「みる」を拡張する。目[mé]がディレクションする「さいたま国際芸術祭2023」
3年に一度開催される「さいたま国際芸術祭2023」が開幕した。ディレクションを手がけるのは、現代アートチーム 目[mé]。「わたしたち」をテーマに、気候変動、社会格差、分断、戦争、さまざま問題を抱える世界を、あらたな目線でもう一度「みる」ことにつながる芸術祭を目指すという。2023年12月10日(日)まで。
現代アートチーム 目[mé]は、2019年、千葉市美術館にて初の大規模個展「非常にはっきりとわからない」を開催、2021年にかけては、東京上空に実在する人の顔のバルーンを浮かべた『まさゆめ』を発表。不確かな現実世界を引き寄せ、見ることで世界を揺らがせる作品を多く手がけている。
「さいたま国際芸術祭2023」のメイン会場となるのは「旧市民会館おおみや」。ここでは、毎日入れ替わる写真作品、盆栽やインスタレーション、大ホールでは音楽ライブやパフォーミング・アーツ、映画作品などが上演され、日々変化し続けるという。
大ホールでのオープニングアクトにはテリー・ライリーが登場し、クロージングではジム・オルークのライブが行われる。11月には、倉田翠とさいたまで公募した”バレエをやめた者たち”が挑む舞台『指揮者が出てきたら拍手をしてください』、村川拓也による『仕事と働くことを演じる2』、12月にはダンサーで振付師のエム・ジェイ・ハーパーと編集者の川島拓人による「ファッションショー」など必見作が続く。
映画はテレンス・マリック、グザヴィエ・ドラン、小田香などの「わたしたち」を象徴する作品を上映している。これらの鑑賞料が、当日のチケット代に含まれているのも驚きだ(事前予約が必要な演目もあり)。
さらに「スケーパー(SCAPER)」なるものも存在するという。それは、例えばペレー帽にパイプをくわえた「絵に描いたような絵描き」風の画家など、パフォーマンスなのかそうでないのかも曖昧になる仕掛け。振付家・ダンサーの近藤良平(2022年より彩の国さいたま芸術劇場芸術監督)と都市・建築研究者の田口陽子も参加。毎日どこかに現れ、どれがスケーパーなのか、あるのかないのかも、見る者に委ねられる。なおスケーパー研究所も開設されているので、のぞいてみて。
そしてこれまで、観客を含めた状況/導線を重視した作品を手がけてきた目[mé]。メイン会場には、透明な仕切りで作られた「導線」が用意されている。作品へと続く「導線」として、また、大ホールの客席横や舞台の裏、廊下などにも「導線」が張り巡らされているのだ。リハーサルなども公開されるため、訪れた人たちは、仕切りの向こうに何かを見るかもしれない。もしくは仕切りの向こう側から、見られるのかもしれない。
目[mé]は「”すべてを見ることができない芸術祭であること”を積極的に仕掛けていきたい」とコメントを寄せている。
「みる」ことを問いかけ、「みる」ことに向き合う。みている「わたし/わたしたち」を露わにする。「さいたま国際芸術祭2023」は、12月10日(日)まで開催・変化し続けているので、ぜひ何度も訪れてほしい。
さいたま国際芸術祭2023
期間/2023年10月7日(土)~12月10日(日)
会場/旧市民会館おおみや、さいたま市内各所
URL/artsaitama.jp
メイン会場/旧市民会館おおみや
住所/埼玉県さいたま市大宮区下町3-47-8
開館時間/(日・火~木)10:00~18:00、(金・土)10:00~20:00 月曜休(祝日の場合は開館、翌日休館)
チケット/(1日券)一般2,000円、さいたま市民1,500円 (フリーパス)一般5,000円、さいたま市民3,500円
※チケットの料金にはメイン会場・大ホールでの公演鑑賞料が含まれています。
事前予約が必要な演目がありますので、詳細はHPなどでご確認ください。
※高校生以下、障がい者手帳をお持ちの方および付き添いの方(1名)は無料
Text:Hiromi Mikuni