お見逃しなく! ティルマンスの個展は6月11日(日)まで
写真の新たな表現を開拓し続けるヴォルフガング・ティルマンスの個展が、東京・表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京にて6月11日(日)まで開催中。建築やアートに造詣の深いライター、青野尚子がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2023年4月号掲載)
作品も人柄もフラットな写真
「僕の作品を買ってくれたんだって? どうもありがとう!」。2015年、国立国際美術館でティルマンスにインタビューしたときの彼の第一声がこれだった。それから8年、東京のエスパス ルイ・ヴィトンでの個展会場で関係者がみなティルマンスを「いい人」と評するのもうなずける。
今回はエスパス ルイ・ヴィトンの空間に斜めに2枚の壁を配し、作品をインスタレーションしている。ちょっと複雑なセルフポートレイト《London Olympics》には作者自身の脚と鏡に映り込んだ、カメラを構えるティルマンスの姿が見える。ベラスケスは《ラス・メニーナス》で堂々たる画家自身の姿を描き、ヤン・ファン・エイクは《アルノルフィーニ夫妻像》で凸面鏡に自らと弟子と思われる人物像を小さく描き込んだ。植物や岩石、貝殻などを写した写真は17世紀オランダ静物画を連想させる。ティルマンスの写真には自分の友人や無名の人々のポートレイトも多い。それらの作品は大小さまざま、額に入れられているものもあれば、プリントのまま壁に留められているものもある。美術を見る者はサイズが大きければ、あるいは額に入れられていれば重要な作品だ、と無意識に考えてしまうけれど、ティルマンスはその思い込みにちょっとした疑問符を投げかける。
今回は彼に会うことはかなわなかったが、戦争や伝染病といった現在の状況に対して彼なら何と言うだろうか。そんなことも気になる展覧会だ。
※掲載情報は5月18日時点のものです。
開館日時など最新情報は公式サイトをご確認ください。
ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」
会期/2023年2月2日(木)〜6月11日(日)
会場/エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所/東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン 表参道ビル 7F
開館時間/11:00〜19:00
休館日/ルイ・ヴィトン 表参道店に準じます
料金/入場無料
※場内の混雑防止のため、入場をお待ちいただく場合があります
※事前来館予約はこちらから
URL/espacelouisvuittontokyo.com
Text:Naoko Aono Edit:Sayaka Ito