森山大道のコラボ作品も。アルフレド・ジャー個展@SCAI PIRAMIDE(東京・六本木)
アーティスト、建築家、映像作家として知られるアルフレド・ジャー。第11回ヒロシマ賞の受賞記念展(広島市現代美術館)、そしてチリ国立サンティアゴ美術館での回顧展に合わせた個展「終3」が、東京・六本木のSCAI PIRAMIDEにて開催中。ジャーの新作彫刻に並び、長年の友人である写真家・森山大道とのコラボレーション作品を初公開中だ。
ミニマリズムの厳格な語彙を用いて、文化や政治の危機的状況を表現する学際的なプロジェクトを展開するアルフレド・ジャー。社会的不公正に関する彼の一貫して献身的なリサーチは、偏向したメディアソースが作り出す情報の闇を暴き出し、人道的な洞察を通して現実の周縁に光を当てている。
日本国内では、2023年4月、東京・中目黒に誕生した「FARO WORKPLACE」のオープニングを記念し個展が開催されたことも記憶に新しい。
本展は3つの章で構成され、それぞれがヒューマニティー、写真、そして私たちの知る世界の終焉として描かれるという。
約3メートルの金属製ライトボックスに固定された、帯状に連なる半透明のスチル写真『Silent Flash』 (2023)は、広島を中心とした近代政治史に言及したもの。爆心地の近くに残る原爆ドーム(広島平和記念碑)の空撮イメージが映し出されているが、なんとこの建造物をドローン撮影することを許可されたのはジャーが史上初めてだという。
また森山大道とのコラボレーションとなるインスタレーションも公開。ギャラリー空間を赤い照明が灯る暗室に作り変え、森山の写真集『写真よさようなら』(1972)から「アレ・ブレ・ボケ」に特徴付けられる複数のイメージが浮かび上がる。赤い光を灯すのは、森山へのオマージュとしてジャーが制作した彫刻作品『Bye Bye Photography』(1988)だ。
最終章では世界初公開となる彫刻作品『The End of the World』(2023)が展示。持続可能な目標への移行に必要な「重要な原材料 (Critical Raw Material)」をめぐる現在の経済政策を批判し、枯渇しつつある資源がいかに政治的危機の引き金となり、煽り続けているかを指摘する。
原爆の惨劇や人新世における採掘主義的な資源の収奪など、世界が物質的に破壊されていく予見に導かれている本展。ディストピア的な未来を告げている一方で、インスピレーションを与え、人々の心を動かす芸術の力を確信しており、それがイメージの限界を超えた新たな可能性の創造へと駆り立てているようだ。
なお同時期に、広島市現代美術館にて第11回ヒロシマ賞の受賞を記念する展覧会も開催中だ。1995年に同館で行われた被爆50年周年記念展「ヒロシマ以後」に参加し、広島のための作品を制作したジャー。これまでの代表作とともに、ヒロシマを今日の問題としてとらえるような新作も公開されている。こちらもお見逃しなく。
※掲載情報は8月2日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
アルフレド・ジャー「終3」
会期/2023年7月29(土)〜 9月30日(土)
会場/SCAI PIRAMIDE
住所/東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F
開館時間/12:00〜18:00
休館日/日、月、火、水、祝日、および夏期休暇2023年8月10日(木)〜 20日(月)
URL/www.scaithebathhouse.com/ja/exhibitions/2023/07/alfredo_jaar_end3/
【作家関連情報】
第11回ヒロシマ賞受賞記念アルフレド・ジャー展
会期/2023年7月22日(土)〜10月15日(日)
会場/広島市現代美術館
URL/www.hiroshima-moca.jp/exhibition/alfredo_jaar
Text:Akane Naniwa