剛力彩芽インタビュー「これまでにない新しい自分を見せたかった」
旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.118は剛力彩芽にインタビュー。
80年代、日本中が熱狂した女子プロレス黄金時代。全国民の敵と呼ばれたヒール、ダンプ松本の知られざる物語を描くドラマ「極悪女王」が2024年9月19日(木)よりNetflixにて配信される。企画・脚本・プロデュースを鈴木おさむ、総監督を白石和彌が務め、ダンプ松本をゆりやんレトリィバァ、彼女と熾烈なライバル関係を築いた長与千種を唐田えりか、ライオネス飛鳥を剛力彩芽がそれぞれ熱演。プロレスラーを演じるにあたり、10キロ増量したという剛力彩芽に、体作りや過酷なトレーニング、作品に対する想いを聞いた。
トレーニングに食事、徹底した管理で10キロまで増量
──出演の決め手は何だったのでしょうか。
「1番の決め手は、やっぱり白石監督と鈴木おさむさんのタッグでしたね。絶対に面白い作品になると確信しました。それと、ちょうど私が独立した年にオーディションのお話をいただいたのですが、撮影期間中に30歳になるという節目もあり、自分のなかで今までやったことがないことにチャレンジしたいなと思い、出演を決めました」
──新しいことに挑戦するのに、怖いという気持ちや不安はありませんでしたか?
「白石監督とご一緒したいという気持ちの方が強かったですね。あとは、今までのイメージを全部ひっくり返すような『こんな剛力は見たことない!』って、みんなに思ってもらえるならば、このような女性の強さが表れた作品に出たいという気持ちが強かったので、あまり怖いとは思いませんでした」
──トレーニングや体づくりはどのように準備を?
「撮影の半年前くらいから、週3でウェイトトレーニングと週2でプロレスの練習をしていました。あとは食事ですね。栄養管理士さんにサポートいただいて、食事の内容や体重の増やし方も指導してくださいました。月1回の血液検査で、きちんと身体が健康かどうかチェックもしてくださったのでとても心強かったです」
──その過程でつらい、もうだめだと挫折することはありませんでしたか。
「めちゃくちゃつらかったですよ(笑)。もう本当に。最初は『何でも好きなものが食べられる!』と思ってましたけど、2週間ぐらいで何を食べていいかのか、何がおいしいのかもわからなくなって、最後は泣きながら食べてたりとか」
──食べる喜びを感じられなくなってしまったんですね。
「食べること自体は好きなんですが、誰かと一緒に食べるということがすごく大事だと実感しましたね。1人で家でこれだけの量を食べるとなったら、味もしないし、なんかおいしくないし、楽しくないし。途中から母とテレビ電話とかしながら食べたりすると、気持ちが紛れて食も進むし、楽しい気持ちってすごい大事なんだなって。最終的には10キロ増量しました」
──そんな過酷な体づくりを経て、ライオネス飛鳥の役作りはどのように?
「本を読んだり、試合の映像を探してみんなで見たりしていました。でも、今回脚本が当て書きなのかというくらい、役作りをした記憶がないというか、自然体のままお芝居をしてる感じがありましたね。その中でも、飛鳥さんはロープのところで試合を見守っているシーンが多かったので、そのときの振る舞い方は意識しました。戦っていないときの強さを表現したいなと。(長与)千種を守りたいという思いがきっと強かったと思うので、それは一番大切にしました。ただ、唐ちゃん(唐田えりか)という存在を見ていると、どうしたら彼女は輝くんだろうと私自身も自然に感じちゃって(笑)。いつもニコニコ笑っているけど、芝居になると眼差しが強くなるというか、負けん気の根性みたいなものがエネルギーとして出てる感じで。そこがちょっと千種さんとリンクしている部分でもある気がして、『唐ちゃんを守る!』という気持ちに勝手になっていました」
──実際にライオネス飛鳥さんにお会いしたときの印象はいかがでしたか。
「めっちゃかっこいいんですよ、飛鳥さんって! 一瞬しかお会いしていないんですけど、撮影現場に見に来てくださって。さっと来て、『頑張ってね』と言って、みんなで写真を撮って、出られました」
──アドバイスもされなかったのですか?
「特にはいただかなかったです。でもある雑誌に『自分はプロレスラーを引退しているから、今の子たちの試合はほぼ見に行かない。次の世代に託しているから、私が行ってどうこうしない』みたいなことをおっしゃっていて、痺れましたね。また、インスタグラムで私が関係ないストーリーを上げていても、スタンプで反応してくださったりするので、うれしくなっちゃいます」
プロレスはお互いの信頼関係があるからこそ成り立つ
──試合のシーンもものすごく迫力がありました。いろいろな技が出てきますが、お気に入りはありますか?
