自然光の中で生きるアート。「内藤 礼─ 明るい地上には あなたの姿が見える」 | Numero TOKYO
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自然光の中で生きるアート。「内藤 礼─ 明るい地上には あなたの姿が見える」

日常を離れ、非日常の空間で心を揺さぶる体験を味わう-。でも、内藤礼の作り出すアート体験はそればかりではない。見過ごされてきた生の営みに耳を傾け、息吹を感じること。移り変わる光の時空間が、水戸芸術館に浮かび上がる。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年9月号掲載)

『ひと』2012年 ギャラリー小柳、東京 撮影: 木奥惠三 人にはそれぞれ、ひそやかな印象を刻む記憶がある。自分の場合、それは“アートの聖地”と呼ばれる瀬戸内の島々を訪れたときのことだった。海を見下ろす丘の上、開口部のあるシェル構造の建物に足を踏み入れてしばらくたつと、まるで霧が晴れていくかのようにその光景が立ち上がってくる。床から現れ、互いにくっついては流れていく水滴たちの振る舞い。差し込む光、肌を撫でる風、体を巡る呼吸や思念。いつしか感じることを忘れていた、自分自身を取り巻く自然とその生の営みーー。


『母型』2010年 豊島美術館(豊島、香川) 撮影:森川昇

あの豊島美術館の作品『母型』のほか、中世ヨーロッパのゴシック様式を今に伝えるフランクフルトのカルメル会修道院や、アールデコ様式が美しい旧朝香宮邸を本館とする東京都庭園美術館での展示など、その場所の自然や人々の記憶と向き合い続ける内藤礼(1961年、広島県生まれ)。


『無題(母型)』2008年 三渓園 横笛庵、神奈川[横浜トリエンナーレ2008] 撮影:畠山直哉

「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」をテーマに、光や空気、水や重力などとともにある生のありようを表現し続けてきた彼女が、過去最大規模の個展を開催する。そのコンセプトは「光と生命と芸術が決して分別され得ない、地上の生の光景を見つめる空間」。なんと、美術館のホワイトキューブの大空間を舞台に、自然光のみの展示を行うというのだ。一日を通して移り変わる光のもとに出現する、人間を取り巻くあらゆる自然や生命、霊魂たちとの交歓の場。ひそやかにして確かな希望に満ちあふれたその時空間で、私たちは何を見いだすのだろうか。


『無題』2009年(2008年-) 神奈川県立近代美術館 鎌倉、神奈川 撮影:畠山直哉

「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」

全8室の会場を、絵画や彫刻などからなる一つの作品として構成。自然光が差し込む間のみ制作された作品を、自然光のみで展示するという、作家にとっても初の試み。
会期/開催中〜10月8日(月・祝)
場所/水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所/茨城県水戸市五軒町1-6-8
TEL/029-227-8111
URL/www.arttowermito.or.jp/

Edit & Text : Keita Fukasawa

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