Culture / Feature

男女の心の移ろいを描く、仏映画『男と女』三部作。名場面、名セリフ、ファッションの見所はここ!

60年代から、男女の恋物語を精力的に撮り続けてきた、巨匠クロード・ルルーシュ。『男と女』の作中に流れる「ダバダバダ……」というお馴染みのメロディに聞き覚えがある方も多いのでは。恋愛映画の偉大なクラシックである『男と女』(1966年/日本公開は67年)は、53年もの月日をかけて撮影された三部作で、『男と女II』(86年/日本公開は1987)、『男と女 人生最良の日々』(2019年/日本公開は2020年1月31日)では、同じ場所を舞台にオリジナルキャストが出演している。最新作の公開日を目前に、三部作を通しで鑑賞することをお勧めしたい。

その理由は3つ。まずは男女がそれぞれの人生を生き、運命に導かれながら形が変わる愛の描写が美しく普遍的で誰もが共感出来る物語であること。もう1つは、「撮ることは生きること」をモットーとするクロード・ルルーシュ監督らしく、撮影方法に固執せず時代にあった撮影表現を試みている点だ。それは作品を通じ映画史をなぞることができるといっても過言ではないほど。最後の理由は、ファッション。フランス人らしいシックな装いは、洋服を纏う人生の豊かさを教えてくれる。

伴侶を失った男女の出会い、ロマンス、そして最後の名場面。

未亡人のアンヌはパリで働きながら、フランスの高級リゾート地であるドゥーヴィル(シャネルが最初にブティックを開いたことで有名!)にある寄宿舎に子どもを預けている。そこで、カーレーサーのジャン・ルイと出会うのだが、まず目を奪われるのは、アンヌの役のアヌーク・エーメの美しさ。大きくカールした栗色の髪と大きな目を縁取るアイライン、どこか寂しそうな表情に無邪気な笑顔は”古き良き時代のパリジェンヌ”そのもの。特に“Ah Oui?(あら、そう?)”の口癖はかなりかわいい。

彼も今となっては死語になりつつあるが“男のロマン”を地でいくタイプ。服装は、メンズファッション界でも注目されているフレンチアイビー。アメリカンカジュアルをフランス人のセンスで取り入れたスタイルだ。スピードに身を任せ、アンヌならどこへでも車を走らせる姿は、募りに募った想いや時々の心情を表現し、三部作を通じて変化していくので注目してほしい。また作中のフィルムは、モノクロとカラー、さらにセピア色が混ざり、場面ごとに巧みに切り替えられている。それはまるで自分の記憶の断片のように、鮮烈に記憶に残り、鑑賞後は大きな余韻となる。特に、アドリブで撮影された最後の場面は意外性がありながら、はっとするほど美しいので必見。

『男と女』
(1966年/フランス/ヨーロピアン・ビスタ/カラー(一部モノクロ) / 104分)
監督/クロードルルーシュ
音楽/フランシス・レイ
出演/アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、ピエール・バルー

『男と女 製作50周年記念 デジタル・リマスター版』
価格/ブルーレイ ¥4,800、DVD ¥3,900
発売元/株式会社ドマ、株式会社ハピネット、販売元:株式会社ハピネット
©︎1966 Les Films 13

バブル時代のパリで炸裂する、サスペンスタッチな恋愛模様。

『男と女 Ⅱ』

前作から20年を経た、80年代のパリ。フランスも好景気に沸いた、華やかな時代だ。アンヌとジャン・ルイも映画界とカーレース界でのキャリアに脂がのって人生を謳歌している。ファッションも大きく変化し、アンヌはチェックのビッグシルエットのジャケットやパープルの大きな袖のコートなど、パワフルで華やかなファッションに身を包む。今まさに、トレンドの肩のはったボクシーなジャケットに通じる着こなしは参考にしたい。ジャン=ルイもより渋みが効いたパリジャンのシックなスタイルに変化。

彼ららしいユーモラスな(?)試みで、最初の出会いを実験的に振り返ることになるのだが、ロマンチックな前作と異なるのが、かなりサスペンス的な要素があるところ。豊かに年齢を重ねた2人が、過去の気持ちをお互いに探り一挙一動の答え合わせをしながら、現在の愛情について見つめ直す過程は、スリリングで目が離せない。互いを別つ距離や障壁もダイナミックな設定で、バブル時代に撮影された映画の迫力には驚くばかりだ。大きく成長した2人の子どもたちとの関係も、“フランス式”なのでお楽しみに。

『男と女 Ⅱ』
(1986年/フランス/カラー/112分)
監督/クロードルルーシュ
音楽/フランシス・レイ
出演/アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、リチャード・ベリー、エブリーヌ・ブイックス

DVD ¥3,790(ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント)
©2019 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

仏映画に学ぶ豊かな人生。死を目前にして想う、最愛の人とは。

『男と女 人生最良の日々』

時は現代、齢80を超えた2人の物語。アンヌは映画界から退き小さな雑貨店を営み、ジャン・ルイは痴呆の症状が見られるため介護施設で生活している。前作から時を経て、アンヌがどうしても許せなかったジャン・ルイの“ある癖”が原因で、2人の関係は変化していた。しかし、息子アントワーヌの計らいで、淡い恋心が再び蘇る。ジャン・ルイの困ったものいいと食い違う記憶に周囲は戸惑いながらも、揺るがないアンヌへの想いと死を目前に叶えたい計画が人々を巻き込んでいく。映像と物語の設定がリアルで面喰らうが、話が進むにつれ、冒頭で引用されるヴィクトル・ユゴーの言葉の意味が徐々に深みを増していく。また、66年版で2人が訪れたドゥーヴィルの「オテル・ル・ノルマンディー」は実際に存在し、再訪する場面も。モノクロの描写がフルカラーで撮影され、恋の魔法の種明かしのよう。

ファッションは、アンヌのショールの色に注目。話の展開へのヒントが隠れている。それにしても、心を許しありのままの姿を受け入れるアンヌの愛情の深さは感慨深い。一方、ジャン・ルイの回想として70年代半ばのパリの街を凱旋門からシャンゼリゼ通りを下り、セーヌ川を渡って、アンヌの住むモンマルトルまで上っていく車で疾走するシーンは溢れんばかりの彼女への情熱を表す。なかなか噛み合わなくても気持ちが通じあえば、人生が鮮やかに回りだす。エンドロールの最後まで、円熟した男女の愛を余すことなく描いている。

『男と女 人生最良の日々』
監督/クロード・ルルーシュ
出演/アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ
音楽/カロジェロ、フランシス・レイ
2019年/フランス/90分/フランス語
©︎2019 Les Films 13 – Davis Films – France 2 Cinéma
otokotoonna.jp/
2020年1月31日(金) TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

Text:Aika Kawada Edit:Chiho Inoue

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