芳根京子インタビュー「コンプレックスもそのまま受け止めたい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

芳根京子インタビュー「コンプレックスもそのまま受け止めたい」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。芳根京子のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年3月号掲載

──女優になったきっかけは? 「高1のときにスカウトされたのがきっかけです。でも初めの1年はやる気が全然なくて、マネージャーさんとけんかしていました(笑)。そこで『いま辞めても、事務所にはなんの損も得もないよ』と言われて。私がいなくなったところで何も変わらない。それなら私が辞めたら困るくらいに大きくなってやろうと、スイッチが入りました」 ──それまではどのような生活を? 「小・中学校では吹奏楽部で、フルートをやっていました。どちらもすごく部活が盛んだったので、朝練が毎日ありましたし、練習漬けの日々。あとピアノも習っていました。本や漫画、テレビなどはこのお仕事を始めるまであまり触れることがなかったんです。答えが決まっていることがあまり得意じゃなくて、学校でも5教科よりも実技のほうが得意でした」

──それなら音大に進んで音楽の道もあったのでは?

「それも少し考えました。でもプロを目指している人と戦っていかなきゃいけない環境で音楽と向き合うのは、なんだか違う気がして。音楽を嫌いになるのが怖かったので、趣味として楽しく関わっていきたいと。逆に言うと、女優のお仕事はやったことがなかったから、飛び込めたんです。挑戦して違うと思ったらスパッとやめることもできる。でもやってみたら想像以上に楽しい!好き!と思ったんです。こんなに好きだと思えることが、人から勧められて手に入るんだ!って、びっくりしました」

──楽器みたいにコツコツやることが得意なんですか。

「どうなんでしょう?すごく負けず嫌いなんですけど、勝ち負けが決まることが好きじゃなくて、運動部には入らなかったんです。運動は好きでしたが、勝ち負けが決まる球技より、自分で記録を伸ばせる陸上が好きで。体育祭では、タイムが出て、今の自分に勝ちたい!と思える短距離、長距離、ハードル走に出ていました。吹奏楽にもコンクールがありますが、ある意味、自分との闘いでもあり、仲間みんなで一緒に戦う団体戦でもある。吹奏楽も陸上のように自分と闘う感覚でやっていましたね」

──今の自分に勝つ、と。その精神はどのように育まれたと思いますか。

「善くもわるくも、それほど他人に興味がないんだと思います(笑)。オーディションも勝ち負けではあるんですが、自分とどう向き合えるかだと思っていて。たとえ受からなくてもご縁で何かが広がるかもしれない、もと自分に合う作品や人に巡り合えるかもしれないって思えるから。もちろん、次はもっと頑張ろうと喝も入りますし。そんな姿勢でいたら『もっと悔しいと思って』とマネージャーさんに言われたこともあります(笑)」

──ドラマ『表参道高校合唱部!』では1000人以上の候補者から選ばれ、NHKの朝ドラ『べっぴんさん』ではヒロインを射止めるなど“オーディション荒らし”の異名もありますよね。

「いや、全然オーディション荒らしじゃないですよ。たまたまドラマが始まったり、作品が公開されたりタイミングが重なって情報が出たから、そう見えるだけです。『とと姉ちゃん』のオーディションは1次で落ちていますしね。昨年もあるオーディションを受けましたけど、落ちてしまいました…」

──16歳で女優デビュー以来、翌年には朝ドラ『花子とアン』に出演、20歳でヒロインを務めた映画『心が叫びたがってるんだ。』が公開など、この5年間で見事なキャリアを積まれて。次は東村アキコの人気漫画をドラマ化した『海くらげ月姫』で月9主演。

「芸能界に入らず生きていたらこういう経験は絶対にできていないと思うと、声をかけてくれた方、スイッチを入れてくれたマネージャーさん、応援してくださる皆さんに感謝しています。未来への期待もあってキャスティングしてくださっていると思うので、私がお仕事で前進することで、皆さんに恩返しや感謝の気持ちをお返しできるのかなって。その意味も込めて、もっと頑張らなきゃと思っています」

──『海月姫』で演じる倉下月海は趣味に没頭するオタク女子ですね。かなり原作に忠実に作っているとか。

「基本、スウェットに赤いちゃんちゃんこを着て、三つ編み、眼鏡、そばかすと、原作そのものの扮装です。同じアパートに住むオタク仲間“尼〜ず”も原作そっくり。コメディをがっつりやらせてもらうのは今回が初めてなので、毎日楽しく撮影しています」

──月海みたいなオタクっぽさはご自分の中にありますか。

「いいえ、私にはオタク的な要素がないなって実感しています。好きなことはたくさんあるんですけど、知識を掘り下げるまではいかなくて。例えばトマトがものすごく好きなんですが(笑)、種類に詳しいわけでなく、リコピンくらいしか栄養素もよく知らない。ハンバーグやラーメンも好きなんですが、どこのハンバーグがいいとかこだわりがなくて。おいしいお店に連れていってもらっても、どのお店でもおいしいと言うから、連れていきがいがないとマネージャーさんに言われます(笑)」

──月海は男っ気がないなどコンプレックスも多い役。ご自身は?

「いっぱいあります。すごい人見知りで、初めての人とのコミュニケーションを取るのは得意じゃない。また頑固で負けず嫌いでもある。でもそれがあるから今ここにいられるとも思います。自分にとってはマイナスに感じられることも、人によってはプラスに取れたりもしますよね。好きなことを情熱的に話せる月海が、私には羨ましいですし。だから自分の中のコンプレックスもそのまま受け止めたいです」

──憧れの女優や作品は?

「こうなりたいと頭の中では考えていますけど、自分で決めつけて幅を狭めてしまうと、良さがなくなったり、無理して背伸びしてしまうかもしれない。今は目の前のことを全力で楽しくやらせてもらって、評価は周りの方にしていただけたらと思います。『どういう女優さんだろう。いまだによくわからない』と言われるぐらい、幅広い役をできるようになれたら理想かも」

──この2月で21歳。結婚など人生設計は考えていますか。

「中学生の頃は考えていました。料理の専門学校に行って、就職、結婚…。ちょうど今頃は、就職している年齢ですね。でも状況は一変して、人生なにが起きるかわからないなあと。この前、マネージャーさんに『私、10年後に結婚します』と言ったら『どうぞ、ご自由に』って(笑)。家族がすごく仲良しで大好きだから、私も結婚したいし、子どもを持って素敵な家庭を築きたい。でもいつまでにとは考えず、とにかくお仕事を頑張れば将来いいことがあると信じています。今は自分をどんどん高めていく時間として、とことん頑張りたいです」

Photo:Gen Saito Styling:Daisuke Fujimoto Hair & Makeup:Kotomi Interview & Text:Maki Miura Edit:Saori Asaka

Profile

芳根京子(Kyoko Yoshine)1997 年生まれ、東京都出身。2013年にドラマ『ラスト♡シンデレラ』で女優デビュー。14年NHK 連続テレビ小説『花子とアン』に出演し、16年NHK 連続テレビ小説『べっぴんさん』で主演。現在『海月姫』(フジテレビ系、毎週月曜21時〜)で主演を務めている。18年は映画『ボス・ベイビー』(3/21〜)、『累ーかさねー』(9/7〜)、『散り椿』(9/28〜)の公開を控える。

Magazine

MAY 2024 N°176

2024.3.28 発売

Black&White

白と黒

オンライン書店で購入する