パントビスコの不都合研究所 vol.8 ゲスト きゃりーぱみゅぱみゅ | Numero TOKYO
Culture / Pantovisco's Column

パントビスコの不都合研究所 vol.8 ゲスト きゃりーぱみゅぱみゅ

世の中に渦巻くありとあらゆる“不都合”な出来事や日常の些細な気づき、気になることなどをテーマに、人気クリエイターのパントビスコがゲストを迎えてゆる〜くトークを繰り広げる連載「パントビスコの不都合研究所」。今回はデビュー10周年を迎えたきゃりーぱみゅぱみゅと念願の初対面!

パントビスコ「初めまして、パントビスコです。よろしくお願いします。きゃりーさんを最初に拝見したのが、制服を着てマキシマム ザ ホルモンの曲をカラオケで歌っている動画だったと思います。当時衝撃を受けた記憶があったので、今日はお会いできて嬉しいです」

きゃりーぱみゅぱみゅ「ありがとうございます(笑)。高校生のときだと思います」

パントビスコ「早速ですが、お互いに似顔絵を描いていただけますでしょうか。僕は普段絵を描くんですけど……」

きゃりーぱみゅぱみゅ「知ってます、知ってます! Instagramを見てますので」

パントビスコ「ありがとうございます。それで、似顔絵が苦手なんですよね。きゃりーさんは人の顔を描くことってありますか?」

きゃりーぱみゅぱみゅ「私も全然ないです。難しいですよね。パントビスコさんは日本の方なんですか? お顔のホリが深いので、海外の方のような雰囲気もありますよね」

パントビスコ「はい、日本の人です。この間も、メキシコに住んでいる方から『さっき町で見かけました』という連絡をもらった数時間後、別の方から日本国内で見かけましたと言われました。顔が濃い人に似ていると言われることが多いです。そして実際、僕はそこを歩いていないことが多いです」

きゃりーぱみゅぱみゅ「(笑)。マスクを描くのが難しいですね。はい、できました!」

似顔絵完成!

パントビスコ「髪がチリチリになっていますね(笑)。ありがとうございます」

きゃりーぱみゅぱみゅ「(愛犬の)あめちゃんがいる! 可愛いです」

「この対談連載のテーマなのですが、日常で気になっていることや、こうだったらいいのにな、と不都合に感じていることはありますか」

「最近思うのが、ペットOKと書いてあるのに、全然OKじゃない!ということがあります(笑)。例えばペットOKと書いてあるのに、実は真冬でもテラスしかダメだったりとか。あと、ご飯がちょっと残念だったり……。完全にペットOKで犬にも飼い主にも優しくて、ご飯が美味しい。この3つが揃っているカフェはなかなかないですね」

「オーナーさんのスタンスがそれぞれあるんでしょうね。もう少し臨機応変に対応していただきたいですね」

「私もわんちゃんと一緒に暮らすまでは、気にしたこともなかったし、調べもしなかったんですけど、将来的にペットもOKなしっかりしたカフェを作ってみたいなとは思いますね」

「逆になるといいかもですね。ペットもOKというより、人間もOKという」

「ペットが主軸で、人間も可(笑)」

「ペットが溺愛しているオーナーが作ったヒューマンカフェです」

相手の気持ちを害さずに“褒める”方法

「あとは、グラビアをやっている子に寄せられるコメントを見てここ最近思うんですけど、太ったら太ったで『太りました?』とか『芸能人なのに見た目をコントロールしていない』とか、痩せたら痩せたらで『ガリガリじゃん』とか『芸能人だから影響力あるのに、痩せすぎ』とか……。体型についての“ポリコレ”がまだちょうどいいのなくて、難しいなって。本人のことなのに、第三者が言うって理不尽だなと思います」

「おっしゃる通りだと思います。悪く言うこともそうですけど、褒めることに関しても僕はそう思っています。例えば『細くて可愛いですね』と言うこともちょっと失礼なんじゃないかなって。もしその人が細いことに悩んでいたら、傷つくと思うんですね。コミュニケーションの一つとして外見を褒めるということはあると思うんですが、もっと慎重になった方がいいですよね」

