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Culture Post

“場の記憶”を掘り起こす建築家「田根剛|未来の記憶展」

国際的に注目を集める建築家、田根剛の2つの展覧会が東京オペラシティ アートギャラリーとTOTOギャラリー・間にて同時開催中。代表作や最新プロジェクトを紹介した、その見どころとは?(「ヌメロ・トウキョウ」2018年12月号掲載)

『エストニア国立博物館』 (2006-16年/タルトゥ)Photo: Eesti Rahva Muuseum Image: courtesy of DGT.
『エストニア国立博物館』 (2006-16年/タルトゥ)Photo: Eesti Rahva Muuseum Image: courtesy of DGT.

縄文人が暮らした地、人が育んだ都心の森、負の歴史を刻む場所……その土地に息づく記憶を掘り起こし、建築として昇華させることで、人々と社会の未来を切り開く。場と人々の考古学(アルケオロジー)から導かれる建築家・田根剛の“未来の記憶”を、二つの会場にて目撃せよ。

それは、エストニア国立博物館を訪れたときのことだった。バルト三国として知られる同国の第二の都市タルトゥ郊外、旧ソ連時代の空軍基地跡に忽然と現れた、ガラス壁の巨大な建築。建物を抜け、ただコンクリートが広がるばかりの場所に出て振り向いた瞬間、息をのんだ。これは滑走路だ。暗い過去を踏みしめて独立を果たし、未来へ向けて飛び立っていく人々の、希望の滑走路――。

『新国立競技場案 古墳スタジアム』(2012年/東京)Image: courtesy of DGT.
『新国立競技場案 古墳スタジアム』(2012年/東京)Image: courtesy of DGT.

2006年、若干26歳の日本人が、イタリア人とレバノン人の仲間とともに国際コンペで勝利を飾った。名だたる建築家の案を退けて、エストニア人たちは自らの歴史・文化的アイデンティティを、若き3人に託した。12年、彼らは2020年東京オリンピックの新国立競技場の設計案でも、最終審査(ファイナリスト)に選出された。モチーフは古墳。日本古来の記憶を呼び覚ましながら神宮外苑の森と一体となる斬新な提案が、国内外で話題を呼んだ。

『Todoroki House in Valley』(2017-18年/東京) Photo: Yuna Yagi
『Todoroki House in Valley』(2017-18年/東京) Photo: Yuna Yagi

建築には場所の記憶を継承し、未来をつくる力がある――。現在は自身のアトリエで活動の幅を広げる田根剛(※)。その代表作や最新プロジェクト、探求と実践の過程を紹介する展覧会が、2会場を舞台に開催される。「誰も見たことのない建築をつくりたい」。躍動する未来の予感が、離陸のときを待っている。

『A House for Oiso』 (2014-15年/神奈川) Photo: Takumi Ota Image: courtesy of DGT.
『A House for Oiso』 (2014-15年/神奈川) Photo: Takumi Ota Image: courtesy of DGT.

田根剛近影 Photo: Yoshiaki Tsutsui
田根剛近影 Photo: Yoshiaki Tsutsui

※田根剛は2006年にパリでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)を設立。17年、DGT.を解散し、Atelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立した。

「田根 剛|未来の記憶 Digging & Building」

会期/開催中〜2018年12月24日(月・振休)
会場/東京オペラシティ アートギャラリー
住所/東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL/www.operacity.jp/ag/

「田根 剛|未来の記憶 Search & Research」

会期/開催中〜2018年12月23日(日・祝)
会場/TOTOギャラリー・間
住所/東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
TEL/03-3402-1010
URL/jp.toto.com/gallerma

古市憲寿×田根剛が語る現代建築を読む

Edit & Text: Keita Fukasawa

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