The Birthday インタビュー「何をしていても音楽に繋がってしまう」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。Vol.30は、ニューアルバム『NOMAD』をリリースするThe Birthdayにインタビュー。
最高傑作だ。前作『BLOOD AND LOVE CIRCUS』も前々作『COME TOGETHER』も紛れもない傑作だったが、ニューアルバム『NOMAD』は、それらを超える傑作! 先行シングル『夢とバッハとカフェインと』『抱きしめたい』を聴けば、その片鱗がわかるだろう。2015年に結成10年を迎え、キャリア初となるベストアルバム『GOLD TRASH』をリリースし、日本武道館公演を敢行。フロントマンのチバユウスケは「最新作が一番好きじゃないとダメだなと、俺は思ってる」と、かつて語っていたが、まさに。10年を経てもなお、リリースごとにキャリアハイを更新し続ける、その衰えぬ創作意欲には脱帽せざるをえない。
モノクロームのマーブル模様みたいなアルバム
——ニューアルバム、聴かせてもらいました。10年を経て脂の乗り切った感が伝わりますが、手応えはいかがですか?
チバユウスケ(Vo&G)「手応え…? めちゃめちゃいいと思うけど。いつもと同じで」
クハラカズユキ(Dr)「出来てよかったなと。もう終わっちゃった作業なんでね。あとはもうツアーに向けて、って感じにはなってますけど。面白いアルバムになったと思いますよ」
——歌も演奏もよりしなやかになってきた。バンド自体がそういうふうになってきたという印象も持ちました。
チバ「イマイ(アキノブ)君がギターを弾いてたころとは、もちろん違ってて。フジケンが入って(※2011年に加入)、そうなってきたね」
フジイケンジ(G)「まあ、自然と」
——タイトル『NOMAD』は、“Nomad”(=遊牧民)という意味合いで?
チバ「まあ、額面通りに受け取ってもらっても」
——“No Mad”の掛け言葉になってるとか、そういうのも?
チバ「そういうふうに最初は俺も捉えてたから。昔、ダムドのナズ・ノマッド(&ザ・ナイトメアーズ)って変名バンドがあって。カバーばっかやってるバンドがあって、その時に初めて知ったんだけどね」
——以前、ヒライさんは「The Birthdayの曲は全部、色で例えられる」とおっしゃっていましたが、今回はいかがですか?
チバ「言ってたね」
ヒライハルキ(Ba)「そんな大層なものじゃ…」
——それって文字や音が色で見える、いわゆる共感覚なんですかね?
ヒライ「いや、ただ色に例えられるだけで、そんな感覚は僕は持ち合わせてないです。でも、The Birthdayの最初のころから、自分の中でその曲を色に例えて理解するというのはありましたね」
——今回のアルバムは何色ですか?
ヒライ「白黒(即答)。なんかマーブルっぽくなってるような白黒ですかね」
——確かに最新型ではあるんだけど、ノスタルジックにも感じます。
チバ「そういうのもあるかもしれない」
色、宇宙…歌詞にみる世界観
——実際、チバさん自身も歌詞の中で色を用いることが多いですよね。先行シングルであれば『夢とバッハとカフェインと』では“目に映るもの全てブルーに染まってる”、『抱きしめたい』では“それで青に還すんだ”とか。青とか赤、黄色がよく出てくる。
チバ「メンバーにも、昔っから色のイメージが多いとは言われる」
——またね、アルバム全体の歌詞のイメージとしては、“宇宙”がキーワードなんじゃないかと思ったんですよ。
チバ「そう?」
——例えば『抱きしめたい』(#10)の“SF映画”や“エイリアン”に始まり、『夜明け前』(#4)の“ムーンウォーカー”や“宇宙”。『ROCK ’N’ ROLL GIRL』(#6)の“火星人に恋をして”、“宇宙を旅してるの”…。
クハラ「確かに」
チバ「ほ〜。なるほどね」
——『月の上のイライザ』(#11)なんて、まんまタイトルが。
チバ「もういいよ(笑)」
——それで、先ほどのノスタルジック…激しいのにロマンチックな香りがするのかなと。
クハラ「なるほどね」
ヒライ「実際にチバさん、宇宙、好きですよね? めちゃくちゃ詳しいんですよ」
——星の名前とか?「あれが金星で…」みたいな。
チバ「それくらいわかるよ。星もみるけどね。ベランダでとか、ツアー中の夜走りとか。地方だと山の中を車で移動することが多くて、そうすると星きれいだから。寒いのに窓開けたり」
ヒライ「なんか、もっと深いんですよ。そういう話を聞いたことは…何回かあるかな」
チバ「次元の話とかね(笑)」
クハラ「俺も何回か。最初は興味深く聞くんだけど、だんだん深い話になってくから途中でわかんなくなってきて、面倒くさくて“もういいよ!”ってなる(笑)」
——「ナショナル ジオグラフィック」とか「ディスカバリーチャンネル」とか、そういう世界?
