夏帆インタビュー「家族のような10年来の友達。価値観が同じで人生の話ができる仲間」 | Numero TOKYO
Interview / Post

夏帆インタビュー「家族のような10年来の友達。価値観が同じで人生の話ができる仲間」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.102では俳優の夏帆にインタビュー。

『silent』『ブラッシュアップライフ』などの話題作で、独自の存在感を放つ俳優の夏帆が、8月26日から東京・シアタートラム、10月4日から大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演されるシス・カンパニー公演『いつぞやは』に出演する。これは、注目の若手劇作家・演出家の加藤拓也が書き下ろした新作で、かつて一緒に活動していた劇団仲間のもとに一人の男が訪ねてくることから始まる物語。演出家、出演者も含め、実力派の若手が集まったカンパニーはどんな雰囲気なのか。また、大人になってからの“友達”とは? 稽古中の夏帆にインタビューした。

同世代の演出家、6人の役者たちとひとつの舞台を作り上げる

──今回の作品は、同世代の6人が集まりました。現場の雰囲気はいかがですか。

「これだけ同世代の役者が集まるのは、舞台では初めての経験です。世代が近いので、観てきたアニメや映画が一緒だったり、共通言語がたくさんあるのが楽しいですね。みなさん、これまで面識はあったのですが、役者として共演するのは、初めての方が多いんです」

──それは意外でした。演出家の加藤拓也さんも同世代ですが、演出家まで同世代が集まるというのは珍しいのでは?

「そうですね。加藤さんとは数年前にショートムービーの『あおいろなおし』でご一緒させていただきました。そのときは1日だけの撮影だったので、今回、改めてという感じなのですが、加藤さんは、セリフのなかにある繊細なニュアンスや、言葉の文脈、言葉の裏側にある複雑な感情まで細かく演出されるので、稽古のたびに新しい発見があります。同世代の尊敬している皆さんに囲まれて、とても刺激的な毎日です」


──ドラマや映画の現場と、舞台はまた違いますか?

「舞台は毎回、新人のような気持ちで臨むので、映像の現場以上に緊張します。今回も最初はそうだったんですが、かつての劇団仲間という設定もあって、稽古が始まってからは、すでに昔から知っている人たちと一緒にいるような空気感になりつつあります」

──今作は、癌を患った一人の男が、かつての劇団仲間と再会する物語です。長い友人関係というのも、時間とともに形が変わることがありますし、大人になると新しい友達を作るのも簡単ではなくなります。夏帆さんにとってどんな友人関係が理想ですか。

「理想というのはないけれど、考えてみれば、決まった友人と長く付き合うことのほうが多くなりました。頻繁に会う時期もあれば、仕事が忙しくて会わない時期もあって。でも、いつの間にか自然と集まっているから、もう家族に近い感覚なのかもしれませんね。今後いろんな節目で友達との関係も変わっていくかもしれないけれど、それはまだこれからなのかなという気がしています」

長い友人関係を築くことができたのは、お互いの価値観が似ていたから

──学生時代は一緒にいるだけで友達になることもありましたが、大人になると趣味や仕事など何かの繋がりがなければ友達になりにくいですよね。

「確かに、年齢を重ねるほど、新しい輪を広げる難しさは感じます。学生時代は、もっと気楽に友達になっていたけれど、大人になると、どこまでが仕事仲間、どこからが友達なのか境界もあいまいだし、新しい友達は作りにくくなるかもしれませんね。でも、仕事や趣味は、最初に会話をするひとつのきっかけにはなるかもしれません。私の場合、好きなことの方向性が似ている人と仲良くなったような気がします。改めて考えてみると、いま一緒にいるのは、20代に入ってから友達になった人たちが多いんです。もう10年以上の付き合いになるんですが、長い間この関係が続けられたのは価値観を共有できて、一緒に話ができる人たちだったからなのかなとも思います。みんなそれぞれ個性は全く違うんですけどね」

──確かに、社会人になると、“友達”の定義は人それぞれかもしれませんね。

「プライベートでよく会うと言っても、少人数か、大人数かでも違いますよね。昔は、知らない人がいる集まりが苦手だったのですが、20代後半ぐらいから、それはそれで面白いのかもしれないと思えるようになりました。気の置けない友人とずっと一緒にいるのも楽しいけれど、同じ世界観に固定されてしまうこともあります。なので、たまには知らない世界に飛び込んでみるじゃないですけれど、誘われたら新しい集まりにも行ってみようと心がけています」

──もし休日に友達と過ごすなら、どんなアクティビティが好きですか。

「やっぱり季節ごとのイベントですね。夏なら、一緒にフェスに行ったり、花火をしたり。妄想は膨らみますが、今年は舞台があるので難しそうです(笑)」

──この舞台が無事に終幕したら?

「旅行が趣味なので、どこか遊びに行きたいですね。ひとり旅だったら街をじっくり観光したいし、友達と一緒なら自然が豊かな場所でリラックスしたりアクティビティを楽しんだり。映画もひとりでじっくりみたい作品もあるし、友達と楽しみたいものもあるし、どちらも好きなんです。いつも、仕事と仕事の合間は必ずどこかに旅に出るので、今回はどこに行こうかなと考えながら、まずはこの舞台に全力を傾けたいと思います」

トップス¥31,900 シューズ¥36,300/Rhodolirion(ネペンテス ウーマン 東京 03-5962-7721) スカート¥41,800/Lautashi(ブランドニュース 03-3797-3673)ピアス¥10,120/Graey(グレイ graey.jp)
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シス・カンパニー公演『いつぞやは』
かつて一緒に活動していた劇団仲間のところに、一人の男が訪ねてきた。故郷に帰る前に顔を見にやって来たというのだが、淡々と語り出した彼の近況は……。第67回岸田國士戯曲賞受賞を受賞した劇作家・演出家の加藤拓也が紡ぐ緻密な会話劇に、平原テツ、橋本淳、夏帆、今井隆文、豊田エリー、鈴木杏の6人が挑む。

作・演出/加藤拓也
出演/平原テツ、橋本淳、夏帆、今井隆文、豊田エリー、鈴木杏
日程・会場/
東京公演 2023年8月26日(土)~2023年10月1日(日) シアタートラム
大阪公演 2023年10月4日(水)~2023年10月9日(月・祝) 森ノ宮ピロティホール
企画・製作/シス・カンパニー
URL/www.siscompany.com/itsuzoya/

※当初出演予定だった窪田正孝さんが降板となり、平原テツさんにキャストを交代して上演することが2023年8月21日に発表されました。取材は7月26日(水)、キャスト交代前の舞台稽古中に収録されたものです。

Photos:Ayako Masunaga Styling:Yasuka Lee Hair& Makeup:Yuko Aika Interview & Text:Miho Matsuda

Profile

夏帆Kaho 1991年、東京都出身。2007年 『天然コケッコー』で映画デビュー。第31回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ新人賞を総なめに。以降、映画、ドラマを中心に活躍。22年10月期のドラマ『silent 』(フジテレビ系)や23年1月期の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)など話題作への出演が続く。8月26日(土)から舞台『いつぞやは』(シス・カンパニー)への出演を控えている。

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