「わかります。本当にそうですね」

「フランスの知り合いが言っていたのは、その人の身に付けているアクセサリーや服を褒めるんだそうです。今付けているの可愛いね、とか」

「素敵ですね。確かに嫌な気持ちしないですし。最近セクハラについて考えたんです。例えば、おじさん、OL、第三者の3人がいて、おじさんがOLに『髪切った?』と聞いて、それでOLが不快に思ったら1セクハラで、第三者がそれを見て不快に思ったら2セクハラですよね。今ってセクハラか否かのラインが誰かが不快に思ったらという感じなので、何かを褒めることすら厳しいですよね」

「そうなってくると、もう触れられませんよね」

「でも匿名になるといまだにネットに書き込んだり、心ないことを言う人もいるし……」

「僕も、それに対して警鐘を鳴らすような作品を書くことがあるんですが、やはり芸能人の方からのリアクションのほうが大きいですね。よくリプをいただきます。辛い思いをしているんだなって。悪いことをしたら罰して欲しいなと思いますね」

「特に今なら、コロナ禍で抱え込んだストレスをそうやって発散させているというのもあるのかもしれませんね」

「そうですね。『バカ』とか『死ね』とか言ったら侮辱なので罰することができますが、罪にならない遠回しの言い方をしてくる人が一番難しいですよね。例えばさっきの『太ったね』『ガリガリ』も侮辱ではないですもんね」

「ギリギリの範囲の悪口ってありますよね。例えば、TikTokのコメントで『きゃりー久しぶりに見たわ』とか。それって『バカ』とか『死ね』じゃないからコメントは削除されないし、でも本人が見たら結構グサっとくるし……」

「自分の無知、感度が低いということを露呈しているだけですからね、そういうのよくないです」

あなたはぶどうをどう食べる!?

「他に明るい話題はあったかな……(笑)」

「僕、一つあります。ぶどうを食べるとき、どうやって食べますか?」

「私は一回全部を口に入れて、口の中で皮と分離して、皮だけ外に出します」

「種が入っているぶどうの場合はどうしていますか?」

「種が入っていたら、それも分離して出します」

「すごい。器用ですね。僕は種が入っていることが結構ストレスなんですね。シャインマスカットでもたまにないですか。ちいさい種が入っていて、ガリッとなる」

「あります、あります」

「それが嫌なので、巨峰にしても皮を剥いて食べています。ただ、剥くと皮の内側が一番おいしいと言われているじゃないですか。それを捨ててしまうことになるのが、悩みです」

「その後、皮だけ食べるっていうのはないですか?」

「それはないんですよ。なんとかなりませんかね」

「まず半分よりちょっと上までかじって、種があるであろう真ん中のところを見て、あったら掘って食べるとか(笑)」

「なるほど。それだったらノーダメージですね」

あの“ベタベタ”が気になる! きゃりーの知られざる日常

「ですよね。でも、そのストレスはありますよね(笑)。それで言うと、新しい商品を買ってそれにテープが貼ってあったんですが、剥がしたら死ぬほどベタベタしてたりとか、全然剥がれないテープもあったりして。海外製なのに日本語のカタカナで書かれていて、それを外したいんですけど外せないのがストレスですね」

「あー、ありますね。ベタベタの部分だけ残ったりしますよね」

「なんでベタベタの使っているんだろうって。ベタベタってだれか言ってやって〜って(笑)」

「それは改善して欲しいですね。きっと優先順位が低いんでしょうね」

「あと、ネットで服を買おうと思っても、身長170cmのモデルさんがSサイズ着用のパンツとか、それってどういうこと!?みたいな(笑)。身長があるけどウエストが細いことできっとそのサイズなんですよね。私が見たいのは160cm・Mサイズで、大抵の日本の女性の標準というか普通の人のSサイズ・Mサイズが見たいんですけど……。でも、モデルさんが着ていることで欲しいって思う人もいるかもしれないし。想像をしないといけないので、逆に混乱しちゃいますね」

「着る人の骨格もありますしね。難しいですね」

「『じゃあSサイズか〜』と思うんですけど。でも、その170cmのモデルさんは腰の位置も高いから、自分が履いてみたらもっと丈が長かったりとか。たまにショップスタッフさんが載っているとすごくわかりやすい。小柄な人がこういう着丈ね〜って」

