「石内都 初めての東京は銀座だった」@資生堂ギャラリー | Numero TOKYO
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「石内都 初めての東京は銀座だった」@資生堂ギャラリー

「銀座のミタケボタン」2022
「銀座のミタケボタン」2022

銀座・資生堂ギャラリーにて、「石内都 初めての東京は銀座だった」展が開催中。写真家・石内都が、銀座の記憶につながるものや、銀座を象徴するものたちを写した作品が展示されている。2023年10月15日(日)まで。

「月光荘の絵具」2022
「月光荘の絵具」2022

石内が大切に保管していたレコード、戦時中の月光荘の絵具、資生堂パーラーのオムライスに銀座天一の天ぷら、ミタケボタンのアンティークボタン、銀座や新橋の芸者の方々から譲り受けた着物を生かしたスカジャン、銀座もとじの草履、資生堂の「香水 花椿」の瓶……。

「石内都 初めての東京は銀座だった」では、写真家・石内都が、自らの銀座の記憶につながるものや、銀座という街を象徴するものたちを写した約30点が展示されている。資生堂の企業文化誌「花椿」のウェブ版での連載「銀座バラード」のために撮り下ろしたものからセレクトされた、未発表作品を含むオリジナルプリントだ。

オムライスの表面、天ぷらの衣から覗く黒光りする茄子、宝物のように輝くボタン、レコードに記された15歳の頃の石内のメモ。ディティールに寄ったり離れたり。眼差しや、切り取った断片から、銀座という街の歴史や記憶が立ち上がってくるようだ。

「銀座のスカジャン」2022
「銀座のスカジャン」2022

1970年代より活動を続ける石内は、思春期を過ごした横須賀の街、古いアパート、赤線地帯を写した粒子の粗いモノクロ写真をはじめ、80年代以降は、同じ年に生まれた女性の手足、身体に残る傷跡、母の遺品、原爆で残された広島の遺品などを写してきた。

本誌2021年6月号「見て感じるボディ」では傷跡を写した『Innocence』を紹介している。彼女の作品に向かうたび、ただ見えているものだけではない、複雑な体験の重なりがある。

「銀座のスカジャン」2022
「銀座のスカジャン」2022

かつて、作品について、ドキュメンタリーではないと語ることも多かった石内だが、今は、記録・伝達という写真の役割について、それも受け入れ、写真に対してもっと自由でいたいと思うようになったという。

2023年は関東大震災から100年目にあたる。銀座は、震災や戦禍を経てよみがえった街であり、今はコロナ禍の影響からも戻りつつあるとき。石内都が写真に留めた、銀座の痕跡を、ぜひオリジナルプリントで見てほしい。

石内都 初めての東京は銀座だった
期間/2023年8月29日(火)~10月15日(日)
時間/平日11:00~19:00 日・祝11:00~18:00 
毎週月曜休(月曜日が休日の場合も休館)入場無料
会場/資生堂ギャラリー
場所/東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
TEL/03-3572-3901
URL/gallery.shiseido.com/jp/?rt_pr=trn65

Text : Hiromi Mikuni

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