山本美月インタビュー「愛のあるオタクなんです!」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。山本美月のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2017年12月号掲載)
──山本さんにとって、人生の大きなターニングポイントは?
「雑誌『CanCam』のモデルになったことです。スカウトされて高1の冬に事務所へ入り『CanCam』のコンテストに受かったのが高3の夏。高校の演劇部にいて、俳優に憧れていたんです。演劇部では『ロミオとジュリエット』のジュリエットとして、有名なバルコニーのシーンを演じたり。裏方も好きで、演出や照明、音響もやりました。『CanCam』出身の女優さんも多いので、私もそうなれたらなと」
──なぜ演劇部に入ろうと?
「小6のとき、学芸会の実行委員だったのですが、主役が全然決まらなくて。早く塾に行きたかったから、私がやる!と名乗り出たんです。『噂の幽霊レイカちゃん』という話で、そのタイトルロールを演ったら、すごく楽しかったのが原点ですね」
──モデル時代は、イメージが固定されているようにも見えました。
「実際の自分とかけ離れていることに悩んだ時期もありましたが、撮影では『CanCam』モデルの自分を演じていました。最初はカメラを彼氏に見立てた“うさぎOL”。そのうち、ずるいくらいに可愛いという“ずるかわ”という形容詞を付けてもらい、狙ってぶりっ子をやるキャラになったんです。設定に現実感がない分、すごく表現しやすくて。1カ月コーディネート企画では、お鍋を触って『熱っ!』と手を耳たぶにやる仕草とか(笑)。“ずるかわ”を確立するのが私の使命で、『CanCam』モデルとしてちゃんと自分のキャラを立てることができたのは大きかったです」
──この撮影でも、ポージングや見せ方が本当に上手で感心しました。
「モデルの仕事はその洋服を見せることが第一。編集さんやライターさんに基礎から教育していただきました。撮影された自分の写真をパソコンで全部見て、先輩のカットと比べてダメ出ししてもらい、復習用にプリントアウト。上手にできなかったお洋服は買い取って、家の鏡の前で練習したりも。まさに体育会系でした」
──今年の9月号で『CanCam』を卒業。“ずるかわ”は、やり尽くした?
「はい。フレアスカスートはうまい具合に回せます。腰だけぐるっと、がコツ。『CanCam』名物らしいです」
──女優業は楽しいですか。
「どの役も面白いです。映画デビュー作『桐島、部活やめるってよ』では高校のマドンナ的な役だったのに、『全然、可愛くない』ってすごく怒られました。でもそれで評価されたので、今ではいい思い出。映画『黒執事』では、メイド服でアクションしたことも。舞台『怪談・にせ皿屋敷』では、醜い容姿の女の子がだんだん美しくなる役で、アドリブの多さに鍛えられました。現場によって内容もチームも違うので、やればやるほど幅が広くなっていく気がします」
──放送中の『刑事ゆがみ』では、今までのイメージを一新して、氷川和美という男の子っぽい役ですね。
「ヒズミは中性的でミステリアス。漫画喫茶を拠点にしていて、一切しゃべりません。原作漫画にはないオリジナルの役で、浅野忠信さんが演じる弓神刑事とも因縁があるようですが、まだ私も知らない。私にとってもミステリアスな役なんです(笑)」
──無言で演じるのは難しそう。
「弓神刑事がたくさん話しかけてくれるので、つい返事をしたくなりますね。どこか捨て犬みたいな必死さや愛らしさ、拾いたくなる感じが出せたらいいなあと思います。服装がハードめで、革の匂いのするコートが格好いいんです」
──敏腕ハッカーとして弓神刑事を支える役。山本さんは農学部出身と理系だから、パソコンも得意?
「いえ、機械、弱いんです。生物専攻で物理系じゃないので。最近もパソコンが壊れて初期化できず、わからなさすぎて、おなかが痛くなったほどです。ゲームも下手。ボタン操作が覚えられなくて、シュッて投げて捕まえるような単純なゲームならできるけど、視線を前に、装備を変える、マップを開くとかになると途端にダメ。ボタンは覚えられて3つです(笑)」
──ドラマでは提案するタイプ?
「しないです。ドラマは監督のものだと思っているので、私が意見を言ったら私のものになっちゃう。意見を求められたら言いますが、求められなければ口は出しません」
──この先、どんな役をやりたいですか?
「アニメや漫画が好きなので、キャラクターが立った役に惹かれます。ヒズミもアニメに出てくるようなキャラなので、すごくうれしい。女の子だけど男っぽい、男の子だけど女っぽい中性的なキャラが大好きなんです。アニメだったら、沢城みゆきさんや水樹奈々さんが演じるような。たぶん好きになったきっかけは『HUNTER HUNTER』のクラピカかな。『青い花』の杉本先輩みたいな、女子校にいるショートカットでモテそうなキャラがすごく好き。ファンタジーも好きで、ハリー・ポッターシリーズにも憧れます。ハーマイオニーを演じたい!」
──非現実的で、想像力豊かな世界がお好きなんですね。アニメはどのくらいの割合で見ていますか?
「毎日見ています。私は知識がたくさんあるオタクじゃなくて、純粋にアニメが大好きな、愛のあるオタクなんです! 監督や制作会社、声優などの知識をひけらかすのではなく。知識を入れなければと追い込まれるのは、すごく嫌。知らないからといって、にわかファンといわれるのは違うし、ただ好きであればいいんじゃないかなぁ」
──エンタメは楽しんでこそ!ですよね。最近、身の回りに変化は?
「ここ2年ぐらい、私、反抗期かなって思っています。反抗期がなくて、いい子だったんですよ。でも今になって(笑)。一人で生きていける人間になりたい願望があるんです。この仕事をしていると、事務所や周りの人にいろいろ頼れてしまうから『あれ、私、一人じゃ生きていけないのかなあ?』って、ふと不安になるんです」
──なかには、自分でスケジュール管理して、一人で行動する大物女優さんもいらっしゃいますよ。
「ちゃんと外の世界を知っているからできることですよね。わりと年上の俳優さんとよくご飯に行かせていただくのですが、現実的な話を聞くと、何が正しくて何が間違っているのか、自分で判断できるようにならなきゃと思います。結局、最後は一人だから」
──おじさんたちとも気が合うということは、性格はおやじっぽい?
「よく言われます。あまり媚びるのが得意じゃないところとか。おつまみも、エイヒレや酒盗ですから(笑)」
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Photos:Akihito Igarashi Styling:Aya Kurosaki Hair:Yuuk Makeup:Chacha Interview & Text:Maki Miura Edit:Saori Asaka