栗原類インタビュー「自分のアイデアを人に伝えることを恐れないで」 | Numero TOKYO
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栗原類インタビュー「自分のアイデアを人に伝えることを恐れないで」

自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。栗原類のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年10月号掲載)

──木曜ドラマ『ルパンの娘』では、深田恭子さん演じる三雲華の兄・渉役です。「引きこもりのハッカー」というキャラクターですが、演じてみていかがですか。

「僕が思うに、彼は今の時代の人たちが共感するようなタイプの男の子。たぶん小さい頃に自分が何かで失敗したことによって勇気というものを失ってしまって、家から出られなくなったんじゃないかと思うんです。でも、自分自身がやっていることには誇りを持っていて、彼なりに家族をサポートしたいと思っている。だから、単純にすごく家族思いな男の子なのかなと思いました」

──基本的にキーボードを打つシーンが多く、台詞がない。だからこそ、いろいろと想像できる人ですね。

「こういうタイプの役は初めてだから、僕の中でも動きと表情のみで示すというのは挑戦なんです。限られた表現の中で物語をどう届けていくかというのは、すごく難しいこと。台詞がない分、自分が見たものに対してはっきりと反応するようにしています」

──栗原さんが演じることで、役に人間味がにじみ出てくるのが面白いです。お芝居の中で、自分の持つ個性や強みを意識することはある?

「ありがたいことに個性が強いと言われることが多いんですが、僕自身はそういう認識はなく、与えられたものをやっていくという感覚なんです。でも、台本に描かれていないちょっとした動きなど、閃いたアイデアに関してはとにかく出しまくるようにしています。今回でいうと、渉くんが家族と会話するときの機械の声を『こういうものはどうですか』と提案したり。武内監督はそういう役者の意見を聞いてくれるので、とても安心感があります」

──栗原さん自身が感じる、このドラマの魅力はどんなところですか。

「『ルパンの娘』の主人公は深田恭子さん演じる華なんですよね。対して、瀬戸康史さん演じる刑事の和馬は、悪党につかまってしまうような状況が多くて、そこに華が助けにいく感じなんです。だからこれまでのドラマとは逆で、『女性が活躍して男性を助ける』というシチュエーションが多いことがまず、ちょっと笑えて面白い。それと同時に、登場人物たちがみんな濃くて、一度見たら忘れられないような人ばかりなんです。演じる人たちも存在感があって個性的なので、見ているだけで楽しめるドラマになっていると思います」

──モデルの仕事から数えていくとキャリアはすごく長いですよね。振り返ってみていかがですか。

「初仕事からは24年、本格的にモデルを初めてからは12年、役者の仕事をするようになってからは7年目です。いま思うのは『自分の仕事は自分の人間性を反映する』ということ。活動してきたなかで、いいことばかりじゃなく、時期的にダメだったなと感じるときが何度もありました。もちろん、そのすべては大事な経験で無駄になったことは一つもありません。でも、そのときもっと仕事に対する意識がちゃんとしていたら、さらに良い結果が出たんじゃないかと思うこともある。結局は自分の人間性を磨いていかないと、いい仕事やいい人たちには出会えないんだなと感じます」

──ターニングポイントといえるような瞬間はありましたか?

「まずひとつは、やっぱりテレビに出るようになった2012年頃です。もともとそんなことは想像もしていなかったですし、劇団に入りながら演劇や映画を頑張っていこうと思っていたときでした。そこでたまたま『アウトデラックス』に出て、世間の皆さんに認識してもらったことがきっかけとなって、今のようにお芝居に触れ合っていくことができた。もう一つは、17年に『春のめざめ』という舞台に出演したこと。そこで白井晃さんの演出に出会って、説明の美しさとか、演劇の理論とかにすごく通じるものを感じて。そのとき『自分の中に役を見つけて、自分の内面的なものをもっと出してほしい』と白井さんに言われたんです。役に自分を寄せていく人もいると思うんですが、僕にとっては、自分自身のほうに寄せるというのが正しいのかなと感じた。芝居に対する向き合い方や考え方がすごく変わったんです」

──それは先ほど言っていた「自分の仕事は自分の人間性を反映する」という言葉にも通じますね。お芝居以外にもいろいろな仕事をされていますが、栗原さんにとっての中心は?

「自分の立ち位置やジャンルがカテゴライズされてしまうので、中心は持たないようにしています。僕の原点はモデルなので、それは大切にしたいと思っていますが、役者はずっとやりたかったこと。それ以外にも雑誌の連載や、自伝本を出したりもしました。職業はなんですかと聞かれたら、いつも表現者と答えます。いずれは楽器を演奏したり、ダンスもやるかもしれない。いろいろなものに適用できるような人になりたいんです」

──仕事にはさまざまなプロセスがあると思うのですが、この作業がいちばん楽しいなと感じるのはいつ?

「いちばん楽しいのは本番ですね。逆にそれ以外の時間は悩んで悩んで苦しむことしかないから、本番のときに感じる『よし! これでついに終われる! もう悩まなくていい!』という解放感がなにより楽しい(笑)。渉くんの役でいうと、手の動きや姿勢、表情、キーボードを叩くスピードや音。本番以外の時間はずーっとそういうことを考えていますから」

──人間性、個性、表現という話がありましたが、最近は一つの型にはまらない「多様性」を歓迎するようなムードが社会に広まっています。そういう変化を感じることは?

「多様性や自分らしさという言葉はよく聞くようになりましたし、日本の課題でもあると思いますが、正直あまり変わらないかなと感じます。なぜかというと、やっぱり日本人は周りに合わせたり、カテゴリーに分けて物事を考えるのがすごく好きな民族だと思うから。オリンピックが近づいてきたことでやっと多様性を意識しはじめていますが、逆にそれがなかったら変わらなかったかもしれないし、終わってしまえば元に戻るんじゃないかと思ってしまう。結局、変わった人は腫れ物扱いされて、組織には馴染めないままなんじゃないかって。もちろん自分自身のルーツを意識したり日本が変わろうとしているのはいいことだし、変化が維持できたらいいですが、言い続けていないと多数派が勝つ世の中に戻ってしまうと感じます。だから普通と違うと感じる人がもっと前に出ていって、自分自身のアイデアを人に伝えることを恐れない、そういうふうになってほしいなと僕は思います」

Photos:Kisimari Styling:Takeru Sakai Hair&Makeup:Masahi Yoshida Interview&Text:Mayu Sakazaki Edit:Saki Shibata

Profile

栗原類Rui Kurihara 1994年生まれ、東京都出身。幼少期よりモデル活動を開始し、その後『メンズノンノ』など男性ファッション誌のモデルとして活動。近年は役者としても活動の場を広げている。主な出演作品に舞台『気づかいルーシー』『どうぶつ会議』『春のめざめ』、映画『ハナレイ・ベイ』『108 ~海馬五郎の復讐と冒険~』(2019年10月公開予定)などがある。現在はドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系にて毎週木曜22 時〜)に出演中。衣装: スタイリスト私物

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