松本幸四郎が現代メイクだけで表現する歌舞伎の魅力
歌舞伎役者、松本幸四郎が発売中の「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2019年5月号に登場。メイクアップを施した“表情”だけで歌舞伎を表現してくれた。
歌舞伎座開場130周年を迎えた昨年、37年ぶりに奇跡とも言われる親子3代の襲名披露を果たした市川染五郎改め十代目・松本幸四郎。「歌舞伎は時代によって変化し、生き残ってきた芸能」と自ら語るように、歌舞伎を表現する可能性とその探究心は尽きることを知らない。今回、従来の歌舞伎にとらわれない新しいメイクを纏って、歌舞伎の魅力を“顔”だけで表現する企画に挑んでくれた。
「通常、歌舞伎では役者が全て自分でメイクをします。それをメイクアップアーティストの鷲巣さんとコラボして、これまでも何度か試みてきました。僕が持つ歌舞伎のメイク技術と、彼女の現代的なメイク手法を掛け合わせたら、何が生まれるのかを実験しています。今回は赤と青という対照的な色をテーマに、赤は女性で柔らかさ、青は男性で強さを表したいと思いました」
歌舞伎役者にとってメイクの色は、舞台での役柄を表す重要な要素。
「歌舞伎の場合は通常、青で隈取をするのはお化けや亡霊、悪役しかありえません。そういった基本はさておき、今回は青という色、歌舞伎の技術を使ってどんな顔ができるのかということだけに焦点を絞りました。伝統芸能の歌舞伎からメイクだけを抽出したら、皆さんにどう解釈していただけるのか。歌舞伎では毎年新作が出るようになりましたが、メイクはそれほど新しいものが出ていない。こういった試みも、歌舞伎の進化につながるかと思います」
赤と青、完全と不完全、そして伝統と革新。相反する局面が融合した圧巻のビジュアルが完成した。「メイクの時間は、役に入る大切なとき。気分的なことまで変わってきます」と語るように、メイクひとつで内面から染み出る感受性や気質がこれほどまでに変化する歌舞伎という表現の魅力は、胸に迫るものがある。
発売中の「ヌメロ・トウキョウ」最新号で、その“表現力”を目撃して…。
Issue:May 2019 No.126