伝説の写真家「中平卓馬 火―氾濫」大回顧展@東京国立近代美術館 | Numero TOKYO
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伝説の写真家「中平卓馬 火―氾濫」大回顧展@東京国立近代美術館

中平卓馬『無題 #437』2005年、東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『無題 #437』2005年、東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

日本の戦後写真を代表する写真家のひとり、中平卓馬の大回顧展が東京国立近代美術館で開催されている。1960年代後半より、森山大道、篠山紀信ら同時代の写真家と刺激しあい、その後ホンマタカシといった後続世代の写真家にも大きな影響を与えた伝説的な存在。

本展では、初期から晩年まで649点の作品と資料、1974年に同美術館で開催された「15人の写真家」展に出品されたカラー写真の『氾濫』の再展示や、近年その存在が確認された『街路あるいはテロルの痕跡』のヴィンテージ・プリントも初展示。2024年4月7日(日)まで。

中平卓馬『夜』 1969年頃 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『夜』 1969年頃 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

雑誌編集者だった中平卓馬は、1964年に初めて写真を発表。そして写真家、批評家として活動を始める。1968年に創刊された写真同人誌『プロヴォーク』では、当時の写真美学の常識を揺るがす「アレ・ブレ・ボケ」と呼ばれた(ピントがブレたり、ボケたり、粒子が粗い)強烈な写真が注目を集めた。2号からは同世代の友人でもあった森山大道も参加。1970年には初の写真集『来たるべき言葉のために』を刊行している。

参考記事: ヒステリックグラマー北村信彦が「挑発関係=中平卓馬×森山大道」@葉山に寄せて


中平卓馬ポートレイト 1968年頃 撮影:森山大道 東京国立近代美術館 ©Daido Moriyama Photo Foundation
中平卓馬ポートレイト 1968年頃 撮影:森山大道 東京国立近代美術館 ©Daido Moriyama Photo Foundation

その後、1973年の評論集『なぜ、植物図鑑か』では、それまでの作品や自らの姿勢について自己批判し、これまでのモノクロの「アレ・ブレ・ボケ」写真にあったようなポエジーを捨て、「植物図鑑」のような世界をあるがままにうつす写真を模索すると宣言。多くのネガフィルムやプリントを焼却した。写真表現において、言説と作品の両方で、戦後日本の写真史に大きな影響を与えた存在だった。

そして1977年、急性アルコール中毒で昏倒。その後、療養を経て再起、記憶と言語に障害を負いながらも、2010年代始めまで活動を続け、2015年に逝去した。

中平卓馬ポートレイト 2003年 撮影:ホンマタカシ ©Takashi Homma
中平卓馬ポートレイト 2003年 撮影:ホンマタカシ ©Takashi Homma

本展は5つの章で構成され、初期から晩年まで、中平の仕事をていねいにたどっていく。

1章では『来たるべき言葉のために』までの初期の活動を。そして2から4章では、77年に昏倒と記憶喪失により中断してしまった中平の仕事が、どこへ向かおうとしていたのか、70年代の模索していた時代に焦点を当てている。

中平卓馬『「サーキュレーション―日付、場所、行為」より』 1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『「サーキュレーション―日付、場所、行為」より』 1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

3章では、1974年に東京国立近代美術館で開催された「15人の写真家」展に出品された『氾濫』を同じ会場で再展示。これは『なぜ、植物図鑑か』後に発表された、カラー写真48点組の大作だ。

中平卓馬『氾濫』 1974年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『氾濫』 1974年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

中平卓馬『「氾濫」より』 1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『「氾濫」より』 1971年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

そのほか、昏倒前に雑誌で発表された『街路あるいはテロルの痕跡』のヴィンテージ・プリント、1976年にマルセイユで発表されて以来、展示されることのなかった『デカラージュ』も。

中平卓馬『「街路あるいはテロルの痕跡」よりマルセイユ、フランス』 1976年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『「街路あるいはテロルの痕跡」よりマルセイユ、フランス』 1976年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

そして5章では、療養後から晩年まで、約30年間撮り続けた写真群へ。きわめて勤勉に撮り続けられたという写真は、モノクロからカラーに、縦の構図で、重ねられていく。中平卓馬が切り取り続けた世界の断片。その溢れる痕跡を見てほしい。

中平卓馬『無題 #444』 2010年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira
中平卓馬『無題 #444』 2010年 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

中平卓馬 火―氾濫
期間/2024年2月6日(火)~4月7日(日)
場所/東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
休館日/月曜(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日(火)
時間/10:00〜17:00(金曜・土曜は10:00〜20:00)
入館は閉館30分前まで
観覧料/一般1,500円、大学生1,000円
※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
URL/www.momat.go.jp

Text:Hiromi Mikuni

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2024.10.28 発売

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