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「サエボーグの豚小屋」多摩美術大学ジェンダー文化論特別講義レポート

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写真撮影:都築響一氏

6月24日に多摩美術大学の「ジェンダー文化論」の授業にゲストで呼んでいただきました。

憧れの溝口彰子さんからのご指名だったので特に嬉しかったです。

サエボーグさん特別講義 開催のお知らせ

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多摩美の西嶋教授がわざわざポスターまで作って下さいました。学内中に貼られていてテンションあがる!

嬉しいのでお土産に数枚頂く。

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今回はポスターにも載ってるピンクのブチ豚を連れて行きました。

今回の内臓はいつもお世話になっているタエちゃん(ポスターの中では黒豚に入ってた)

タエちゃんは多摩美卒業生で、彼女自身も着ぐるみ作って着る子です。

卒論が着ぐるみ論だったという素敵なお方。多摩美が出してる広報誌「アール」の昨年版にインタヴュー載ってるので是非。

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100人近くの生徒さんが来てくれて嬉しかったです。しかも履修生以外の他学科の方や外部の方がほとんどで。

単位でないのに来てくれるなんて、みんななんて優秀なんだ!

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「Slaughterhouse-9」「Slaughterhouse-10」「Pigpen」「HISSS」の順に4つの作品の動画を観てもらいながら解説していきました。90分の授業のうち、一時間を解説、残り30分を質疑応答にあてました。

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講義の前に家で話す内容がどのくらい時間がかかるか実験してたのですが、60分は思っている以上にとても短く、一つの作品に15分だと話せることがとても少ないんですよね。

なので話したいことがもっとあったのですが、かなり削ることになりました。

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「Slaughterhouse」のシリーズはラテックス製の着ぐるみとランドスケープで構成されています。

この作品はパレスチナ出身のアーティスト、モナ・ハトゥムやBBCのテレタビーズを下敷きにしています。

モナ・ハトゥムは工業製品のキッチンや冷たい感じの家などを作っており、女性の役割だった再生産労働を工場の中に例えた作品です。テレタビーズは完璧に「管理された幼児の世界」というイギリス的シニカルです。

私の「Slaughterhouse」に出てくる家畜達も生まれた時から役割が決まっていて、管理、搾取される運命という現実のカリカチュアです。

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「Slaughterhouse-9」「Slaughterhouse-10」などの動画はYoutubeなどにアップしておらず、HPから観ることができるので是非。→

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新作の「豚小屋」は過去作の家畜シリーズ「Slaughterhouse-9」の世界をよりクローズアップしたものです。「Slaughterhouse」シリーズと同じく生まれてから死に向かっていくという役割が決まってます。幸せな誕生のイメージはなく、死ぬために生まれてきたのです。

そして今回は個体差(個人差)をより強調しました。皆、生まれてくる豚は普通の色だと思っている。けどブチも黒もいるんだということです。私はX-menのコンセプトが好きなのですが、あれはスーパーパワーをもっているのは障害だということです。これはキング牧師が暗殺されたことに影響されていて、アメリカの人種差別をテーマにしたものです。だからといって私が直接的に人種差別をテーマにしているわけではありません。私が言いたいのは、人(主流派)と違うというだけで生きるのが困難だという問題です。ウルトラ怪獣でガヴァドンが好きなのも同じ理由からです。ガヴァドンは何も悪いことをしていないのに、大きくてイビキが煩くてとても邪魔、いるだけで迷惑な存在、そのために排除される。例えばアメコミに出てくる敵役はヴィランとよばれます。「ヴィラン」は悪ではなく信じるものが違う人のことです。DevilとDemonの意味が違うのと同じ。ヴィランやDemonは悪じゃない、違うだけなんです。

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火ぐるみ(fire-wrap)が出てくる「HISSS」の動画です。全天球動画(360度view)なので画面をスクロールしながら好きな視点でお楽しみ下さい。

「HISSS」では具体の田中敦子さんとの比較など。エネルギーを身に纏うことによって、自分の皮膚だと思ってるものを光らせたら心まで光ったという呪術的で超越的な体験を興奮まじりで話しました。

作品の制作時系列順に話すか悩んだのですが、あえて火ぐるみを最後にしました。制作理念的に家畜シリーズが暗黒舞踏(人は飛べないのだ、ということを表現することによって飛びたいという気持ちを増幅させている)なのに対して火ぐるみはクラシックバレエ(重力から逆らおうとする身体の超越、跳躍、人はとべるのだ!)だと思ったからです。

Pigpenは新作なのですが3年前から考えてたもので、Slaughtehouseの世界の中をよりクローズアップしたもの。精神的な時系列は違うのです。別の新作(内容は火ぐるみに対してのアンサー)も同時並行して作っており、それは近々また発表していきます。

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質疑応答時間。溝口さんからの質問。

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西嶋教授からの質問。お二人とも凄くよかったと言って下さって、励みになりました。

私も今回の授業でメソッドをつかめたような気持で、講義させてもらって本当によかったです。

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生徒さん達からの質問タイム。質問時間少なくなり申し訳なかったです。

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〆の挨拶で「長寿と繁栄を」とバルカン人の挨拶をしたら(これが言いたくてスポックのネオコスしていった)みんな一斉に同じくハンドサインを送ってくれて、みなさん本当に優秀!!超感動しました。

終わってからも沢山の方が質問に来て下さいました。もっと時間が許されてたらよかったのですが。。

またお会いしましょう~!!

Profile

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サエボーグ(saeborg)はラテックス製の着ぐるみ(スーツ)を自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。これまでの全作品は、東京のフェティッシュパーティー「Department-H」で初演された後、国内外の国際展や美術館で発表されている。2014年に岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞を受賞。主な展覧会に『六本⽊アートナイト2016』(A/Dgallery、東京、2016)、『TAG: Proposals on Queer Play and the Ways Forward』(ICA/ペンシルバニア大学、アメリカ、2018) 、『第6回アテネ・ビエンナーレ』(Banakeios Library、ギリシャ、2018)、『DARK MOFO』(Avalon Theatre/MONA 、オーストラリア、2019)、 『あいちトリエンナーレ』(愛知芸術劇場、名古屋、2019)、 『Slaughterhouse17』(Match Gallery/MGML、 スロベニア、2019 )など。

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