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鞆の津ミュージアム自主企画展 『原子の現場』

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いつもお世話になっている鞆の津ミュージアムさんが自主企画展『原子の現場』を開幕。前回の企画展にサエボーグも参加していたのですが、その時にこの企画のお話を聞き、物凄い感銘を受けたのでご紹介します。

私は数年前に広島の平和記念資料館を訪れた時に「原爆の絵」の図録を買ったのですが、絵を観て泣いてしまいました。原子爆弾で被爆した経験を持つ方が何年たってもあの記憶が忘れられない、とのことで描かれたものを集められた図録なのですが、地獄絵そのもの。赤、黒、茶の色で構成された世界。太陽の凄さを表す色って赤や黄ではなく黒なんだなと思ったのです(太陽に近づくとその熱で焦げるから。カラスが黒いのはそういう理由だという神話もあります。知恵があるので太陽に近づきすぎた)

そして絵の残酷さに恐怖で泣いてしまったわけなのですが(私は絵を観て泣く経験自体初めてでした)、この絵が残酷なのは現実があまりにも残酷だから、という当たり前のことに気が付きました。この企画展では、原子爆弾で被爆した経験を持つ方や戦争経験者が自身の体験をもとに自作した創作物をはじめ、直接の戦争経験はない世代の者たちが制作した核や戦争やその記憶にまつわる表現を展示するものです。皆様、是非に。

展覧会情報
http://abtm.jp/blog/341.html

5月13日、関連トークとして、美術批評家の椹木野衣さんにお話いただきました。 詳細↓

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<ごあいさつ>
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私たちの身のまわりには、差別や偏見、それにもとづくヘイトスピーチなど、個別の生を蔑ろにする不可視の暴力や対立が日常的に存在しています。また現在でも、世界各地で命を奪い合う非道な戦争や争いは絶えることがありません。そのように、私たちの存在を交換可能な「数」として無きものとする態度には、私たちがそれぞれ様々なことを感じ思う心身をそなえた生身の人間である、という当然の事実への想像力が欠如しているのではないでしょうか。

本展は、原子爆弾で被爆した経験を持つ方や戦争経験者が自身の体験をもとに自作した創作物をはじめ、直接の戦争経験はない世代の者たちが制作した核や戦争やその記憶にまつわる表現を展示するものです。
ひとりの市民が現にこの世で体験した尋常ならざる現実にもとづく表現は、そこで感じられた「現場」の様子を伝えようとする一人称の伝言に他なりません。それは、不条理な仕方で奪われてしまった生の記録であると同時に、心に秘められている多様な想いや記憶を映し出す鏡でもあります。私たちは、自分が感じたことを直接には他者と分有できないという意味で、極めて「孤独」な存在と言えるでしょう。しかし、私たちはこの鏡を通じて個別の生とその記憶にふれることで、今ある言葉やかたちには現すことさえできないような空前絶後の現実を想像し、そのような経験を受け継いでいく機会を手に入れることができるはずです。

生の固有性をめぐるこのような交感を行う中で、私たちは互いの生を尊重し、共に在るための方法を考え始めることができるのかもしれません。

< 出展者 >
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廣中 正樹
辛木 行夫
横田 右礼
藤登 弘郎
岡田 黎子
ジミー・ツトム・ミリキタニ
ガタロ
大江 泰喜
岡部 昌生
瀬尾 夏美
平井 有太
A3BC : 反戦・反核・版画コレクティブ
鈴木 智
広島県立福山工業高等学校電子機械科 計算技術研究部
ゆだ苑所蔵「被爆者の絵」
広島平和記念資料館所蔵「原爆の絵」(複製)

< 展覧会情報 >
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展覧会 / 鞆の津ミュージアム自主企画展 『原子の現場』
会期 / 2017年5月3日(水祝)〜 2017年8月20日(日)
開館時間 / 10:00 〜 17:00
観覧 / 無料
主催 / 社会福祉法人創樹会 鞆の津ミュージアム
協力 / 福山市人権平和資料館、広島県立図書館、大久野島毒ガス資料館、広島県立福山工業高等学校電子機械科 計算技術研究部、福山大学人間文化学部 メディア・映像学科、gallery G、ボーダレスアートスペースHAP、Irregular Rhythm Asylum、広島平和記念資料館、一般財団法人 山口県原爆被爆者支援センターゆだ苑、立命館大学 国際平和ミュージアム、辛木哲夫、マサ・ヨシカワ、表具処 軸源
助成 / 公益財団法人 福武財団

お問い合わせ / TEL:084-970-5380
e-mail / info@abtm.jp
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Profile

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サエボーグ(saeborg)はラテックス製の着ぐるみ(スーツ)を自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。これまでの全作品は、東京のフェティッシュパーティー「Department-H」で初演された後、国内外の国際展や美術館で発表されている。2014年に岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞を受賞。主な展覧会に『六本⽊アートナイト2016』(A/Dgallery、東京、2016)、『TAG: Proposals on Queer Play and the Ways Forward』(ICA/ペンシルバニア大学、アメリカ、2018) 、『第6回アテネ・ビエンナーレ』(Banakeios Library、ギリシャ、2018)、『DARK MOFO』(Avalon Theatre/MONA 、オーストラリア、2019)、 『あいちトリエンナーレ』(愛知芸術劇場、名古屋、2019)、 『Slaughterhouse17』(Match Gallery/MGML、 スロベニア、2019 )など。

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