茶の湯をテーマにしたトム・サックス個展「ティーセレモニー」@ 東京オペラシティ | Numero TOKYO
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茶の湯をテーマにしたトム・サックス個展「ティーセレモニー」@ 東京オペラシティ

日本オリジナルの深遠なる文化体系――茶の湯。その道に魅せられたアーティストが作り上げたのは、現代の日用品による摩訶不思議な茶会(ティーセレモニー)空間だった...! 日本の美術館で初となる個展、そのお点前(てまえ)やいかに。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年6月号掲載)

『Pam』2013年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
『Pam』2013年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
話は16世紀へ遡る。豪華自慢の“茶会映え”の風潮に対し、日用の器づかいや極小の茶室で、革新的な美を打ち立てた男がいた。“侘び茶”の大成者・千利休。それから400年余り。一人の米国人アーティストが、その境地に現代アートの文脈から接近を図っていた。かの建築家フランク・ゲーリーの門下を経て、プラダのロゴを施した便器や、エルメスのロゴを手描きした包装紙で包んだマクドナルドのバリューセットなど、“手作り(ハンドメイド)の既製品(レディメイド)”と評される作風で名を馳せたトム・サックス。
トム・サックス近影 Photo: Mario Sorrenti
トム・サックス近影 Photo: Mario Sorrenti

2012年から本格的に茶道を学ぶなか、古き伝統の真なる発展に取り組むべく、日用品や工業用素材で茶道具を自作。500個以上もの“不完全な美”を体現した手製の茶碗をはじめ、電動の茶筅(ちゃせん)や電子式の火鉢などの茶道具、合板の茶室と露地、ボーイング747型機の設備をもとにしたトイレユニット「雪隠(せっちん)」まで、トータルな世界観をつくり上げた。

『Chasen』2015年 ©Tom Sachs Image Credit Genevieve Hanson
『Chasen』2015年 ©Tom Sachs Image Credit Genevieve Hanson

『Bonsai』2016年/『Stupa』2013年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
『Bonsai』2016年/『Stupa』2013年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery

その堂々たるお披露目の展覧会が、米国3館での巡回を経て、アーティスト念願の日本上陸を果たした。茶道の型や思想を尊重しつつ、独自の解釈で再構築に挑む破格の異才。欧米を頂点とする現代アートの文脈ゲームと、深遠なる茶の宇宙との一服の融合――そのお点前をとくとご堪能あれ。

『Kabuto』2015年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery
『Kabuto』2015年 ©Tom Sachs Courtesy of Tomio Koyama Gallery

「トム・サックス ティーセレモニー」

会期/開催中〜2019年6月23日(日)
場所/東京オペラシティ アートギャラリー
住所/東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL/03-5353-0756
URL/www.operacity.jp/ag/

以下3カ所でも連動企画を同時期開催、全4会場を巡るスタンプラリーも実施(詳細は上記サイト参照)。

「Smutshow」
会期/〜5月25日(土)
場所/小山登美夫ギャラリー

「Indoctrination Center」
会期/〜5月14日(火)
場所/KOMAGOME 1-14cas

「トム・サックス ポップアップストア」
会期/〜5月6日(月)
場所/ビームス 原宿

Edit & Text : Keita Fukasawa

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