今週末まで。 亀が会場をお散歩中!? 千葉正也個展 | Numero TOKYO
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今週末まで。 亀が会場をお散歩中!? 千葉正也個展

展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生
展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生

国内外の展覧会で活躍し、大きな期待と注目を集めるペインターの千葉正也。美術館では初となる今回の個展が、東京オペラシティ アートギャラリーで開催中。美術家でコレクターの飯島モトハルがレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年4月号掲載)

展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生
展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生

千葉正也個展、あるいは亀の見る夢

「亀が会場を歩く」およそ美術展のキャッチコピーとは思えない。しかし、常に革新的であろうとする美術であれば、最も美術展にふさわしくないキャッチコピーこそが美術展にふさわしいキャッチコピーなのかもしれない。それなら納得だ。いや、納得しかけたけれどやっぱり奇妙だ。通常、絵や彫刻を見に行く展覧会の会場で生きている亀を売りにすることはない。これは変だ。行かなくては。見て確かめなくては。亀の真意を。

展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生
展示風景 ©千葉正也 courtesy of ShugoArts / 撮影:武藤滋生

会場に入るとミニ四駆のコースのような通路が会場を走っていた。それは壁を貫き足元を走り場所によっては頭上を通っていた。そして多くの絵が、亀のコースを向いていた。人間ではなく亀のために絵を見せている。我ら人間が絵を見ようと思えば必然的に亀のための絵を盗み見ることになる。しかし「亀のための作品」といっても亀に審美眼は無い。あったとしてもゆるゆるぬるぬる動くだけの変温動物の心情を毛なし猿の我々人間が斟酌(しんしゃく)することはできない。

タートルズ・ライフ #3 2013 油彩, キャンバス 東京都現代美術館蔵 ©Masaya Chiba / courtesy of ShugoArts
タートルズ・ライフ #3 2013 油彩, キャンバス 東京都現代美術館蔵 ©Masaya Chiba / courtesy of ShugoArts

通常の展示では鑑賞者は作品に対し圧倒的優位性を持っているはずなのに、この展示では化けの皮を剥がされてしまう。自分が何を見に来ているのかを常に自問自答することになる。亀のための作品を眺め、動いている亀を眺め、警備員さんを眺め、他の観客を眺める。一体自分は何を見ているのか。そして自分は誰に見られているのか? この展示を見終わった時、鑑賞者だと思っていた自分が誰かから鑑賞されている可能性を意識するようになる。我々は亀を見に来たのではない。亀を通じて、自分自身を見に来ていたのだ。

平和な村 2019-2020 油彩, キャンバス 東京国立近代美術館蔵 ©Masaya Chiba / courtesy of ShugoArts
平和な村 2019-2020 油彩, キャンバス 東京国立近代美術館蔵 ©Masaya Chiba / courtesy of ShugoArts

千葉正也個展

会期/2021年1月16日(土)〜3月21日(日)
会場/東京オペラシティ アートギャラリー[3Fギャラリー1, 2]
住所/東京都新宿区西新宿3-20-2
開館時間/11:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日/月曜、2月14日(日)(全館休館日)
問い合わせ/050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL/ operacity.jp/ag/

Text:Motoharu Iijima Edit:Sayaka Ito

Profile

飯島モトハルMotoharu Iijima 美術家、アートコレクター、スイーツコラムニスト。作家兼コレクターとして、複数のコマーシャルギャラリーで展覧会のアレンジを担当。ぬいぐるみ美術集団「ぬいぐるむ」主宰。Twitter:@mochiunagi

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