行』です。鍛錬して毎日を同じ事を続けていくと芝居の体力がつきますし、ライブだから度胸もつきますし。芝居を続けていく上で、舞台を続けることは大事なんじゃないかと思っています」

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仕事とプライベートは地続き。いつもセリフをつぶやいている

──オンとオフはどんな風に切り替えていますか?

「スイッチみたいに切り替える方法はないかな。セリフを覚えるにしても、まず一通り覚えて、寝ながらセリフを思い出し、セリフをブツブツつぶやきながら生活して、ブツブツ言いながら散歩したり、喫茶店でコーヒーを飲んでいたり友達と会ってるときも頭の中でセリフを復唱してみたり。特別なことじゃないですよ。それが仕事だから、やらなくちゃいけない作業なので。いつもセリフを覚えながら眠りにつくので、覚えるものがないときには逆に眠れないこともあります。いつもどうやって寝てたんだっけと寝つき方を忘れたりして」

──ご家族が増え、時間の使い方は変わりましたか?例えば、趣味の映画鑑賞の時間はありますか?

「子どもが生まれたばかりなので、まだその余裕がありませんが、まあ、急いだからいいってものでもないので。でも、よくよく考えてみると、毎回そんな感じだったかもしれません。台本を覚えようと喫茶店に入って、3時間くらい台本を前にしながら携帯をいじったり本を読んだりして、ようやく台本に向かうくらいのペースがベストなんですよ。それを毎日繰り返すことができればいいかな」

百鬼オペラ『羅生門』の情報はこちら

Photos:Ayako Masunaga
Interview&Text:Miho Matsuda
Edit:Masumi Sasaki

Profile

柄本佑(TASUKU EMOTO) 1986年生まれ、東京出身。2003年公開の映画『美しい夏 キリシマ』(黒木和雄監督)でデビュー。第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞などを受賞。舞台出演作に『エドワード2世』主演など。2017年秋公開FOD『ROAD TO EDEN』、2018年公開映画「Lovers on Borders(仮題)」、2018年春公開映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」、2018年秋公開映画『きみの鳥はうたえる』で主演。
青木優子Yuko Aoki ファッション・フィーチャー・エディター。ラグジュアリーブランドの販売員を経て2年間のパリ留学を経験。帰国後はファッション系のニュースメディアに所属し、記者として取材・執筆を行なう。その後オンラインメディアの立ち上げに参画。フリーランスに転身後はファッション エディターとしてウェブ、紙の垣根無く様々な媒体に携わる。パリ、ミラノなど海外コレクションへ足を運ぶこともあり。愛するパスタは一択でペスカトーレ

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