
東京・麻布台ヒルズ内のギャラリー、Pace 東京にて、ドイツ・ベルリンを拠点に活動するアリシア・クワデの新作を発表する展覧会「La Pêche miraculeuse」を、10月29日から12月25日まで開催する。大小さまざまな彫刻によるインスタレーションや紙の作品を通して、物と物の間に潜む、目には見えない空間や時間、知覚の不確かさを探る。
本展では、桃をモチーフとした作品群が登場する。『PersicumMultiplex』は複数の溝が刻まれた桃、『PersicumAdustum』は火の消えたタバコが突き刺さった桃を表現。美しさと嫌悪感の境界を揺さぶるこれらの作品は、日常的な果物を見慣れない存在へと変容させる。

トンネルをモチーフとした『Tunnel-Tell (Ceci Sera)』と『Tunnel-Tell (Ceci Sera Persicum)』では、鏡面仕上げのステンレス製の管が花崗岩の塊を貫通する。管の内部に広がる空洞は、反射によって凝縮され、歪められた空間として立ち現れる。『Tunnel-Tell (Ceci Sera Persicum)』では、桃がその渦に引き込まれるように配置されている。

また、石と鏡を組み合わせた彫刻シリーズ『Ad Idem Aliter』では、同じ石をガラスや大理石など異なる素材で表現し、鏡を介してつなぐ。作品は要素を加えながら段階的に展開し、10月31日から11月1日に開催される「六本木アートナイト」の期間中、森美術館前で完成形に至る。その後、Pace 東京の屋外テラスに設置される予定だ。
本展のタイトル「La Pêche miraculeuse」は、コンラート・ヴィッツが1444年に描いた絵画『The Miraculous Draught of Fishes(奇跡の漁り)』に由来する。フランス語の「pêche」には「漁」と「桃」の二つの意味があり、タイトルには美術史と日常の世界を結びつける言葉遊びも込められている。
クワデは、石や鏡、時計など身近な素材を用い、空間や時間、科学や哲学をめぐる既存の概念を問い直してきた。本展でも、物体がイメージへと変わり、時間が空間的な形をとるなど、確かなものと不確かなものの境界が揺らいでいく。
会期中の11月4日から8日には、東京各地のギャラリーや文化施設を結ぶ都市型アートイベント「Art Week Tokyo」が開催され、麻布台ヒルズを含む参加会場を結ぶバスが運行される。街歩きとあわせて足を運び、見慣れたものが違って見える瞬間を体験してみては。
アリシア・クワデ「La Pêche miraculeuse」
会期/10月29日(木)〜12月25日(金)
会場/Pace ギャラリー
住所/東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 1-2F
時間/11:00〜20:00 (日曜は18:00〜20:00、それ以外は19:00〜20:00でアポイントメント制)
休館/月曜
URL/https://www.pacegallery.com/exhibitions/alicja-kwade-la-peche-miraculeuse/
Text:Hinako Yano