「私、ドロップキックが好きなんですよ。ちょっとずつ段階を踏んでできるようになりました。まずは前受け身を練習して、次にジャンプして飛ぶ練習して、最後に足で蹴る、みたいな」
──運動神経がいいからか、すごくきれいに決まってました。
「ありがとうございます(笑)。飛鳥さんはジャイアントスイングが得意技だったんですよね。結構難しいんですけど、1回か2回まわすことができれば、遠心力がつくので。でも、相手に技を受け入れてもらえないと、持ち上がらないんですよ。全身の力を抜いていると全く上に上がらないので。相手にもやられる覚悟がないといけないんだなと」
──プロレス技はお互いの協力のもとに成り立っているんですね。
「本当に、プロレスでも信頼関係は大事なんだなって思いますね。技をかけるときも、かけられるときも、よく見るとお互いの信頼関係で支え合っているのがわかりますし、そうやって戦っているんだなっていうのをすごく感じました」
──念願だった白石監督との現場はどうでしたか? 監督はどのようにディレクションされたのでしょうか。
「わりと任せていただけるんですよ。もちろん試合のシーンは別ですが、普通の芝居ところも、気になったときはおっしゃってくださるんですが、ああしてこうしてというのはなかったですね。だからこそやりがいを感じましたし、白石組常連の斎藤工さんも、『なんでもやって平気だよ』という風にアドバイスしていただきました」
──先ほど唐田さんの印象について話してくださいましたが、ダンプ松本を演じたゆりやんレトリィバァさんとの共演はいかがでしたか。
「いやぁ、彼女はエンターテイナーですよね。本当に。主演だし、プレッシャーも強いし、いろいろ背負わなきゃいけないものがあるなかで、常にみんなのことを見ていましたし。エキストラさんの前で必ずリングに上がってご挨拶して、ひとネタやってくれるんですよ。それで、皆さんがちょっと疲れてきたなっていう頃に、またみんなを笑わせてくれて。ほんとに生粋のエンターテイナーでしたね」
──作品では、ダンプ松本 VS 長与千種&ライオネス飛鳥の熱い関係についても描かれています。敵対するライバルでありながら一時代を牽引した盟友でもある特別な関係ですよね。
「ダンプ松本さんという存在がいたからこそ、クラッシュギャルズが輝くし、クラッシュギャルズがいるからダンプ松本さんが輝くし。特にダンプさんと長与さんって、当時は本当に憎み合っていたと言いますが、今めちゃくちゃ仲いいんですよ。だからある意味、命や友情を犠牲にしてでも、皆さんが熱狂するものを作り上げることができるって、すごい根性だなって思いました。彼女たちって当時まだ10代、20代で、1番青春したい時期じゃないですか。そこに徹底して生き抜くということが、かっこいいなって思いましたし、自分の夢を貫く強さを感じてもらえたらうれしいなと思います」
──本作で得たものがあるとしたら、それは何でしょう。
「シンプルに私は健康第一だなって思いました。トレーニング、食事、睡眠……と体作りを一生懸命しましたが、やっぱり生きていく上で健康って本当に大事なんだなと。それと、長与さんがプロレスは芸術だとおっしゃるんですけど、 やっぱり見せ方1つで変わってくるということを学びましたね。この作品をやらせていただいてから、見せ方を意識することで、芝居の仕方まで少し変わったような気がします。お芝居だけでなくファッション撮影にも活かせることなので、すごく勉強になりました」
姪っ子溺愛! “叔母ばか”しています
──撮影中の癒しになったものは?
「姪っ子が生まれたばかりだったので、会いに行って癒されてました。あとはひたすらトレーニングしてましたね。スタジオの近くにトレーニングルームを作ってくださったので、時間が空くと『ちょっと行っていいですか』って。持ち上げられなかった重量が上げられるようになると、うれしいんですよね。運動が元々好きなのもありますが、コツコツやるのが自分に合っていたのかも」
──では、今ハマっていることはありますか?
「何だろう。もう絶賛姪っ子の叔母しかしてないので(笑)。今1歳ちょっとなんですが、この間なんか、テレビ電話が急に来て、『叔母ちゃん、このバッグが欲しいの』って。もちろん、両サイドからママとおばあちゃんがささやいてるんですけどね(笑)。なんでも買ってあげるよって、言ってしまいました。そのバッグめがけて行って、背負ったら離さなかったらしいんですよ。すごく似合ってました。超可愛かったですね。“叔母ばか”してます(笑)」
──他にプライベートで楽しんでる趣味はありますか?
「ゴルフをまた最近ちょっとやり始めてますね。ゴルフ友達を集めているんです。あと釣り仲間も集めたいんですよ(笑)。釣りもほんと好きなんです。それと、朝早く起きられる人になりたいなと思っていて。朝活を自分のブームにしたいですね」
衣装:ドレス ¥1,320,000/Zin Kato イヤリング ¥573,100 イヤリングコンバーター ¥124,300/ともにTasaki シューズ¥279,400/Sergio Rossi
「極悪女王」
母と妹、放蕩者の父と暮らしていた松本香は、ある日全日女子プロレスの練習場に足を踏み入れる。ジャッキー佐藤の輝きに魅せられた香は、女子プロ入門オーディションに駆け込み、ギリギリ合格。松永兄弟の指導の下、同期の北村智子(後のライオネス飛鳥)、長与千種、本庄ゆかり(後のクレーン・ユウ)と共に厳しい練習と過酷な指導に耐える日々が始まる。
キャスト/ゆりやんレトリィバァ、唐田えりか、剛力彩芽
仙道敦子、音尾琢真、黒田大輔、斎藤 工、村上 淳
企画・プロデュース・脚本/鈴木おさむ
総監督/白石和彌
監督/白石和彌(1〜3話)茂木克仁(4〜5話)
Netflixシリーズ「極悪女王」
2024年9月19日(木)よりNetflixにて世界独占配信
www.netflix.com/title/81351263
Photos: kisimari Hair & Makeup: Hiroko Takashiro Styling: Shingo Tsuno(impiger) Edit & Text: Yukiko Shinto