世界一スタイリッシュなホームレスを追った
ドキュメンタリー映画『HOMME LESS』
アメリカで公開されるや、常識を超えたとんでもない生活が話題を呼んだ映画『HOMME LESS ホームレス ニューヨークと寝た男』。元モデルであり、俳優、そしてフォトグラファーとして活動するマーク・レイ(Mark Reay)の6年間に及ぶNYのとあるアパートの屋上での生活に密着したドキュメンタリーだ。
身長188cm、ロマンスグレーのナイスミドル。スマートな身のこなしと快活な話術を操る彼は、一見すればNYに住む成功者。そんな彼の最大の秘密は、ホームレスだということ。友人のアパートの屋上に誰にも知られずに寝床を確保し、入会しているスポーツジムのロッカー4つ分が彼の所有物のすべてだ。
彼のとある1日を追うと、朝、公園のトイレで身支度を整え、カフェで朝食。日中はファッション・ウィークの現場をはしごしながら撮影し、俳優のポートレート撮影のためにロケに出かける。夕方になるとジムでシャワーと着替えをして、屋台で買った簡単な食べ物で夕食を済ます。夕食後は、夜遅くまで営業するスターバックスで、何万枚のうちわずか数点しか掲載されない写真のセレクト作業を地道に行う。ようやく作業が一区切りすると、すっかり寝静まったアパートに忍び込み、屋上にある彼にとっての”スイートホーム“を目指すのだ。
「経済的な重荷に縛られず、自由でオルタナティブな生活」と饒舌に話していたかと思えば、「いつ、どこで道を間違えてしまったのか」と自問を始めるマーク。彼が抱える複雑な心境が次第に浮き彫りになるにつれ、観る者の感情も揺さぶられる。
監督は、マークと旧知のモデル仲間で長編映画製作はこれが始めてとなるオーストリア出身のトーマス・ヴィルテンゾーン。約3年という粘り強い取材が実を結び、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭などで賞を受賞。ニューヨークの街を闊歩するマークの姿に見事マッチするジャジーなミュージックは、クリント・イーストウッドの息子でジャズ・ベーシストのカイル・イーストウッドが書き下ろした。
スタイリッシュな映像と音楽、そしてある男の半生を通して、生きるとは何かを問う作品。
『HOMME LESS ホームレス ニューヨークと寝た男』
出演/マーク・レイ
監督/トーマス・ヴィルテンゾーン
URL/www.homme-less.jp
2017年1月28日(土)より、ヒューマントラスト シネマ渋谷ほか全国順次公開