神木隆之介インタビュー
「モテたい男子の裏側を全面に!」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。 vol.24は俳優、神木隆之介にインタビュー。
人気脚本家・宮藤官九郎監督のハチャメチャ青春コメディ『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』。地獄へ落ちてもなお、恋する同級生とキスすべく、不屈の精神で地獄の訓練に耐えるあっぱれな高校生・大助を演じる俳優、神木隆之介。2歳でデビューし、クセのある悪役からオタク、爽やかな優等生までを演じ分ける実力派へと成長する彼の素顔とは? 物語を知っていても、ついて行けない! ──おバカ青春映画『スクール・オブ・ロック』や『ズーランダー』にも通じる、日本ならではのコメディでしたが、脚本を読んで、どんな映像になるか想像できました? 「想像できなかったです。字面だけで『地獄の亡者に襲われ、鬼に吹き飛ばされて…』と書いてあっても、よく分からなかったです(笑)。でも言葉の掛け合いがすごく面白くて、最後には温かい気持ちになるというのが脚本を読んだ第一印象でした。それで役作りをして、撮影をして、いざ出来たものを見たときに抱いたものが、台本を最初に読んだときの感覚に近かったんです。役作りをするときに第一印象を大事にしているので、あんなに想像できなかったのに、第一印象のまま映像を見ても変わらなかったというのが嬉しかったです。それに、頭の中でカット割りや細かい芝居を操って、ものすごくスピード感のある映像を作り出す監督の宮藤さんが、さすがだなと思いました」
──冒頭からものすごいスピードで物語が展開していきますもんね。
「開始10分以内に大助は地獄に落ちるんです。序盤、大助の台詞に『何これ? 全然分からない。全然ついて行けない』というのがあるのですが、まさにそんな状態。台本も読んでいるし演じてもいるので物語を知っているはずなのに、完成した本編を観はじめたらもう全然頭がついて行けなくて、何が起きているんだろう……ってぼーっと観てしまいました。そのときに大助の台詞が自分の気持ちを代弁してくれたんです。撮影中はあの言葉がそこまで効いてくるとは思っていなかったのですが、大助もそう言いたくなるなと実感しました(笑)」
──大助はカッコつけてるのにちょっとダサいのが愛らしいキャラクターでしたが、神木さんも努力してカッコつけるところはありますか?
「僕もずっと『モテたい』とか言っていたし、カッコつけるところはカッコつけます(笑)。大助みたいにすごく分かりやすいタイプだと思います。大助と僕が似ているのは、綿密に作戦を立てているようで意外と物事を軽く考えているところ。大助の場合はナメきっているとも言えますが、僕も楽観的でそこまで物事を深く考えていなかったりするので。特に、彼の高校生活は共感することばかりです。それこそ、モテるために色々努力しているところとか」
モテたい男子の裏側を思い切って表へ
──高校時代の『モテ作戦』、具合的にどんなことをされてたんですか?
「大助がモテたくて色々努力している中に出てくる、前髪をピンで留めているシーン、あれはまさに僕です(笑)。前髪が邪魔かなって家から付けて来たけど、このままでも俺恥ずかしくないからという男子、絶対クラスに一人はいるんです。それを自然にカッコよくやっている男子。僕はそれを真似していました(笑)。 さらっとできる人はいいと思うのですが、モテることを意識して自分の部屋の鏡の前で前髪とピンの一番カッコいい角度を研究している姿って、すごくダサいんですよね。僕自身も実際そうだったので、客観的に振り返るとダサいことをいっぱいしていて面白いなと思います。今回はその『男子の裏の努力』を表に出すことで、大助の役作りをフルに活かすことができたかなと思います」
──神木さんからの提案もあったんですね。
「リハーサルで勝手にアドリブをしてみたり、監督と相談して採用されたものも多いです。コロコロ(美顔ローラー)を使うシーンでは当時やっていた通りに、顔にパックした上からコロコロをしたら宮藤さんに『何でパックした上からやるの? 別々でしょう?』って笑われましたが、確かそのまま使われていたと思います(笑)」
──長瀬智也さん初め、共演者の方々に活き活きとツッコミをされていましたが、ツッコミの腕にさらに自信がついたという意識はありますか?
