作家で軍人。森鷗外の二つの顔に迫る舞台『鷗外の怪談』 | Numero TOKYO
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作家で軍人。森鷗外の二つの顔に迫る舞台『鷗外の怪談』

高名な作家として尊敬を集める 一方で、政権中枢に近い陸軍軍医総監でもあった森鷗外。言論・表現の自由を求める文学者でありながら、国家に忠誠を誓う軍人でもあるという相反する立場を生きた鷗外に注目した永井愛の作・演出による舞台が『鷗外の怪談』だ。初演は2014年。ハヤカワ「悲劇喜劇」賞および芸術選奨文部科学大臣賞(永井愛)を受賞するなど、高い評価を受けた本作が7年ぶりに再演される。

森鷗外を演じるのは、小誌でもおなじみの松尾貴史(「松尾貴史が選ぶ今月の映画」)。また、当時としては破天荒な鷗外の妻・しげに瀬戸さおり、鷗外の前に何かと立ちはだかる母・峰に木野花、そして鷗外を権力の中枢に引き上げた親友・賀古鶴所に池田成志と、実力ある個性派俳優たちが集結。さらに、味方良介、渕野右登、木下愛華が登場する。 舞台となるのは千駄木・団子坂上の森鷗外の住居「観潮楼(かんちょうろう)」。この家は、歌会を催し、文学談義に花を咲かせるサロンである一方、帝国軍医としての鷗外に近しい軍人や官僚が出入りするなど、文学者にして官僚という、鷗外の「二つの頭脳」を象徴するような場だったという。家庭生活でも妻と母の間で、良い夫、良い息子の二つの顔を持っていた鷗外。危ういバランスのなかで彼はどう生きたのか……。ある事件をきっかけに鷗外がもっとも困難に陥った数カ月を描く本作は、鷗外の内面に迫って照らし出すとともに、今を生きる私たちの困難にもヒントを与えてくれるだろう。

舞台『鷗外の怪談』

作・演出/永井愛
出演/松尾貴史、瀬戸さおり、味方良介、渕野右登、木下愛華、池田成志、木野花
問い合わせ/二兎社 03-3991-8872(平日10:00~18:00)
www.nitosha.net

【東京公演】
日程/2021年11月12日 (金) ~12月05日 (日)
会場/東京芸術劇場シアターウエスト
住所/東京都豊島区西池袋1-8-1 ℡:03-5391-2111
チケット料金/一般 ¥6,000
www.geigeki.jp/performance/theater285/

【全国公演】
11月7日(日) 埼玉/富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
12月16日(木) 長野/上田市交流文化芸術センター
12月19日(日) 山形/東ソーアリーナ
12月25日(土) 滋賀/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
1月8日(土) 兵庫/兵庫県立芸術文化センター
1月10日(月・祝) 山口/山口県立劇場ルネッサながと
1月13日(木) 静岡/富士市文化会館ロゼシアター
1月15日(土)・16日(日) 愛知/穂の国とよはし芸術劇場PLAT
1月22日(土) 北海道/七飯町文化センター
1月24日(月) 北海道/大空町教育文化会館

Text:Sayaka Ito

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