フォクシーズ インタビュー
「音楽はノーマルな私の自己表現」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。 vol.23はアーティスト、フォクシーズ にインタビュー。
ダークな要素と明るい要素のコントラストに惹かれる
──そういえば新作『オール・アイ・ニード』を発表する前に髪を短く切りましたよね。ファッション志向も変わったのでは?
「以前より少し大人っぽいスタイルを好むようになったわ。ほら、人って何かと決別するとか、大きな変化が欲しくて髪形を変えるものじゃない? 髪を切ったばかりの頃、顔なじみの近くのお店に行ったら、店員がものすごくショックを受けて、『いったい何が起きたの?大丈夫?』って心配されちゃったの(笑)。私の場合は、新しいアルバムに向けての気分転換に過ぎなかったんだけど」
──そのアルバムへのメディアの評価は上々ですよね。
「ええ! 仕上がりにはすごく誇りを感じていて、本当に恵まれていると思う。デビューに漕ぎつけても2枚目を発表できないまま消えるアーティストも多いし、このアルバムが存在すること自体に大きな達成感を感じるわ(笑)」
──スナップショット風のジャケットが印象的です。どんなテーマで撮影したんですか?
「私が意識していたのは、バレエのレッスンをしているケイト・ブッシュの昔の写真で、そこに映っていた彼女みたいにナチュラルでシンプルで、自分の脆さを隠さずに見せている写真を目指したの」
──本作に限らずヴィジュアルには毎回、ピンクを効果的に使っていますね。
「私は基本的に、ラフなエッジやダークな要素と、明るくて軽い要素のコントラストに惹かれるの。だからこんな風にピンクをどこかに使うことで、ポジティヴィティを表現しているんだと思う。本質的にダークな色に目が向いてしまうから、その対極にあるピンクで自然にバランスをとっている気がするわ。音楽にしても、すごく悲しげなんだけど、その裏に幸福感が潜んでいるような表現、もしくは、ハッピーなんだけど裏に悲しみを含んでいる音楽が好きなのよ。すごくダークな事柄を書いていても、音はハッピーにしてバランスをとるの」
──そういう意味では今回もダークで、ひとつの恋愛関係の終わりを題材にしています。
「そう、曲作りを通じて、エモーショナルな危機を乗り越えるという目標があった。そのおかげで、いわゆる“セカンド・アルバムのプレッシャー”も忘れられた気がする。それどころじゃなかったから(笑)。とはいえ私の場合、音楽作りをアルバム1枚1枚で区切るのではなく、切れ目なく続くひとつのプロセスだと捉えているわ。そしてアルバムを作るたびに、自分がどういうアーティストか徐々に見えてくるように感じられて、常に学んで成長しているの」