チバ「大好きだね〜、そういう番組」
——そういえば20年くらい前にも、何かのインタビューで次のアルバムの概要を聞かれて「宇宙パーティだね」って言ってましたよ。
チバ「ハハッ、そのころから!」
——The Birthdayは“曲先”。歌詞が出来上がって印象が変わる曲っていうのもあるんでしょうね。
ヒライ「1曲目の『24時』がそうでした。メロディはほとんどあったんですけど、言葉がのったときにガラッと変わった」
チバ「あ、そう?」
フジイ「僕は…2曲目の『1977』かな」
クハラ「演奏してても印象が変わっていって、もっと好きになる曲っていうのもある。これからツアーに出て、そういうのが増えてくと思うんだけど」
——現時点では?
クハラ「個人的には、『抱きしめたい』とか『月の上のイライザ』とか、ああいう(ミドルチューンの)曲が大好物なんで、そのへんが好きかな」
——『抱きしめたい』は「海とコンクリートどちらが強いか」というフレーズが、先の震災を思わせます。そのあたりはいかがでしょう?
チバ「まあ、それはどう受け取ってもらっても全然、構わない」
——7作目のアルバム『COME TOGETHER』からセルフライナーノーツが付くようになって、今回もメンバーによる全曲解説ムービー付きです。
チバ「そうだね。あれは、THE WHOがアルバム(『Tommy』)を作った時のことを語ってる映像があって。こういうのをやってもいいかなと。大概(特典映像は)ライブの映像になるから、それもちょっと飽きたなと。で…いざやってみたら案外、面白かったんで、今回も」
クハラ「こういう機会がないと、何かをテーマに、面と向かって4人で話すことなんてないですからね。“アイツ、こんなこと思ってたんだ”とか(笑)。いろいろ面白かったですよ」
——フジイさんは、以前ブログでセルフライナーノーツを書かれてましたよね?
クハラ「短命だったね〜、アレ(笑)」
フジイ「僕が入って最初のアルバム(『I’M JUST A DOG』)でやってみたんですよ。次の『VISION』も“やれ”って言われてやったんですけど」
——メンバーと一緒にやるようになって、どうですか?
フジイ「一人で振り返っていたときは、自分と向き合う感じだったけど、DVDは卒業…毎回“このアルバムを卒業します記念”的な感じもあって、うん。なんかこう…“キラキラした数カ月だったな”みたいな。そんなふうに見えますね」
ライブバンドならではの全国行脚ツアー
——詳しい楽曲解説は、特典DVDを見ていただくとしまして、今回はツアーも11月まで45公演(43カ所)と、ほぼほぼ全国を。キャパ300人クラスの小さいハコも多いです。
チバ「まぁ別に、街によっては200、300くらいのハコしかないところもあるし」
——自分は宮崎の出身ですが、人口からいうと300人は相当な大きさではあるんですけどね(笑)。
チバ「前に宮崎に行った時は、半分も入ってなかったよね?」
クハラ「初めて行ったときね、なかなかの客入りで(笑)。でも、それを客も俺らも楽しんでる。それがよかった。自分らもそういうの嫌いじゃないから、楽しかったですよ。あと焼酎も旨いし、うどんも美味しいし」
チバ「地方ならではの面白さがある」
——トラブルも含めて。前に、どこでしたっけ? 大分かどこかで寒風吹きすさぶ中、えらい遠くのコインランドリーまで洗濯をしに行ったとかなんとか。
チバ「ホテルのバスタブで味噌汁作った話じゃなくて? そのホテル、泊まれなくなった」
——出禁ですか。なんだか物騒な話の予感が。これ以上、深く聞かない方がいいですかね?(笑)。
クハラ「いや、あれね。メンバーの粗相で、っていうんなら合点がいくんですけど、焚きつけたのイベンターですからね(笑)」
——ほか、地方での思い出はありますか?
チバ「奄美かな〜」
クハラ「何度も行ってるけど、一度たりとも晴れたことがない」
チバ「青いはずの海がグレーに見えるっていうね」
クハラ「沖縄なら街だし、飲みに行けばいっかってなるんだけど。ひたすら鶏飯食うしかないよね(笑)」
——各地で飲みにいくのも楽しそうですね。今もビールを飲まれてるチバさんはさて置き(笑)、フジイさん、ヒライさんは、お酒は…?
ヒライ「僕は、まったく(ダメ)で」
フジイ「僕はたまに」
——さっきから気になってるんですけど、フジイさんのその水筒には何が?
チバ「ウイスキーじゃねえの?」
フジイ「(笑)、いや、お湯です」
——白湯!?
フジイ「そうです」
飲みの席の“イイ話”は記憶なし!
——チバさん、フジイさん、クハラさんはいま48歳。50歳目前にして、体調とか、いろいろ気になる年齢だと思うんですが、体力作りはしているんですか?
