「どうやってこの世界に生まれてきたの?」@弘前れんが倉庫美術館 | Numero TOKYO
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「どうやってこの世界に生まれてきたの?」@弘前れんが倉庫美術館

ジャナイナ・チェッペ『シクレトルミス・プルラリス(風船ガムの木)』2005年 タグチアートコレクション蔵 ©Janaina Tschäpe Courtesy of nca | nichido contemporary art
ジャナイナ・チェッペ『シクレトルミス・プルラリス(風船ガムの木)』2005年 タグチアートコレクション蔵 ©Janaina Tschäpe Courtesy of nca | nichido contemporary art

青森・弘前れんが倉庫美術館にて「どうやってこの世界に生まれてきたの?」展が開催されている。新作を含むタグチアートコレクションの所蔵作品を中心に、世界各地で活動する48組のアーティストの作品が展示。2025年3月9日(日)まで。

ーーーどうやってこの世界に生まれてきたの?
きっと誰もが一度は、問いかけられたり不思議に思ったことがあるだろう。私とは? 世界とは? 生まれるとは? 生きるとは? そこにはいくつもの「?」が含まれている。

本展は、弘前れんが倉庫美術館とタグチアートコレクションとの協働による企画展。絵画や写真、映像のほか、弘前の町で展開するプロジェクトなど、多彩な作品が揃う。

⽚⼭真理『帰途 #001』2016年、『おわかれ会 #10』2021年、『傍観者 #014』2016年 タグチアートコレクション蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Mari Katayama
⽚⼭真理『帰途 #001』2016年、『おわかれ会 #10』2021年、『傍観者 #014』2016年 タグチアートコレクション蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Mari Katayama

手縫いのオブジェや装飾を施した義足とセルフ・ポートレイトを制作する片山真理、映像を通じて日常と隣り合わせの非日常、異世界をつなぐミカ・ロッテンバーグ。

ミカ・ロッテンバーグ『宇宙製造機(ガーランドの変種)』2019年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Mika Rottenberg, Courtesy of the artist and Hauser & Wirth
ミカ・ロッテンバーグ『宇宙製造機(ガーランドの変種)』2019年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Mika Rottenberg, Courtesy of the artist and Hauser & Wirth

弘前出身の奈良美智は、かつて高校生の頃に通い、仲間と作り上げたというロック喫茶を再現。そしてその周囲には自身や杉戸洋との共作による作品も展示。

ロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」再現展⽰ ⼀般財団法⼈奈良美智財団蔵 本展展示風景  Photo: Keizo Kookie
ロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」再現展⽰ ⼀般財団法⼈奈良美智財団蔵 本展展示風景  Photo: Keizo Kookie

尹秀珍『ポータブル・シティ:弘前』2020年 弘前れんが倉庫美術館蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Yin Xiuzhen
尹秀珍『ポータブル・シティ:弘前』2020年 弘前れんが倉庫美術館蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku © Yin Xiuzhen

尹秀珍は、そこに暮らす人々の古着を用いて作る街のジオラマ型の作品「ポータブル・シティ」弘前版を。青森や東北にゆかりのある工藤麻紀子や鴻池朋子の作品も。

マウリツィオ・カテラン『無題(エレベーター)』2001 年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku  Courtesy of Maurizio Cattelan's Archive and Galerie Emmanuel Perrotin
マウリツィオ・カテラン『無題(エレベーター)』2001 年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金蔵 本展展示風景 Photo: Keizo Kioku Courtesy of Maurizio Cattelan

足元に現れる、ユーモアあふれるマウリツィオ・カテランの極小エレベーターにも、当たり前の世界が揺らぐ。

塩⽥千春『どうやってこの世にやってきたの?』2012年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵  本展展示風景  Photo: Keizo Kioku © JASPAR, Tokyo, 2024 and Chiharu Shiota
塩⽥千春『どうやってこの世にやってきたの?』2012年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵  本展展示風景  Photo: Keizo Kioku © JASPAR, Tokyo, 2024 and Chiharu Shiota

ピピロッティ・リスト、トゥアン・アンドリュー・グエン、そして本展タイトルにもなった塩田千春(※1)の映像作品も、ぜひ時間をかけて見てほしい。

また、弘前れんが倉庫美術館は、2020年の開館以来、ラーニングプログラムにも力を入れてきた。タグチアートコレクションもまた、各地の小中学校で作品を出張展示する「デリバリー展覧会」など、教育普及活動に取り組んでいる。(※2)

(参考記事)
※1 Numero.jp/塩田千春、地元・大阪で16年ぶりに大規模個展開催中
※2 Numero.jp/アートカード「PLAY!たぐコレ」刊行を記念したグループ展

⾼⼭明 / Port B『マクドナルドラジオ⼤学』フランクフルト 2017年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵 Courtesy of MISA SHIN GALLERY Photo: Masahiro Hasunuma
⾼⼭明 / Port B『マクドナルドラジオ⼤学』フランクフルト 2017年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基⾦蔵 Courtesy of MISA SHIN GALLERY Photo: Masahiro Hasunuma

期間中、弘前市内のマクドナルド4店舗では、演劇ユニットPort Bを主宰する高山明のアートプロジェクト『マクドナルドラジオ大学』が展開される。マクドナルドを舞台に、故郷を離れて暮らす難民や移民などさまざまな背景をもつ人々が「教授」として講義を行い、訪れた人は「学生」として、スマートフォンを使って講義を聴くことができる。

そのほか、展覧会の主題について哲学者の永井玲衣とじっくりと考え合うプログラム、作品鑑賞後に感じたことからワンシーンを創作したり、人形劇を創作するワークショップも開催。また、高山明は弘前大学で公開講義、市内小学校でも授業を行う。さらには東京でもサテライト企画として、11月8日にトークイベントと哲学対話を予定。

本展のステイトメントには「多彩な作品を通じて、生きることと幸せについて考える展覧会」とある。ぜひ弘前に訪れて、旅や人々との出会いや作品から広がる世界も、まるごと楽しんでほしい。

©Naoya Hatakeyama
©Naoya Hatakeyama

タグチアートコレクション×弘前れんが倉庫美術館
どうやってこの世界に生まれてきたの?

会期/2024年9月27日(金)~2025年3月9日(日)

会場/弘前れんが倉庫美術館(⻘森県弘前市吉野町 2-1 9:00〜17:00)
弘前市内マクドナルド4店舗(高山明作品のみ/各店舗の営業時間内に体験できます)
TEL/0172-32-8950
URL/www.hirosaki-moca.jp
※最新情報、詳細はサイトをご確認ください。

Text:Hiromi Mikuni

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