山崎育三郎が語る、ミュージカル俳優に必要なこととは?
2017年からニッポン放送でスタートしたラジオ番組『山崎育三郎のI AM 1936』が待望の書籍化。“素顔の山崎育三郎が聴こえる”をテーマに、リスナーの歌にあわせてピアノを弾いたり、芸人やミュージシャンたちとのびのびと弾き語りをしたり、野球や青春時代、プライベートにまでカジュアルに語る人気番組の5年間の歩みが一冊になった。トークエッセイあり、ゲストとの対談あり、グラビアありと盛りだくさんな本書の中から一部を抜粋してお届け。
ミュージカル俳優になるには?
インタビューとかでよく「どうしたらミュージカルで活躍できますか?」って聞かれるんですけど、最初に思い浮かぶのは、運が良かっただけ。本当にそう思っています。
ただ、それだけじゃなくて、歌とお芝居とダンスができなきゃいけない。この3つは急にできるようになるものじゃなくてトレーニングが必要だから。自分の場合は子どものころから毎日レッスンをやっていて、練習をしなかった日はなかったんです。ピアノを始めてからは、学校にこもって何時間も毎日練習していたから、やっぱりそういう技術を磨く時間を持たないとミュージカルはできないです。
だから、ミュージカル俳優はアスリートのようにストイックな人が多いですね。でも、その3つをちゃんと練習しておいたことで、僕の場合は今、ミュージカルの歌の部分だけで歌手としてコンサートをやらせてもらったり、芝居のところだけでドラマに出たり、いろんなジャンルの仕事にチャレンジできてる。なので、ミュージカルを目指すことで、エンターテインメントのいろんなジャンルで輝ける可能性が開かれると思うんです。
あと、恋愛に限らず、人生の経験がお芝居に滲み出てくると思うので、ミュージカル俳優になるなら経験豊富なほうがいいですよね。役者って「なんでこの人はこうなったのか」って深いところから掘り下げていくので、人間観察をするとか、想像力を膨らませていく作業も大事なんです。
とにかくがむしゃらに突き進んだ20代
20代半ばはミュージカルをメインにしていた時期なんですけど、帝国劇場で『ダンス・オブ・ヴァンパイア』に出演していました。あと、青山劇場でやった『コーヒープリンス1号店』では、高畑充希ちゃんとダブル主演を務めました。もう充希はね、テレビで大女優になりましたけど、当時はそんなに出てない時期で。あと『ミス・サイゴン』のクリス役。
いや、このころは自分がテレビに出ていくなんて想像もしてなかったですね。25〜26歳から、ミュージカル界という自分が今いる世界のことも少しずつ見えていって、ガムシャラにやっていたところから変化していってることを実感できる年齢になったなと思った。後輩も少しずつできてきたし、おもしろくなってきた時期というか。ミュージカル界を楽しめるようになってきたころだったかな。
でも、20代ってどういうふうに過ごしたらいいのかな。自分の場合は「失敗してもいい」と思っていましたね。「もっとやれ」とは絶対言われたくなくて。ミュージカルの稽古なんかでも、演出家の方に「もっと」と言われることはやりたくなくて「そんなにやるな」とか、「そうじゃなくて、こっちの方向で」って言われるように、とにかく挑んでいく。自分が何者かもわからないし、どういう表現ができるか、どんな役者かということもないので、とにかく前へ前へというのを心掛けていたかな。
あとは、少しでも興味が湧くものはなんでもやってみる。そんなところかな。30代は30代のおもしろさがある。20代で挑戦して恥をかいた経験が多ければ多いほど、30代では楽しいことが待ってるような気がする。