中村アン インタビュー「いい意味で期待を裏切りたい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

中村アン インタビュー「いい意味で期待を裏切りたい」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。中村アンのビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年12月号掲載)

──最近、女優としての活躍が目覚ましいですね。特にドラマでは2015年の『5→9〜私に恋したお坊さん〜』以来、連続ドラマの常連となっています。

「実はしばらくは戸惑ってばかりでした。25歳で覚悟を決めてテレビに出たときは、売れたい、頑張りたいとガムシャラだったんです。でも女優というお仕事をいただくことになって俳優さんたちに囲まれることになり、しばらくは、私どうしよう?というテンションでしたね。私、初めの一歩をなかなか踏み出せないタイプで、背中をバーンと押されないと、何事にも躊躇してしまうんです。女優というお仕事にもちろん真剣に取り組んでいたのですが、頑張っても、どれが正解かわからない状態で。今年、主演の話をいただいて、これは覚悟を決めなきゃ!と、やっと活が入りました。私が主演でゴーサインを出してくださった方々の気持ちを考えると生半可ではダメだし、一緒に頑張ってくださる人たちに申し訳ない。私自身、去年30歳になって、変わりたい、ここからキャリアを積みたいという思いもありました。ただ良くも悪くも、何をしても“中村アン”のイメージが抜けないのが今の悩みでもあり…」

──反対に、ご自身でイメージを壊さないように意識しているのかと。

「いいえ。特にドラマではむしろイメージを崩したい気持ちが強いです。『情熱大陸』に出演したとき、スタッフさんに『アンさんの場合、情報がたくさん出回っているので、新しい一面を探すのが大変です』と言われて。俳優さんは普段の生活がミステリアスだから、素の生活をチラッと見せるだけで、こんなレストランに行くんだ! こんなしゃべり方なんだ!と視聴者を驚かせることができる。ところが私はテレビでも自分のキャラをありのまま見せてきたので、いい意味で期待を裏切りたいという気持ちがあります!」

──今は、初主演で意識が変わったわけですね。

「はい。監督がワークショプをしてくださって、感情のつくり方、動きに感情を乗せる方法など、お芝居の基礎を教わりました。例えば、ただ歩く後ろ姿でも感情を表現できる。そんな時間をかけさせて申し訳なかったし、私は習ったことをどんどん飲み込んで表現しなければいけない。振り返ると、今年はいちばん幸せな時間を過ごしていますね。だから今を無駄にせず、ドラマに生かしていきたい。やっと女優業が楽しいと思える瞬間が訪れつつあります」

──放送中の月9ドラマ『SUITS/スーツ』で織田裕二さんが演じる敏腕弁護士・甲斐正午の秘書・玉井伽倻子を演じていますね。どんな女性ですか。

「相手が何を求めているのかを瞬時にくみ取る能力の高い女性です。アメリカで大ヒットした同名のドラマが原作なので、日本の秘書のイメージとは違って甲斐とは対等なパートナーで右腕でもある。全幅の信頼を得て阿吽の呼吸で動くというか。甲斐のことは男性として気になる存在でもあります。原作ドラマを知った上で演じてほしいと言われて、見たらもうハマっちゃって! 玉井の役に当たるドナは強力な目力が特徴。そんな目の使い方を勉強しています。そうしたら、ドナ役のサラ・ラファティさんが私のインスタグラムをフォローしてくれたんですよ。勝手に興奮して、さらに頑張らなきゃ!って。日本版を気にかけてくださっているようで、うれしいです」

──織田さんの右腕として共演する心境は?

「玉井は相手が年上で上司でもあまり敬語を使わないんです。心の中では、ああ、織田裕二さん!とリスペクトしているけど(笑)、それを見せたら負けだと思って。母の好きなタイプが織田さんなんです。胸板が厚くてスーツが似合う“男!”という感じがします。私も遺伝なのか、そういうタイプが好き。現場では気さくに話しかけてくれて、呼び名も「玉井」では遠く感じるから「タマ」にしようと提案してくださったり。今回の私の課題は、対等で有能なパートナーとして物怖じせず、従順にならないようにと意識しています」

──子どもの頃、女優になりたいと憧れたことはありましたか。

「まったくないですね。アカデミー賞授賞式を見て、みんなキレイだなあと思ったくらい。私は堅い家に育ち、親は福利厚生が充実しているきちんとした仕事に就いてほしいと願っていましたから。就活では黒髪、スーツ姿で、ビッグサイトの就職説明会にも行きましたよ。その頃は視野が狭くて、OLにならなきゃいけないと思っていた。アパレル企業にも興味があり探しましたが、結局オファーをいただいた今の事務所に入ることに。好奇心だけでこの世界に飛び込んだのは、自分でも大胆だったなあと思いますね」

──高校、大学とチアリーディング部で活躍。それも肩の上に人を乗せる土台のパートだったとか。その経験は今に生きていますか。

「はい。当時は首周りや肩があざだらけでした。痛くて眠れないから、氷で冷やしながら寝たり。今でも体を鍛えるのが好きで自分を追い込めるのはチアリーディングのおかげかもしれません。あと、笑顔がチャームポイントになったことも。相手を元気づけるのがチアの役目。笑顔の輝きが採点に入っていて、訓練するんです。始めた頃はすごく恥ずかしかったのに、口角を上げてガーッと笑えるようになりました。私はいつもヒマワリの花を頭に描いて笑うんですよ。元気な笑顔は私の得意技。逆にドラマでは派手に笑う場面は少なくて、微笑みとか含みのある笑いが多い。口を閉じて笑うのが苦手なんです」

──意外な苦手があるんですね。最近、新たに始めたことはありますか。

「車の免許を取りました。もっと自分でできることを増やしたいなあと思っていて、自立心がどんどん芽生えている最中です。身分証がなくていつもパスポート頼りだったから、や っと大人になれた気がします(笑)。長期間の旅行にも行くようになりました。学生時代はスポーツ三昧で、仕事を始めてからはいつオファーがいただけるかわからなかったから。2年前には長期でニューヨークに。出産や子育て期に入ってくる友達も増えましたが、私は違う楽しみに向かっています」

──では結婚は考えない?

「いえ、結婚はしたいです。私は3人きょうだいの長女で楽しい子ども時代だったから、子どもは複数欲しい。35歳で双子を産むのが理想なんです。母に話したら、そんな簡単には…と呆れられましたけど(笑)」

Photo: Akihito Igarashi Hair&Makeup: Kiyoshi Aiba Interview&Text: Maki Miura Edit: Sayaka Ito

Profile

中村アン(Anne Nakamura)1987年生まれ、東京都出身。高校大学とチアリーディング部に所属し、全国大会に出場した経験を持つ。現在は女性ファッション誌のレギュラーモデルを務め、女優としても活躍。2018年4月期『ラブリラン』では連続ドラマ初主演を果たす。10月スタートの『SUITS /スーツ』(フジテレビ系にて月曜21時〜)に出演中。健康的な美ボディの女性としても大注目されている。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する