15組によるアートを通して「ケア」を考える展覧会@水戸芸術館現代美術ギャラリー
社会とケア、そしてケアとその担い手の関係をほぐし、編み直すことを試みる展覧会「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?」が、茨城県水戸市の水戸芸術館現代美術ギャラリーにて開催中。
誰もが日々の生活の中で、あるいは人生のさまざまな場面でケアを受け取り、またケアをする機会を経験する。人間社会を支える根源的な実践といえながら、生産性や合理性を追求する近代社会の形成において、ケアの役割と担い手の存在は長く周縁化され、他者化されてきた。ケアにかかわる活動は、誰もが必要とするあらこそ、あたかも「誰か」の本質的な仕事のように自然化され、不可視化され、あるいは自己責任化されている。その「誰か」とはどのような「人間」であり、どのような「つながり」の中にあるのか。本展は15組による現代美術作品を手掛かりに、展示や関連プログラムを通して、ケアを「ひとり」から「つながり」へとひらくことを試みるという。
出品作家は、青木陵子、AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]、石内都、出光真子、碓井ゆい、ラグナル・キャルタンソン、二藤建人、マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、ホン・ヨンイン、本間メイ、ヨアンナ・ライコフスカ、マーサ・ロスラー、ミエレル・レーダーマン・ユケレス、ユン・ソクナム。
マーサ・ロスラーやミエレル・レーダーマン・ユケレスによる、1960年代から70年代の第2波フェミニズムの動きに共鳴し、「ケア」に関わる行為を家庭内へ抑圧することに異議を唱えた初期作品や、本間メイの「女性特有の痛みはなぜなくならないのか?」という問いをきっかけに妊娠・出産をする身体と社会や習慣によって植えつけられる痛みの関係を考察した作品を紹介。一貫して「私(わたくし)の記録」に注目してきたAHA!による、ある「育児日記」の再読を通してひとりの人間の記録とそれにまつわる記憶へと語りなおす「わたしは思い出す」を巡回展も開催する。
また会場である「美術館」をケアする人・ケアされる人にとっても訪れやすい場所にするべく、子育てをしながら作品制作を行うアーティストによるプロジェクトの紹介や、「ケアする人」を考えるメッセージ&ハーブの香りのお土産を配布する。こちらも併せて注目したい。会期は5月7日(日)まで。
※掲載情報は3月6日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術
―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?
会期/2023年2月18日(土)~5月7日(日)
会場/水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所/茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間/10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日/月曜
料金/一般900円、団体(20名以上)700円、高校生以下・70歳以上、障害者手帳などをお持ちの方と付き添いの方1名は無料
URL/www.arttowermito.or.jp/gallery/
Text:Akane Naniwa