
堺雅人と言えば、いまや押しも押されもせぬ人気俳優だ。映像作品で見せる個性的で正確なセリフ回しや、求められたキャラクターを強く打ち出す演技で多くのファンを惹きつけている。
だが、そのキャリアの原点は舞台にある。彼は早稲田大学を本拠地とする劇団・東京オレンジの出身。舞台で活躍していた時代を知る人間は、今回、17年振りの堺雅人主演舞台に、思わず膝を打っただろう。
堺が今回主演する作品は『スリーゴースト』。こちらは、2020年の『FORTUNE』ワールドプレミアを機に、PARCO劇場がサイモン・スティーヴンスに新作を依頼。コロナ禍をまたいでワークショップを重ね、6年をかけて生まれた作品になる。
サイモン・スティーヴンスはトニー賞やローレンス・オリヴィエ賞等、名だたる演劇賞を多数受賞し、世界を股にかけて活躍する現代英国演劇を代表する劇作家だ。日本では、昨年末に新国立劇場で上演された『スリー・キングダムス』、世田谷パブリックシアターで上演された『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』のダブルビル上演などが記憶に新しい。社会の歪みや喪失感を抱えた人間の弱さなどを、どこか不穏な世界観で描いていく作品が多く、まさに現代を映す鏡のような作品が並ぶ。
今回の物語は、愛と結婚が持つ脆さと可能性についての話であると同時に、デジタル革命の時代を人間がどう生きるかを見つめる社会的な作品だと、サイモン・スティーヴンスは語る。
主人公は、人が見る夢をデジタル化して再現する、夢のようなガジェット「リープマインド」の宣伝契約を勝ち取るため、家庭も顧みず熾烈な競争に身を削るビジネスマンのジョーだ。ビジネスマンのジョーを堺雅人が演じるのだが、果たしてこれまで見たビジネスマンの堺とは、全く違うものになるだろうか。ジョーの妻・ハナを倉科カナ、ハナの姉・ミカを伊勢佳世、ハナとミカの父には段田安則、ジョーの母には高畑淳子など、充実のキャストが顔をそろえている。
今回の『スリーゴースト』に、サイモン・スティーヴンスは、「どんな人間にも三人のゴーストがいる」という意味を込めたという。一人目はその人物に警告を与える者、二人目はその人物を慰める者、三人目はその人物に終わりを告げる者。ジョーにとってのゴーストはいったい何者になるのか。また、サイモン・スティーヴンスは、この作品を執筆するにあたって、多くの友人や仕事仲間に案内してもらい、東京の街をたくさん歩いたという。そうして、身近になった東京という街を舞台に、小津安二郎や黒澤明といった映画監督への敬愛、松尾芭蕉や三島由紀夫への敬愛を息づかせた作品だと語る。もしかすると、こうした表現者の先達が、目の前に現れる、そんな瞬間があったのかもしれない。
演出にはスティーヴンスの盟友でもある、ショーン・ホームズがあたる。22年には、アーサー・ミラーの『セールスマンの死』を現代に引き付けた斬新な演出で上演、主演の段田安則を「第30回読売演劇大賞・最優秀男優賞」に導いている。その後も、PARCOではチェーホフの『桜の園』を演出、シェイクスピアの『リア王』では再び段田とのタッグを組み、いずれの作品も好評を博した。
劇場を出て、外気に触れた時、その空気をどのように感じるのだろうか。温かく感じ、早く自分の家に帰りたいと思うのか。それとも、舞台の熱気を冷ます風と共に、少し重い足取りで帰宅の路につくのか。
舞台 PARCO PRODUCE 2026『スリーゴースト』
作/サイモン・スティーヴンス
翻訳/広田敦郎
演出/ショーン・ホームズ
美術・衣裳/ジョン・ボウサー
出演/堺雅人 倉科カナ 伊勢佳世 迫田孝也 sara 小日向星一 高畑淳子 段田安則ほか
企画・製作/株式会社パルコ
<東京公演>
日程/2026年10月6日(火)~27日(火) ※10月6日はプレビュー公演
会場/PARCO劇場
料金/全席指定12,000円 プレビュー公演11,000円 U-30チケット6,000円
<岡山公演>
日程/2026年11月6日(金)~8日(日)
会場/岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
<大阪公演>
日程/2026年11月12日(木)~23日(月・祝)
会場/SkyシアターMBS
<愛知公演>
日程/2026年11月27日(金)~29日(日)
会場/穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
<宮崎公演>
日程/2026年12月3日(木)~6日(日)
会場/メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)演劇ホール
<福岡公演>
日程/2026年12月10日(木)~13日(日)
会場/J:COM北九州芸術劇場 大ホール
