フラワーアーティスト東信の『植物図鑑』シリーズ第5巻リリース | Numero TOKYO
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フラワーアーティスト東信の『植物図鑑』シリーズ第5巻リリース

ヌメロ・トウキョウの連載「今月のフラワー・アート」を手がけるフラワーアーティスト東信(Azuma Makoto)とボタニカルフォトグラファー椎木俊介が、10年以上にわたりライフワークとして取り組んできたシリーズ『植物図鑑』の第5巻が発売された。

世界中の人々に暗い影を落とした2020〜21年の2年間。その最中に、東と椎木の創作意欲を掻き立てたのは、たまたま手に取った伝統的な華道の源流についての本だった。室町時代に京都で発生した大飢饉の際、難民たちに粥を配り、悄然とする人々の心を慰め、生きる希望を取り戻してもらうために花を生け続ける僧侶たちがいたというのだ。奇しくも、今の私たちの直面する状況と重なる。海外での活動も多かった彼らにとって、日本に留まり、粛々と花と向き合う日々は、これまで、そして、これからの活動を見つめ直す機会となったのかもしれない。 花を生け、人々に届けることこそ、自分たちのすべきことと確信し、辿り着いたという本書。そのダイナミックな花の美しさをより強く感じられるようサイズも大きく、デザインも一新された。

最新刊のテーマは「覚醒の力」。ヌメロ・トウョウのフラワー・アート連載にも登場する《IKEBANA》シリーズや、縁起がいいとされる末広がりの扇状の作品、《PIVOT》(要や核の意)シリーズで、伝統的な日本の美のかたちを東流に再解釈。

高価なものから道端の草花までルーツの異なる花をフラットに同等に生けた《WHOLE》シリーズ。群れと名付けた《FLOCK》シリーズでは、生き抜くために身を寄せ合うかのような多種多様な植物の共同体を通じて、生命の「共生」の姿を表現する。

花に挑み続けたきたこれまでのアプローチから、花の意思を代弁するように、もう一度、命を吹き込むように、無私に生ける、花職人としての原点に立ち返った。本書に生けられた、一万本もの力強い花の生命力と美しさを感じてほしい。

『植物図鑑 第5巻』

著者/東信
写真/椎木俊介
価格/¥4,500
発行/青幻社

Text:Masumi Sasaki

Magazine

MAY 2024 N°176

2024.3.28 発売

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