
横浜美術館で展覧会「マリー・アントワネット・スタイル」が開催されている。こちらはロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が企画し、2026年3 月まで同館で開催されていた展覧会。英国の研究者による最新の調査に基づき「マリー・アントワネット」という存在をあらためて捉え直す。国際巡回の最初の開催地となる横浜では、日本独自の出品作も加わる。
“マリー・アントワネット”から思い浮かべるイメージはどのようなものだろう?
ゴージャスなドレス、煌びやかな宝石、ヴェルサイユ宮殿、リボンのモチーフ、花柄、パステルカラー。「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」のフレーズ? もしくはソフィア・コッポラの映画?
本展のタイトルは「マリー・アントワネット・スタイル」。
ドレス、ジュエリー、家具、器、絵画や版画など、日本独自の出品作を含む約200点を通して、私たちが「マリー・アントワネット」に重ねてきたさまざまなイメージをひもといていく。さらには彼女が生きた時代、18世紀後半の歴史的なファッションから、2025年のオートクチュールまで、「マリー・アントワネット」という存在が影響を及ぼしてきた流れをたどる。

パニエで左右に広がるロココ調ドレス、小花の繊細な刺繍、田園風景などを描いたトワル・ド・ジュイ、そして煌びやかなジュエリーで表現されるボウモチーフ、日本の絣を思わせる絹織物。18世紀フランス宮廷の手仕事の美しさ、技術力に見入ってしまう。
そして同時に、日本における”お姫様”のイメージの源のひとつがここにあることにも気がつく。たとえば、ぬりえやおもちゃの指輪、ドレス、リボン、そして『ベルサイユのばら』などを通して、幼い頃から親しんできた「憧れ」のイメージが、ここではリアルなものとして目の前に現れる。

そしてさらに、宮廷の伝統やゴージャスな装飾とは別軸で展開されていくマリー・アントワネットのスタイルも見えてくる。身体を締めつける宮廷服から、柔らかなモスリンのシュミーズ・ア・ラ・レーヌへ。当初は、まるで下着のようだと批判をうけたが、やがて軽やかで自然なシルエットが流行していく。また当時、フランス王室では、乳母に育児を任せることが一般的だったが、彼女は母乳育児も実践したという。
ソフィア・コッポラ監督による映画『マリー・アントワネット』も見返したくなる。映画内で着用されたドレスはもちろん、マノロ・ブラニクによるシューズも展示。

展示をたどり、ファッションの変遷を感じるうちに、やがてフランス革命の空気が入り込んでくる。風刺画など、彼女を取り巻く時代や世相の変化が感じられる。

世界初公開となるパールのネックレスは、マリー・アントワネット旧蔵の天然真珠を連ねたもの。フランス脱出に備え、これらのパールをふくめた宝飾品を密かに国外へ運ばせた。革命後、娘のマリー・テレーズ・シャルロットに受け継がれ、その後、ブルボン=パルマ家へと引き継がれた。それが今日まで残されていたことが明らかになったのは2018年のこと。
![トワル・ド・ジュイのアンサンブル(アンドレア・グロッシ「デウスランド[神の国]へようこそ」2021コレクション)アンドレア・グロッシ 2019年 グロッシ・デザイン Photo: Courtesy Andrea Grossi](https://numero.jp/wp-content/uploads/2026/09/M9.jpg)
そして最終章では、現代のランウェイで表現される、マリー・アントワネットのスピリットを体感できる。モスキーノの「ケーキドレス」、クリスチャン・ラクロワ、ジョン・ガリアーノ時代のディオール、ヴィヴィアン・ウエストウッド、アンドレア・グロッシのドレス。

あらためて、時代をこえて人々を惹きつけるマリー・アントワネットの「スタイル」を感じてほしい。美術館を出たあとには、街行く人々のファッション、ショップのデザイン、日常のあちらこちらにマリー・アントワネットの「スタイル」を発見できるはず。

マリー・アントワネット・スタイル
会期/2026年8月1日(土)~11月23日(月・祝)
会場/横浜美術館
場所/神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館時間/10:00~18:00
※11月21日・22日は20時まで
※入館は閉館の30分前まで
休館日/木曜日
※9月24日、11月19日は開館
URL/www.marie2026.jp
Text:Hiromi Mikuni
