先日、オーチャードホールで鑑賞した
台湾のコンテポラリーダンスカンパニー
「クラウド・ゲート・ダンスシアター」の公演『WHITE』。
ダンス好きとといっても、
詳しいわけでも専門知識があるわけでもなく、
単に見るのが好きなだけなんですが、
そんな素人目にも素晴らしいダンスでした。
肉体が光で周りが陰、今度は周りが光で肉体が陰、
という陰影礼賛的な美しい演出もさることながら、
肉体の表現そのものがとにかくすごい。
あくまでも私の個人的な感想ですが、
ヨーロッパのダンスは肉体の音を感じる
どちらかというと地に足のついたダンスな気がします。
地を踏むダンスというか。
「クラウド・ゲート・ダンスシアター」は前触れでは、
「ピナバウシュが愛してやまない」とか
「エッジの効いた時空間」などと語られていましたが、
なるほど見て納得。
あくまでも私の個人的感想ですが、あのダンスというか、舞いは、
決してヨーロッパの文化圏からでは生まれてこれないように感じました。
そりゃピナ・バウシュが愛してやまないわけだよ。
このカンパニー、中国語で「雲門舞集」と書くのですが、
「雲」とはよくいったものです。
西洋のダンスが大地を駆ける馬の印象だとしたら、
確かに、こちらは空を舞う鳥か、水中を泳ぐ魚のようでした。
空を切り、弧を描く(その描いた弧の残像がしばらく見える気がするほど)、
緩急のしなやかな動きは、まるで関節がないみたい。
無音の中の激しい動き。この無音は音楽がないという静寂ではなく、
肉体の動く音、着地の音さえも聞こえないという意味の静寂。
聞こえるのは呼吸音ぐらい。
当然、地に足は着いているのに、切れ味鋭い俊敏な動きなのに、
なぜか浮遊しているような、時間がとまっているような。
そして、男性は女性らしく、女性は男性らしく、
それが調和して中性的になっているような。
こんな不思議な感覚のダンスは今まで見たことがありませんでした。
ジンガロもよかったけど、やっぱ人間の動きってすごいと実感しました。
綴らずにはいられない、本当に素晴らしいダンスでした。
(C)LIUChen-hsiang