玉木宏インタビュー「この年齢になって初めて、自分らしさが表現できるようになった」 | Numero TOKYO
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玉木宏インタビュー「この年齢になって初めて、自分らしさが表現できるようになった」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。玉木宏のビフォー&アフター。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年5月号掲載)

──1月に40歳になりましたが、40代の実感はありますか。 「先日、妻夫木(聡)君と久しぶりに食事に行ったんです。映画『ウォーターボーイズ』が2001年公開だから、もう20年ぐらいたつんだなと話をしていました」 ──早いですね。定期的に連絡は取り合ったりしているんでしょうか。 「お互いに忙しいから、しょっちゅう会うのは難しいですけど、なんとなくお互いの活動は把握しています。『ウォーターボーイズ』では、合宿に1カ月半、撮影に1カ月半をかけて、ずっと共同生活をしていたので、一つの作品ではあるけれど、僕らの青春そのものでもある気がして。あの作品で出会った仲間は、数年ぶりに会っても、あの頃の気持ちのまま話せるんです。不思議な関係ですね」

──あらためてこの20年を振り返ってみて、いかがですか。

「昔は尖った部分も必要だから常に前に出ようと意識していましたが、もともとそういうタイプではないので、20代後半のあたりからマイペースでもいいかなと、少しずつ肩の力を抜いてやってきました。いま周りを見ると、いい落ち着きを保って活動している同世代の俳優が多いですね。この年齢になって初めて、自分らしさが表現できるようになったりもしますし。これが大人になったということなのかもしれません」

──20代の頃は王子様的なイメージがありました。当時は葛藤も?

「俳優をやっていると、どうしてもパブリックイメージが出来上がってしまいます。『のだめカンタービレ』では、ルックスが良くデキる人の役をやらせていただきましたが、普段の僕は全然爽やかではないし、もっと泥くさい。自分には違う面があって、それを見せたいという欲が、いい意味での反発心となって、自分のエネルギーになっていたと思います」

──もし、今「イケメン俳優」から脱却を模索している俳優がいるとしたら、どうアドバイスしますか。

「自分の場合は、何かがあって急激に変わったわけではないのですが、変わりたいと思う気持ちを持ち続けていると、結果的に少しずつ変わることができるのではないかと思います。それから、一人の人間として等身大でいることも大切です。自分も等身大でいるためにはどうしたらいいか、考え込んだ時期もありました」

──これまでのキャリアの中で、ターニングポイントは?

「この時期だとか、この作品だということはないのですが、あるとすれば30歳になったときです。20代は大人に見せたかったけれど、もう背伸びをしなくてもいいと思ったら仕事もさらに楽しくなって、30代はあっという間に過ぎてしまいました。今年40歳になりましたが、40代は30代よりも楽しくなる予感がします。40歳は2回目の成人式のようなものですよね。20歳の頃を一緒に過ごした仲間と縁があって再会できて、妻夫木君ともあの頃とは違うステージから、当時を俯瞰した話ができたりして面白いです」

──40代がより楽しくなりそうだというのは気負いがなくなるから?

「それもありますし、僕らもある程度の経験を積んできたので、次は僕らが行動する世代なのかなと思います。40歳からがターニングポイントになれるように、楽しんでいければと思います」

──7月28日から始まる『竜の道 二つの顔の復讐者』は、40歳になって初めての主演作だそうですね。

「年齢はあまり意識していませんが、高橋一生さんと初めての共演なので、それが楽しみですし、これまで女優さんと組むことが多く、同世代で同性の俳優とがっちり組む連ドラは初めてなので、自分にとって新しいチャレンジでもあります。大河ドラマもそうですが、男性俳優が多い作品は、特別な刺激をもらえることも。今回も男たちの話なので楽しみです」

──玉木さんが演じる竜一と、高橋さんが演じる竜二は双子という設定ですが、いかがですか?

「竜一は復讐のために整形して戸籍も変えています。そんなことをするくらいの人物だから、躊躇がない性格だと思います。エリート官僚になった竜二と、親代わりの人を死に至らしめた相手に対して、竜一は裏社会から、竜二は表から攻め込みます。竜一はどこか不器用でぐちゃぐちゃになりながらもターゲットに向かって突き進んでいく。竜二は表社会からスマートに攻撃していくので、二人の対比も見どころです。同世代ですし、一生さんとの台詞の掛け合いの中から、いい化学反応が生まれてくるのではないかと思っています」

──復讐劇でもあり「家族」の物語でもありますが、竜一にとって、弟の竜二、血のつながらない妹・美佐(松本穂香)はどんな存在ですか?

「『二人で一つだ』という台詞があるのですが、竜二は兄弟以上の存在です。そこに美佐がいることで二人の関係性がギクシャクしてしまう。竜一は躊躇のない人間ですが、それでも心の揺れ動きはあるわけで、そういう意味でも美佐はキーパーソンになっていきます。他にも遠藤憲一さんをはじめ濃いキャラクターが登場するので、これまでにない作品に仕上がると思います」

──プライベートのお話も伺います。多くの趣味をお持ちですが、インスタの風景写真はプロ級ですね。

「自撮りをする性格でもないので、旅先で見た美しい風景を少しずつアップしています。カメラ歴は長いですが、やっていてよかった趣味の一つです。被写体になるとき、何を求められているのか察知できるので。今年は映像も始めようと思っていて、スタビライザーが付いたカメラや小さいドローンを購入しました」

──格闘技も趣味だとか?

「ボクシングを15年やってるんですが、ここ半年はブラジリアン柔術にハマって、毎朝道場に通っています」

──それは仕事のため?

「単純に好奇心ですね。ただ、普段からベースをつくっておけば、鍛えなくちゃいけない仕事のときにも対応できるので、それは意識しています」

──最後に、これからの抱負をお聞かせください。

「次は僕らが行動していく世代だと話しましたが、もちろん不安もあります。今後、映像がどう変化していくのかわからない。でも、面白い作品は増えているし、韓国映画の『パラサイト』がアカデミー賞作品賞を取ったということは、僕らにもチャンスがあるわけです。世界がつながってきている中で、さらにいいものを作るためにどうしたらいいのか。僕らもアイデアを出していきながら、形にしていけるように頑張ります」

Photo:Masato Moriyama Stylist:Kentaro Ueno Hair & Makeup:Yukiya Watabe Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Mariko Kimbara

Profile

玉木宏Hiroshi Tamaki 1980年、愛知県出身。98年に俳優デビューし、2001年映画『ウォーターボーイズ』で注目を集める。ドラマ『こころ』や『のだめカンタービレ』で人気を確立。以降、ドラマ、映画、舞台、CMなど幅広く活躍。7月28日(火)21:00 から始まる連続ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)で主演を務める。映画『HOKUSAI』(2021年公開予定)では喜多川歌麿を演じる。公式ホームページ内限定ページでは自身撮影の動画も公開中。

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