「きゃりーさんは、感じた違和感をきちんと言語化されていますよね。思っていても言わない人が多いので」

「そうかもしれないです。最近、香りのブランドを立ち上げたんですが、金木犀の香りをプロデュースしたんです。金木犀っていい香りなのにポピュラーな香水がないよね、あったらいいのになっていうのを、常日頃から考えるのがすごく好きで」

「きちんと形にしているのが素晴らしいですね」

「結構意見をはっきり言うので、炎上することも多いですよ(笑)。世の中常に賛否両論なので。でも、10年前に何か同じことがあったとしても、『へ〜世界ってこうなんだ』って思っていたけど、そこから10年経って28歳になると、『いや、やっぱりあの人のあれおかしい!』と後からお風呂に入っているときに思ったりします(笑)」

「臆せずにそういうことを言うことが、これからもっと大事になってくると思います。炎上させようとする側が悪いので。立場をはっきりさせたほうがいいと思うんですよね」

「なるほど〜。これから自分の言葉でうまく話せたらいいなと思いますね」

デビュー10周年を迎えて、変わったこと・変わらないこと

「きゃりーさんは今年歌手デビュー10周年ですが、何かご自身で感じる変化はありますか?」

「やっぱり思考が大人になりました。今はしっかり予算のことを考えたりとか。10代の頃はスタッフさんともそういう細かい話をしていなくて、私が言うざっくりしたことをスタッフさんが現実に落とし込んでくれるって感じだったんですけど、今は一緒に考えられますね」

「素晴らしい。大事ですね。心境面での変化はありますか? 向き合い方だったり」

「それは何にも変えてないかもしれないです。ここ最近アルバムを収録していて思うんですけど、歌声があんまり変わっていなくて。声が高いので幼く聞こえるというのもあるのかもしれないですけど、それが自分的にショックでした(笑)。中田(ヤスタカ)さんが、『かっこいいサウンドにきゃりーの甘い声をのせるのがいいから』とおっしゃっていて。だったらまぁいいかって」

「きゃりーさんの歌声って明るいだけじゃなくて、憂いを感じるんですよね。悲しい感じが30%くらい入っているような」

「そうなんですかね。あと、好きなものはずっと変わらないんですけど、初期の頃ってヴィヴィッドピンクがすごく好きで、ピンクといったらこれでしょ!って感じだったんですけど、今はくすんだピンクや優しいピンクを使うようになりました。可能性も広がるし、今までないと思ったものが『これもありかも』と思うようになりました」

「大人になってくると考えるのが楽しいですよね。先にアルバムを拝聴させていただいたのですが、『夏色フラワー』という曲だけメロディアスというか、他の曲と雰囲気が違って印象的でした」

「最初はそんなにエモーショナルな感じはなかったんですけど、仕上がりが90年代のトレンディドラマみたいになりました。今回のアルバムは今までにない新しいチャレンジをたくさんしていて、例えば『どどんぱ』という曲ではボイスパーカッションを自分でやっていたり、遊び心が詰まったアルバムになっています」

「それを聴き込んでライブに行けるといいですよね」

「新しいアルバムでライブをするのは3年ぶりなので、すごく楽しみです!」

「最後に一つ、いいですか? 原宿で展覧会をさせていただけることになったのですが、何かアドバイスいただけないでしょうか。10年前と今の原宿で変わったなと思うところはありますか?」

「そうですね。10年前ってロリータもスナップ隊もいっぱいいたし、個性的な人が多かったけど、今はそこまで奇抜な人もいないという印象があります。今は空き店舗も増えてきて寂しい感じになっているので、ちょっとでも展示で街全体を活気付けていただけたらと思います」

「ありがとうございます。いいヒントをいただけました。その空き店舗にわんちゃんの入れるカフェを作っていただきたいですね」

「はい、いつか実現できたらうれしいです(笑)」

初回限定版
初回限定版

通常盤
通常盤

きゃりーぱみゅぱみゅ、3年ぶりのフルアルバムが発売!

