パレスチナ出身作家の作品を紹介「If I must die, you must live」展
東京・六本木にあるワコウ・ワークス・オブ・アートにて、オランダ出身の作家、ヘンク・フィシュのキュレーションによる、パレスチナ出身の詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会「If I must die, you must live」が開催。現在も続くパレスチナでのジェノサイドについて考えるきっかけとなるグループ展だ。
本展のタイトル「If I must die, you must live(私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない)」は、パレスチナの詩人リフアト・アルアライール (1979年生まれ) が最後にSNSに投稿した詩の冒頭部分だ。この詩を投稿した翌月、アルアライールはイスラエル軍の空爆により絶命。アルアライールが最後に残したこの詩が、本展全体を通底するメッセージとなっているという。
会場では、キュレーションを手がけるヘンク・フィシュの新作を含む彫刻作品やドローイング、ムスアブ・アブートーハ (1992 年生まれ) の詩、画家スライマーン・ マンスール (1947年生まれ)の版画、ガザのためにアーティストたちが制作したポスター(Posters for Gaza)を中心に公開。また、長年フィシュと親交があり、今回の企画の意図に賛同したアーティスト、奈良美智の新作も展示されるという。
参加アーティストの中より、パレスチナ出身の2名を紹介する。ガザ地区の難民キャンプで生まれ育ったムスアブ・アブートーハは、学生の頃より詩の世界に親しみ、2022年に出版した詩集『Things You May Find Hidden in My Ear: Poems from Gaza』が、パレスチナ・ブック・アワードやアメリカン・ブック・アワードを受賞。2017年にはガザで初めての英語図書館であるエドワード・サイード公共図書館を創設し、2017年から2019年までガザの UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)学校で英語教師として教鞭をとった人物だ。
スライマーン・マンスールは、1973年にパレスチナ芸術家連盟を、1994 年にはエルサレムにアル・ワシティ・アート・センターを共同設立しディレクターを務めるなど、長年パレスチナの美術界を牽引してきた画家のひとりだ。第一次インティファーダ (蜂起)の際には、他の作家たちとともに「ニュー・ビジョン」アート運動を始め、イスラエルからの物資をボイコットし、身の回りにある泥や木材、染料などの素材を作品に使用したことでも知られている。伝統的な衣装を身に纏った人々の姿や、パレスチナの土地を題材にした作品は、人々の長年にわたる苦難と抵抗の記憶を伝えてきた。本展では、マンスールの版画作品が紹介される。
フィシュの出品作のタイトル「”Que sais-je? “(私は何を知っているのか?)」の通り、見るもに問いを投げかける本展。現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らすきっかけとなるに違いない。会期は6月29日(土)まで。
※掲載情報は5月19日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
「If I must die, you must live」
会期/2024年5月17日(金)〜6月29日(土)
会場/ワコウ・ワークス・オブ・アート
住所/東京都港区六本木 6-6-9 ピラミデビル 3F
開館時間/12:00〜18:00
休廊/日・月・祝
TEL/03-6447-1820
料金/入場無料
URL/www.wako-art.jp/exhibitions/ifimustdieyoumustlive/
Text:Akane Naniwa