デザイナー髙橋大雅の初個展を京都・建仁寺塔頭両足院にて開催
2022年4月9日に逝去した若き才能、デザイナーで現代美術家の髙橋大雅の初個展「不在のなかの存在」が、12月11日(日)まで京都・建仁寺塔頭両足院にて開催中。同時に、総合芸術空間「T.T」、HOSOO GALLERYではTaiga Takahashiのアーカイブコレクション、自身が蒐集した希少な服飾資料が展示される。
2022年春、27歳という若さでこの世を去ったデザイナーであり、現代美術家である髙橋大雅。15歳で渡英、アートやファッションを学んだ後、メゾンブランドを経て、2017年にニューヨークで自身のブランドを立ち上げた。そして、2021年秋冬シーズンに日本で本格展開したばかりだった。自らの服作りを考古学者の仕事に近いと語り、古代から今に至る人類の過去の衣服という遺物に目を向け、失われたもの、忘れられたものを掘り起こし、再び息吹を与えてきた。髙橋の思考と美意識は、衣服だけでなく、建築、彫刻、芸術へ及ぶ。それを体現しているのが本展「不在のなかの存在」だ。
会場である京都・建仁寺塔頭両足院は、生前髙橋が足繁く通い、クリエイションの刺激を受けてきた場所だ。歴史的な彫像や絵画で描写される布のドレープに着想を得た髙橋の彫刻作品を、自身が蒐集した仏像の衣紋と共に展示している。
髙橋が購入した、秋篠寺(宝亀5年建立)に安置されていた伝救脱菩薩立像の遺品に描写された布のドレープに魅せられ、古代ギリシャ彫刻、ミケランジェロ作品、仏像など西洋・東洋の古典的な彫刻のドレープ表現について考察、時代も国境を超えた伝統的な共通の美として解釈した。
また庭園には、彫刻家・イサムノグチ氏を長年支え続けた石彫家・故和泉正敏氏との共同制作である、仏像の衣紋が造形の元となっている石造の彫刻作品が既存の庭石と調和するように設置されている。
本展に合わせて、Taiga Takahashiのフラグシップ的なギャラリーの総合芸術空間「T.T」では、インスタレーション「時をうつす鏡」を開催。Taiga Takahashiのシグネチャーアイテムである、カバーオールジャケットとデニムトラウザーズのヴィンテージ・アーカイブとそれらを現代に蘇らせたアイテム、彼が制作してきた過去のコレクションアーカイヴを特別に展示している。
そして、炭鉱から発掘された1910年頃のアメリカのカバーオールを原型とし、約100年前にアメリカで始まった大量生産・大量消費の時代を物語る直線的な縫製、平面的なパターンなどの特徴を残しつつシルエットやディテールを見直したTaiga Takahashi LOT.303 COVERALL JACKET “IN THE PRESENSE OF ABSENCE”(¥55,000)を30着限定にて受注販売する。
さらに、西陣の老舗「細尾」が運営するHOSOO GALLERYでは、「Texture from Textile Vol.2 時間の衣―髙橋大雅ヴィンテージ・コレクション」と題し、彼が10代より蒐集してきた1900年代初頭の服飾資料を公開。
「Texture from Textile」とは、「織物から建築へ」をテーマとし、織物(テクスチャー)に端を発した、工芸、アート、デザイン、建築にまつわる思想の変遷を20世紀初頭に立ち返り、研究活動を展開するリサーチプロジェクト。織物の観点から建築史を再考したVol.1「コンストラクションの系譜」に続く、今回のVol.2では同時代の服飾に焦点を当てる。
1900年代初頭のアメリカ・ヨーロッパを中心に大量生産されてきた衣服。当時の生地を研究することで、日本の伝統技術や天然素材、現代の製法で再現し、100年後に残る未来のヴィンテージとなりうる服作りを目指し、探究を行ってきた髙橋の思考を辿る内容だ。
これらのインスタレーション、アーカイブコレクションを通じて、「不在のなかの存在」である髙橋大雅が描いた日本の精神性、独自の美学が浮かび上がる。
「不在のなかの存在」
会期/開催中~2022年12月11日(日)
会場/京都建仁寺塔頭両足院
住所/京都府京都市東山区小松町591
TEL/075-561-3216
時間/11:00〜17:00
入場料/無料(別途拝観料)
「時をうつす鏡」
会期/開催中~2022年12月11日(日)
会場/総合芸術空間「T.T」
住所/京都府京都市東山区祇園町南側570-120
TEL/075-525-0402
時間/12:00〜19:00
入場料/無料
「Texture from Textile Vol.2 時間の衣-高橋大雅ヴィンテージ・コレクション」
会期/開催中~2023年3月12日(日)
会場/HOSOO GALLERY
住所/京都府京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F
TEL/075-221-8888
時間/10:30〜18:00(入場は閉館の15分前まで)
入場料/無料
Taiga Takahashi
Text:Masumi Sasaki