サンドウィッチマン インタビュー「M-1優勝はあのコンビニ店員のおかげ!?」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。サンドウィッチマンのビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2020年3月号掲載)
──ラジオにバラエティに大活躍のお二人ですが、ターニングポイントとなったのは、やはりM-1グランプリでしょうか。
伊達みきお(以下D):「仕事面で考えたらそうですね。2007年に優勝してからもう12年になります」
富澤たけし(以下T):「M-1で優勝してから、半年は休みなく仕事をいただいて。急にテレビの世界に入ったし、僕らは先輩もいなかったので、戸惑うこともありました。目の前で(明石家)さんまさんが喋っていても、テレビを見ているみたいで、現実感がなかったですね」
──優勝賞金をもらって、浮かれてしまうような瞬間は?
T:「優勝したのが20代と若かったらそうなったかもしれないですけど、優勝した当時、すでに30歳を過ぎていたのでそんな余裕もなかったです。ここでミスしたらもう仕事がなくなるから、ここからは食えるようにしていかないといけないという気持ちの方が強かったですね」
D:「しばらく休みがなかったので、浮かれる暇もなかったんです」
──そこから着実にステップアップしてきた実感はありますか?
T:「振り返るとそうですけど、毎日ネタを作って仕事して、気付けばレギュラーをたくさんいただいているという感じです」
──レギュラーといえば、今、フジテレビ系で放送中の『ウワサのお客さま』では麒麟の川島明さんとともにメインMCを務めていますね。
D:「お店に来る常連さんや店員さんにインタビューして、スタッフがその人の背景を調査したり、お店の裏技を紹介したりする番組です」
──お二人は下積み時代、さまざまなアルバイトを経験されたそうですが、印象に残っている「お客さま」は?
T:「うーん、なんだろう」
──ピザ屋のネタはどうですか?
T:「あれは、ピザ屋のバイトでよくあることをネタにしたので、モデルはいなかったんですけど。そういえば、ピザ屋のバイト宅配をしたとき、配達先のマンションの廊下の電気が切れて薄暗くて、部屋番号が見えなかったことがありました。右から数えるとあの部屋だけど、左からだとここだよなと、ウロウロしていたら、違うピザ屋の宅配が来て、その人も部屋がわからずにウロウロしていて。もう一か八かで行こうとしていたら、さらにもう一人ピザの宅配が来て、三人でウロウロしていたことがありました。結局、一人が思い切ってインターホンを鳴らしたら当たりだったので、そこに残りの二人も届けたんですけど、お客さんは、どうやらピザの食べ比べをしようとしていたらしいです。この話はネタにしにくいので、使ってないですけど」
──伊達さんは?
D:「あまり接客のバイトはしなかったんですよ。道路工事や引っ越しとか、日雇いの肉体労働の方が好きだったので。一度、家に幽霊がいるかを調べるために、一日中部屋を監視するというバイトもしましたけど、それも日雇いでした」
──逆に、お客さんとして印象に残っている店員さんはいましたか?
D:「下積み時代に、10年くらい富澤と一緒に住んでいたんですけど、その家から一番近いコンビニに、俺らの3倍くらい太っている店員さんが働いていたんです。バイトだと思うんですけど、その人が何年間もずっと働いていたんですね。太っていたのでカウンターにぴっちりはまって、レジを打っていて。『ありがとうございました』が『あっしたーん』、『1円です』が『イチェネンでっす』とか、イントネーションが、かなり独特で強烈に覚えています」
──その間、バイトさんの体型に変化はなかったんですか。
D:「どんどん太っていきました。朝早い仕事で、明け方にコンビニの前を通ると、私服姿で帰宅するその人にすれ違ったりするんですけど、自転車のカゴいっぱいに弁当が入っていて。廃棄する弁当だからもったいないですけど、そりゃ痩せんわなーと思っていました」
T:「M-1の優勝も、あの人を見ていたおかげかもしれないですね。コンビニバイトは別に悪くはないですけど、30歳過ぎてバイトには戻りたくないと思いましたから」
──現在は、それぞれに家庭がありますから、今、そのバイトさんがどうしているか気になりますよね。
D:「いや、別に……」
──もし、「あの人に会いたい」という番組があったら?
D:「呼ばないですよ」
T:「まあ、向こうからしたら、のちに『あれはサンドウィッチマンだった』と思ったでしょうけど」
D:「でも、お客さんの顔を見ないような人だったからな。俺らに気付いてないかもしれない」
──話は戻りますが、その時代から、M-1優勝を経て、今やバラエティだけでなく、ラグビー関連や東北地方の情報番組まで、幅広くお仕事されていますね。
T:「自分たちができる範囲でしかやってないですけど、結果的には、いろんなお仕事をいただいて。それは良かったなと思います」
──最近、変化したことは?
T:「二人とも子供がいるので、幼稚園や保育園に関するネタが増えてきたりはしてますね。それから、最近、老いたなと思います。老眼も始まったし、膝に水も溜まっていますし。おっさんの病気だと思っていた尿路結石も経験しましたしね。40歳過ぎたあたりから、ひしひしと老いたと感じますね。自分が老眼になるとは思っていなかったけど、眼科の先生に『老眼です』と言われたら受け入れるしかないですね」
D:「俺は白髪ですね。ふと富澤を見ると、白髪が増えたなと思いますね。老いはすごいですよ」
T:「仕事の面だと、レギュラー番組が増えてきたことですかね」
──もうコンビニバイトに戻ることはないですね。
T:「でも、この仕事もいつどうなるかわからないですから。何度も言いますけど、コンビニのバイトが悪いわけじゃないですよ。あの人も、コンビニのオーナーだったかもしれないし、実はお金持ちで暇つぶしに働いていたかもしれない。まあ多分、バイトだったと思いますけど」
──では、最後に、気分転換やストレス解消方法を教えてください。
D:「子どもと遊びます」
T:「お風呂に入って『ワーッ』と叫びます。ぜひやってみてください」
Photo:Kisimari Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Saki Shibata