クハラ「俺は毎日じゃないけど、2日か3日にいっぺんくらい朝に走ったり。駆け足くらいだけど。あとラジオ体操とか。川っぺリでジジババがやってるところに勝手に参加して。終わったら『お疲れさまでした〜』って挨拶して(笑)」
チバ「俺はないね。ストレッチくらいかな。毎日やってると、やんないのが気持ち悪くて。あまりに二日酔いだったらやんないけど」
フジイ「僕はジム行って、筋トレとか」
——ヒライさんは、お三方より一回り以上若いですから、まだまだ元気ですよね?
ヒライ「生まれてこのかた運動というものをしたことがないですね。(三人を)見てると…これから自分にもいろいろ(ガタが)くるかも知れないと思いますけど(笑)」
——なんでも女性は7歳、男は8歳周期で体に変化が出るそうですよ。
クハラ「8、16…40…48。ふーん、そうかもしれないね」
——酒に飲まれやすくなったとかないんですか?
チバ「うーん、のんべんだらりと飲むようになっちゃったかな」
クハラ「寝てしまう。あと忘れ物がヒドイ。昔はこの高いZippoを持ってれば忘れないだろうと思って、ちゃんと忘れずにいたんだけど、“大事にする、忘れない”ってことすら忘れてるんですよね」
ヒライ「“記憶を失くす”っていうのが、うらやましいです。飲めないから」
——普段、どうやってお二人と付き合ってるんですか?
ヒライ「まあ…何とかなりますよ。いなきゃいけない状況になれば(笑)」
チバ「しょうがないよな。一緒にやんなきゃいけないんだもん」
ヒライ「僕はお酒を飲まないんですけど、酒飲みが好きなつまみが好きなので、酒の場にいること自体は楽しいんです」
——シラフのお二人は、酔っ払いの二人を見て思うところはあるわけですよね。
クハラ「今すげえいいこと語ってるけど、どうせ覚えてないんだろうな〜とか?(笑)」
ヒライ「それはありますね(笑)」
クハラ「最近は、その記憶を失くしてる時間がもったいないと思うよね。覚えてないんだから」
ヒライ「こんだけ長くいれば口調でわかります(笑)。もう記憶ないだろうな、って」
チバ「(呂律)回ってないしね。俺なんかたいがい記憶ないな、途中からは」
——今度、録音するってのはどうですか?
チバ「そんな恐ろしいことしないでよ(笑)。俺、ICレコーダーを持ち歩いてるんだけど、飲んでるときになんかの拍子にボタンが押されちゃって、2時間くらい回しっぱなしになってたの」
クハラ「聞いた?」
チバ「カバンの中だから、話声はかすかにしか聞こえない」
フジイ「盗聴したみたいに?」
チバ「そうそうそう。『○×△※〜!』って、なんか叫び声が聞こえて。たぶん、それが俺だった(笑)。怖くて消したよ」
——ほかにオフの楽しみとかってあるんですか?
チバ「なんでもかんでも、もう、どうしても音楽に繋がってきちゃうんだよね。何やってても。それはどうしようもないんだけど」
——YouTubeの公式チャンネルのコメント欄を見ると、若い世代の人が「いい歳の取り方」「あんなオヤジになりたい」と、憧れの声を寄せていて。若い世代へ…というのはあります?
チバ「まぁ年齢とか関係なく、お腹ん中から棺桶まで」
——憧れのジジイ像とかは?
チバ「うーん…自分が何をしていたいかとかはないけど。この間、ショーン・ペンの映画を久々に観て、老けたなあ〜と思ったけど、カッコいいなと。何だったかな…『ヒットマン』? 殺し屋をやめたいんだけど、最後の仕事を…みたいな、よくある話」
——(検索して)『ザ・ガンマン』ですね。
チバ「あ、“ガンマン”か」
フジイ「(笑)。惜しかったね」
チバ「最近、人の名前とか映画のタイトルとかも忘れちゃうんだよ」
フジイ「あるね(笑)」
——ヒライさんから見て、お三方はどんな?
チバ「もうそんなに若くはないもんな?」
ヒライ「いいな〜と思いますよ。俺は三人の年齢になったとき、果たして音楽を続けてられるんだろうか、とか思いますし。すごいなと思いますよ」
チバ「まあ、自分でやりたきゃ続けると思うし」
——ともあれ、ニューアルバムとツアーを楽しみにしています。10年でひと区切りしたことですし、『NOMAD』から聴き始めて、過去をさかのぼるっていうのもアリなアルバムなんじゃないかなと。
クハラ「自分もそうでしたけど、THE ROOSTERZから入りTHE ROOSTERSを聴く、みたいな」
チバ「ああ、全然良いよ。まだ何も手をつけてないけど、ツアーもいいツアーになると思うけどね。俺らもアルバムの曲を人前で演るのが楽しみだし。遊びに来てほしいね」
5/10発売ニューアルバム『NOMAD』と
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Photos:Sasu Tei
Interview & Text:Tatsunori Hashimoto
Edit:Saori Asaka