5thフルアルバム『キャンディーレーサー』(中田ヤスタカ プロデュース)
2021年10月27日発売
初回限定盤 ¥4,180 通常盤 ¥3,300

LIVE TOUR【きゃりーぱみゅぱみゅ 10th ANNIVERSARY JAPAN TOUR 2022】
1月16日(日)神奈川県 厚木市文化会館 大ホール
1月29日(土)群馬県 ベイシア文化ホール
2月5日(土)鳥取県 米子コンベンションセンターBIG SHIP
2月6日(日)岡山県 岡山市民会館
2月11日(金・祝)茨城県 日立市民会館
2月23日(水・祝)京都府 宇治市文化センター 大ホール
3月5日(土)福岡県 福岡市民会館 大ホール
3月6日(日)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
3月11日(金)広島県 広島上野学園ホール
3月12日(土)島根県 安来市総合文化ホール アルテピア 大ホール
3月19日(土)北海道 函館市民会館
3月21日(月・祝)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
3月26日(土)石川県 金沢市文化ホール
3月27日(日)新潟県 新潟市民芸術文化会館・劇場
4月3日(日)千葉県 千葉県文化会館 大ホール
5月7日(土)東京都 LINE CUBE SHIBUYA
5月13日(金)山形県 シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
5月15日(日)秋田県 湯沢市文化会館
5月21日(土)栃木県 栃木県総合文化センター メインホール
5月28日(土)愛媛県 西条市総合文化会館 大ホール
5月29日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
6月4日(土)大阪府 フェニーチェ堺 大ホール
6月5日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
6月19日(日)愛知県 愛知芸術劇場 大ホール
6月25日(土)宮城県 東京エレクトロンホール(宮城県民会館)
6月26日(日)青森県 八戸市公会堂
7月16日(土)宮崎県 都城市総合文化ホール(大ホール)
7月18日(月・祝)長崎県 アルカスSASEBO 大ホール

パントビスコの個展開催が決定!

この秋、パントビスコが東急ブラザ表参道原宿をジャック! 初公開となる人気キャラクターたちにポップアート風のカラーを施したアートパネルや「返り討ちカルタ」をテーマにした立体展示、「#勝手にアンケート」シリーズをモチーフにした作品etc.…本企画のために考案された新作や描き下ろしイラストを含む約10作品が集結!

「少し〇〇な芸術祭」
期間/2021年10月15日(金)~11月18日(木)
場所/東急プラザ表参道原宿
内容/パントビスコの作品を用いた展示、フォトスポット、ノベルティプレゼント
エントランス:パントビスコの特別階段装飾
3階:パントビスコ作品展示 特設会場 ※入場料無料
4階:大型フォトスポットの設置
6階「おもはらの森」:キャラクター展示 ◎全店舗:1,000円(税込)以上のお買い上げでステッカープレゼント ※なくなり次第終了

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Photos: Takao Iwasawa Hair&Makeup(Kyary Pamyu Pamyu): Nozomi Kawamura Edit & Text: Yukiko Shinto

Profile

きゃりーぱみゅぱみゅKyary Pamyu Pamyu 1993年1月29日生まれ、東京都出身。2011年、 中田ヤスタカプロデュースによるミニアルバム「もしもし原宿」でメジャーデビュー。2012年5月にリリースした初のフルアルバム「ぱみゅぱみゅレボリューション」は、 オリコンデイリーチャート初登場1位、 さらにiTunesでも日本総合チャートや世界各国のエレクトロチャートで1位を獲得。 その後、 日本武道館単独公演、 NHK紅白歌合戦初出場と快進撃を続け、以降は作品を出すごとにヒットを連発。 2013年に初めてのワールドツアーを開催し、 これまでに4度のワールドツアーを成功させる。デビュー10周年を迎えた2021年、 世界中を巻き込んだ新たな企みの発信地として新レーベル「KRK LAB」を発足した。きゃりーぱみゅぱみゅ10周年特設サイト
パントビスコPantovisco Instagramで日々作品を発表する話題のマルチクリエイター。これまでに5冊の著書を出版し、現在は「パントビスコの不都合研究所」(Numero.jp)をはじめ雑誌やWebで7本の連載を行うほか、三越伊勢丹、花王、ソニーなどとの企業コラボやTV出演など、業種や媒体を問わず活躍の場を広げている。近著に『やさ村やさしの悩みを手放す108の言葉』(主婦の友社)。Instagram: @pantovisco

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JUNE 2024 N°177

2024.4.26 発売

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