永遠なんてあるのでしょうか。「青山悟 刺繍少年フォーエバー」展、開催中 | Numero TOKYO
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永遠なんてあるのでしょうか。「青山悟 刺繍少年フォーエバー」展、開催中

青山悟『東京の朝』2005年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
青山悟『東京の朝』2005年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

東京・目黒区美術館にて「青山悟 刺繍少年フォーエバー」展が開催されている。2024年4月20日(土)から6月9日(日)まで。

青山悟は、古い工業用ミシンとともに、「刺繍」という手法を用いて作品をつくり続ける現代美術作家。本展では、初期作品からコロナ禍を経ての近作、最新作までが展示される。

2000年代初期の作品では、明け方の東京、青山が通っていた地元・目黒の学校のグラウンド、駐車場など、切り取られた瞬間が精緻な刺繍で描かれている。

青山悟『News from Nowhere (Labour day)』2019年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
青山悟『News from Nowhere (Labour day)』2019年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

かつて、女性たちの手しごとだった刺繍と、それを機械化し大量生産につなげたミシン。それらを用いる青山の作品からは、ジェンダー、資本主義、労働についての問題なども示唆される。

青山悟『Map of The World (Dedicated to unknown Embroiderers)』2014年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery
青山悟『Map of The World (Dedicated to unknown Embroiderers)』2014年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

蓄光糸で刺繍された世界地図『Map of The World (Dedicated to unknown Embroiderers)』では、アリギエロ・ボエッティの作品『MAPPA』の制作に携わった、アフガニスタンの名もなき刺繍職人への関心が発端となっているという。

暮らしの中での手しごとにも、美を見出す瞬間は多々ある。長い時間をかけて仕上げた刺繍、ミシンで大量に生産される工業製品、美術作品との違いとは?そしてタバコの吸い殻の刺繍に、心が動かされるのはなぜだろう。

青山悟『N氏の吸い殻』2023年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru Courtesy of Mizuma Art Gallery
青山悟『N氏の吸い殻』2023年 /撮影:宮島径 ©AOYAMA Satoru Courtesy of Mizuma Art Gallery

青山は「永遠なんてあるのでしょうか」と言葉を寄せている。それは時代とともに、社会から消えていこうとしている「消えゆくもの」への問いかけだという。

また本展では、目黒区美術館のアウトリーチ・プログラムにより、区内小学校の子どもたちと制作した作品も展示されている。社会と芸術がどのように関わることができるのか、青山悟は問いかけながら、つながりながら、活動を続けている。

期間中には、自作について語り、ミシンによる実演を行う「アーティストトーク」や、芸術社会学・文化政策学研究者の小泉元宏を招いてのトークイベント、担当学芸員との対談「大人のための美術カフェ」なども開催される。

ぜひこの機会に、訪れてほしい。

青山悟 刺繍少年フォーエバー
期間/2024年4月20日(土)~6月9日(日)
場所/目黒区美術館
時間/10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日/月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館、4月30日、5月7日は休館)
観覧料/一般 900円、大高生・65歳以上 700円、中学生以下無料
URL/mmat.jp

Text:Hiromi Mikuni

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