「ツッコミ“力”は『11人もいる!』(宮藤官九郎脚本のドラマ)で培いました(笑)。共演者のみなさんが本番に何をやるのか分からない環境だったので、アドリブでツッコミを入れるという経験をして楽しさを教えてもらいました。今回、地獄のみんなへのツッコミも、ものすごく楽しかったです。もちろん、アドリブで言い方を変えたり、必要ないとか、興味が湧かなかったら薄い反応をしたりもしています。みんながお互いどこまでボケるのか、どこまでツッコミを入れるのか、その場のノリと勢い。特に桐谷健太さんは裏設定を勝手に作って台詞に入れてきていたので『これは何のことを言っているのかな』と探りながら演じました(笑)」
──普段、自分が出ている作品や演技について友達や家族と話したりすることはありますか?
「全然ないんです。同級生の友達はまだ学生の人もいるし、働いている人もいますが、仕事のことを聞いてこないので。この映画について聞かれたときは、『ものすごいことになっている映画だよ』とだけ言っています(笑)」
少女漫画の“カッコいい奴”に見入ってしまう
──幼い頃から役者として活動されていますが、オンオフのスイッチはありますか?
「役が日常生活に響くということも、少しはありますが、衣装を脱ぎ着することでスイッチのオンオフができます。桐谷健太さんが『角が生えると人間を見下すような気分になるんですよね』と言っていて、それは僕も感じましたし、メイクでボロボロになっていくと、気持ちもボロボロになっていきました。あとは音楽を聞くのが大好きなので、仕事帰りに音楽を聞きながら一人公園で温かいコーヒーを買って、ゆっくりするんです。ピアノ曲を聴く場合もありますが、最近は『backnumber』『KANA-BOON』『ONE OK ROCK』とかを聴くことが多いです。スーツで会社帰りに公園で一息ついているサラリーマンの姿って、ドラマでもよく出てくるベタなシチュエーションですよね。僕はたぶんそれをやりたいんだと思います。自分の中で、それが凄く落ち着くのではないかというイメージがあるんです。学生ではなくなって、この仕事でお金をいただいているという認識がついてきたので分かりやすく『仕事が終わったぞ』とスイッチを切り替えたいのかもしれないです。家でゆっくりするのではなく、形から入っています」
──今ハマっていることは?
「少女漫画探しです。最近面白かったのは『センセイ君主』、『春待つ僕ら』ですね。本屋で新刊を漁っています。どちらかというとベタなものが好きなので、『幼馴染みが…』『引っ越してきた転校生と…』とか『校内で一番モテる彼がなんで私に?』みたいな展開から、その親友にもアプローチされてしまうというような、学園ものが好きです」
──少女漫画を読む楽しみはどこにあるんでしょうか。それを演技に活かしているなんてことも?
「素直に、カッコいい!と思います。かわいい女の子より、カッコいい男の子に感心してしまうというか。少女漫画を読んでいるときは、ある意味女子目線なのかなと思います(笑)。漫画好きが高じて、映像がコマとして浮かんで見えるようになりましたし、役作りにつながることもあります。漫画って、絵として美しく、構図が綺麗なので、立ち居振る舞いの見せ方に取り入れていることはあります。例えば、少年漫画ですけど『ONE PIECE』のような戦闘漫画からは、どのくらいの腕の高さや剣の高さが強く見えるのかとか、こういう感じでバンとぶつかると迫力が出てカッコいいんだ!とか、漫画から学ぶことは多いです」
──少年や青年、あるいは武士だったり、ある種キャラクター色の濃い役を演じてきたという印象がありますが、自分が大人になってきたなと思いますか?
「そうですね。でも、高校生の役はまだできる!と自分では思っていて、いつでも戻れるので大丈夫です。最近変わったのが、信号が点滅しても走らなくなってしまいました(笑)。ある種、大人の余裕が出てきたんですかね。そこで余裕を見せられても、小さい人間だなと思いますよね。もう少し大きなところで、余裕を見せていきたいです(笑)!」
Photo:Satomi Yamauchi
Hair&Make-up:MIZUHO
Styling:Satoshi Yoshimoto
Interview & Text:Tomoko Ogawa
Edit:Yukiko Shinmura