強さと儚さが宿る、「DIOR」2023/24年秋冬 オートクチュール コレクション
ディオールが、7月3日(月)15時(現地時間)に2023-2024年秋冬 オートクチュール コレクションを発表した。動物、女神などすべて手刺繍で製作されたマルタ・ロベルティの巨大なアート作品が覆い尽くす会場には、アンバサダーの中谷美紀やナタリー・ポートマン、エリザベス・デビッキ、ナディア・テレスキウィッツなど世界中から豪華なセレブリティが来場した。
古代神話がインスピレーション源になった今回のコレクションは、世界を導いてきた女神たちの足跡を辿るかのように、モデルが神聖なる歩みを進め幕を開けた。ファーストルックで登場したのは、聖職者の衣装を想起させるホワイトのドレスにケープを纏ったスタイル。ジャケットやコートは、胸の下に施した折り目によって立体的なシルエットに仕立てられている。
ベーシックなスタイルの中でも主役級の存在感を放つのが、袖やドレスにあしらわれたプリーツだ。古代の彫像や円柱のフルーティングを想起させるような滑らかで繊細な作りは、細部への本質的なこだわりを感じさせる。
清純を象徴するパールが、60年代のリバイバルを思わせるようなきらめきを放ち、ロングスカートやドレスを華やかに彩る。時には人の手が加えられていない、自然の断片を表したような細やかな刺繍があしらわれ、装いをさらに魅力的に引き立てている。
有機的なラインを描き、女神の持つ強さや儚さを象徴するようなジュエリーが手や首もとを飾り、より神聖な美しさを表現する。
ウイメンズ クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリが古代神話を再解釈することで生まれた今回のコレクションは、現代の儀式となり、強さと脆さを同時に表すものとなった。彼女自身の理想の実現を目指し生み出されたアイテムたちは、過去に想いを馳せつつ、感性とディテールへのこだわりに満ちた未来へのビジョンへと私たちを導く存在となるだろう。
Text:Saki Tanaka