「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」を見逃せない理由 | Numero TOKYO
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「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」を見逃せない理由

21_21 DESIGN SIGHTでは、2月12日(日)まで企画展「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」を開催中。現代美術作家クリストとジャンヌ=クロードが出会い、創造活動の一歩を踏み出したパリで1961年に構想し、悲願の夢でもあったプロジェクト「LʼArc de Triomphe, Wrapped, Paris, 1961–2021(包まれた凱旋門)」。その制作背景と実現に向けた長い道のりに焦点をあて、二人の人生において貫かれたものを紐解く本展を実際にパリで“包まれた凱旋門”を目にしたフォトグラファーでジャーナリストの梶野彰一がレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年11月号掲載)

クリストとジャンヌ=クロードの凱旋門以外のすべて

昨年(2021年)の9月下旬の週末のこと。僕は東京の小さなモニター越しに、凱旋門が徐々に銀色の布に包まれていく様子をライヴで長い時間眺めていました。その翌週にパリに戻ったのは、このクリストとジャンヌ=クロードによる「包まれた凱旋門」をこの目で見たいというのもありました。“変わり果てた”凱旋門と対峙した時には、見たことのないスケールのアートの偉業に、またはその異形に、言葉には出来ない感情が溢れ、その後、繰り返し通うことになりました。16日間にわたる会期の最後の週末、シャンゼリゼ大通りの一部と凱旋門を囲む環状交差点では車両が規制されました。舗道に座り込んでスケッチをする老人や美学生たち。カメラと三脚を抱えて、最も美しい撮影スポットを探す人たち。各国の言語で歓喜の会話が聞かれました。最高のサプライズだったのは、訪れた人に実際に凱旋門を包んだ銀色の布片が配られていたこと。パリの象徴であり、歴史的建築をすっぽり包んでアートに仕立ててしまうという、突拍子もないある意味馬鹿げたアイデアが現実になった様は、もはや可笑しくさえ映りました。

かねてからクリストとジャンヌ=クロードのプロジェクトを紹介してきた六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されている展覧会には、このプロジェクトにまつわる「凱旋門以外のすべて」があります。二人の出会い、凱旋門を包むというアイデアが生まれた1961年からの道のり、惜しくも二人の死後にようやく実現するまでのすべてを見ることが出来ます。包まれた銀の布と赤いロープはもちろん、現地では知りうることもなかった制作の裏側さえも。そこは二人の最新のアートを身近に感じつつ、主役の不在を惜しむ空間でした。

会場風景 撮影:吉村昌也
会場風景 撮影:吉村昌也

※掲載情報は1月10日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。

「クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門”」

会期/2022年6月13日(月)~2023年2月12日(日)
会場/21_21 DESIGN SIGHT
住所/東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
時間/10:00〜19:00 (入場は18:30まで)
*本展覧会は映像作品が多く出展されています。すべてご覧いただくとおおよそ2時間程度かかります。時間に余裕を持ってご来館ください
休館日/火
入場料/一般1,200円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
URL/https://www.2121designsight.jp/

Photos & Text:Shoichi Kajino Edit:Sayaka Ito

Profile

梶野彰一Shoichi Kajino フォトグラファー、ジャーナリスト。1970年生まれ。10代の終わりにパリに魅せられて以降、パリと東京を行き来しながら、音楽、ファッション、カルチャーのシーンと交流を続ける。「セラヴィ」を口癖に、無為の人を標榜するもフォトグラファー、ジャーナリストなどと成す。

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