斎藤工、金子ノブアキ、永野らによる、異才プロジェクト「チーム万力」結成!
俳優・映画監督と多才な活動をする斎藤工、ピン芸人の永野、ミュージシャン・俳優の金子ノブアキに、映像監督の清水康彦を加えた、映像制作プロジェクトチーム「チーム万力」が結成された。そんなジャンルを超えた異色の面々が登壇した、6月21日(木)、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2018」内のトークイベント「チーム万力presents ショートフィルムの未来地図」の模様をレポート。「チーム万力」とは一体どんな集団なのか?
俳優・映画監督・写真家とマルチに活躍する斎藤工、芸人の永野、ミュージシャン・俳優の金子ノブアキ。テレビCM・MV・ファッション映像など、多岐にわたり才能を発揮する映像ディレクターの清水康彦によって結成された映像制作プロジェクトチーム「チーム万力」。
イベントでは、「チーム万力」による自主制作ショートフィルム『LOHAS』『宮本』『ZERO-焼きそばしかないキャバクラ』の3本が初公開されたほか、同チームのメンバーが顔を揃えるきっかけとなった『手から光を出す魚屋さん』も上映。2016年、永野のDVD『Ω(オメガ)』に収録された本作を撮影するべく集まったのが、この4人だった。そして、満を持して、オリジナル長編映画『万力』を製作、2019年に発表することが明かされた。
最大のキーマンは、永野
会場では「永野さんのネタを、とてもカッコいいと思っていて。それを映像に展開していこうという共通意識を持っているメンバーが集まりました…が、なんで集まったんですかね?(笑)」などと冗談を交えながら「チーム万力」結成の経緯を振り返った斎藤だったが、実際に永野は最大のキーマン。
永野は大の映画通でお笑いにも精通する斎藤がかねてからファンであることを公言し、2014年には斎藤が監督を務めた映画『バランサー』、2018年には斎藤の長編映画初監督作品『blank13』にも出演。清水が演出を務めたGLAYのMV(2011年『everKrack』)には、清水たっての希望で出演しており、その清水と自身のソロプロジェクトで盟友と呼んでいい間柄の金子もまた永野のファン。さらに金子は『blank13』で音楽監督を担当。余談だが、斎藤とは同じ地元で育ち(東京は小田急線沿線出身で金子は世田谷区下北沢、斎藤は梅ヶ丘)、加えて斎藤、金子、清水は同い年であることなど、そもそもの縁も深い。
『手から光を出す魚屋さん』
(2016年)
出演/斎藤工 金子ノブアキ 永野 他
ネットで噂になっている、「手から光を出す魚屋さん」は実在した。ある晩魚屋の元に一人の男が訪れた事により、魚屋の隠された力が密かに解き放たれる。
なお、上映されたショートフィルムは、4本とも永野のコントが原案。「“永野さんをどう解釈するのか?”を考えているのが、この3人(斎藤、金子、清水)の共通項かもしれません。それを映像に落とし込めたら、誰も観たことがないキラーコンテンツになる」と、自信ありげに語る斎藤の言葉どおり、上映されたショートフィルムは永野の頭の中——常人とはひと味違った妄想と、溢れんばかりの衝動を活写した快作に。
続いて「チーム万力」による長編映画『万力』のトレーラーが来場者、取材陣に向けて初お披露目され、「『万力』という映画を作ろうとしたチーム、だから“万力”。シンプルな理由です」。そう清水がチーム名の由来を明かすと、これに斎藤が「“万力家族”にしようと思って。乗っかって(笑)」とかぶせ、会場の笑いを誘っていた。
永野によれば『万力』製作の、ことの発端は2年ほど前。「東京ガールズコレクション」にゲスト出演した際、ただでさえ美しいモデルたちが舞台裏でさらに小顔にこだわるさまを目の当たりにしたその夜、斎藤と会い、「それなら万力で締め上げて理想の顔にすればいいじゃん!」(永野)などと大盛り上がりしたことで映画化の話に発展。
『LOHAS』
(2018年)
出演/永野 吉村和彬 人見千紘 野村梓二
芸人・永野のコント「イカになった先生」が原案。原因不明の嘔吐が、山小屋の職員を次々と襲う。都会から来た男の、真の目的とは?
『宮本』
(2018年)
出演/宮本諒 永野 斎藤工 金子ノブアキ 他
町の一角にある建物に住む孤高の青年・宮本の元に、人々が訪れる。彼は一体何者なのか。我々は、宮本の内に潜む「悲しみ」を、決して忘れてはならない。宮本が奏でるホルンの音が、人々の心に触れ、共鳴する。
『ZERO-焼きそばしかないキャバクラ』
(2018年)
出演/斎藤工 金子ノブアキ 永野 他
原案は芸人・永野のコント「焼きそばしかないキャバクラ」。通い慣れた夜の店に、いつものように仲間と訪れる男達。しかし、その夜のその店は、様子が違っていた。何もない…焼きそば以外。
コンプレックスでできた妖精が捉える『万力』
それからしばらく。斎藤が主宰する移動映画館「cinema bird」開催時に永野がゲストとして出演した際、楽屋で話を詰め、後に清水も参加。ちょうど『blank13』の仕上げの時期にあった斎藤が、金子の「音楽と人柄に支えられて」自身初となる長編映画を完成させたこともあり、金子にも打診。永野いわく、「金子くんがケツを叩くというか、蹴っ飛ばしてくれた」そうで、「金子くんと一度、面と向かって打ち合わせをして。そこから何日かしか経ってないのにテーマ曲を作ってくれたんです」と、テーマ曲がすでに完成していることを報告すれば、金子は「テーマ曲、先回りパターン」とニヤリ。「みんな作品が完成したように満足しちゃって。まだ1秒も撮っていないのに(笑)」と永野がオチをつけた。
詳しい内容はまだ明かされなかったものの、自らを「コンプレックスでできた妖精」と表現し、会場中を湧かせた永野が企画・原案・脚本を手がける映画『万力』。4本のショートフィルム、イベントでの永野の言葉からは、世間に対する違和感や自身の劣等感、激しい衝動といったキーワードが、本作のテーマになりそうな予感。
〈美、それは、醜きを覆い隠すことか。否、美とは、世の醜さを、己の醜さを、全て許す事である。〉(『万力』トレーラーより)。
小顔、美脚、茶髪…ひるがえせば、欧米人への憧れ——。「日本独自のそうした習慣や風習を“逆に西洋の人はどう捉えるだろう?”とも考えます。このエッセンスはすごく面白いものになるんじゃないかと、永野さんの話を聞いたときから思っていました」(斎藤)。「日本人の持つコンプレックス、醜さだけでなく美しさも感じられるような映画に」(清水)。
最後に斎藤は、コンプライアンスが厳しい現在の日本の映画界ではチャレンジングなテーマではあるが、それをチャンスに海外でも公開したいと意気込みを。ともあれ、2019年の公開が待たれる映画『万力』。会うべくして会った4人が今度はどんな化学反応を起こすのか、楽しみ。
Text:Tatsunori Hashimoto