オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL ART GALLERY | Numero TOKYO - Part 3
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オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL ART GALLERY

オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL DENIM GALLERY
オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL DENIM GALLERY

『マジェスティック・ハザード』(2012年) © 2013 Kazuki Umezawa / courtesy CASHI
──今回の展示では、AR(Augmented Reality/拡張現実)技術を導入し、端末を通して作品を見ることで新しいヴィジョンを提示するとのこと。その試みがご自身の表現に及ぼす変化について教えてください。
 
「今回の個展ではAR三兄弟さんと作品を共同制作することで、自分だけでは表現できなかったデジタルの表現領域に新たに踏み込めた感覚があります。作品のコンセプトの話から繋げると、一貫して自分はネット文化やキャラクター文化におけるリアリティを絵画に落としこむ試みをしてきました。それを続ける理由は日本でしか生まれ得ないからという点と、自分がそこに他にない執着を見いだせるからの二点なのですが、震災が起こってしまってからは震災によって生み出されてしまったイメージにも執着するようになりました。自分の住む国、自分が作品を作る国だからこそ、それは自然な成り行きでした。
 日本でキャラクター文化と震災のリアリティを並行して考えて繋げていくと、別の事項というよりは新たなレイヤーを生むような相互関係にあると最近では考えており、作品を作っています。その新たなレイヤーを表現するのに、絵画の平面以外の可能性を試みることは前から考えていました。震災の起きてしまった日本で育まれ続けているキャラクター達を、画像達を、一度絵画に落とし込んだ上でARによって再びタブレット上でデジタルにかえす。この二次元と三次元の往復は今回のこの作品でなければできませんでした」
 
オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL DENIM GALLERY
オタク×アートの最前線!? 梅沢和木展@DIESEL DENIM GALLERY

『グロリアスの壁』(2012年) © 2013 Kazuki Umezawa / courtesy CASHI
──ネットというヴァーチャルな世界と、肉体の置かれた物理世界を交錯させることの目的や意味について教えてください。
 
「これは自分の制作理由の本質の事項になります。ネットは確かにヴァーチャルですが、仮想現実とは思えないくらいリアリティを感じる人種がこの世界には居ます。ネットは広大だというのは周知の事実ですが、現実も人間の想像を超える広大さと情報量を持っています。現実を模した仮想空間がネットなのだとしたら、ネットが広大なのは当たり前です。模したものだから偽物なのかというと、それも疑問が生じます。模倣されたほうに別種の強度やリアリティが生まれることは往々にしてあります。キャラクター文化もその一つです。
 自分にとって、どちらがリアルなのか、現実なのか、いつも判然としていません。それの確認作業として、作品を作っているとも言えます。
 ネットの世界と現実を分けるもの、それはキーボードでありモニターです。自分の体がデジタルの情報に触れるには、『自分』を構成する『肉体』だけでは成し得ない。何か、道具が必要になる。それが自分にはとても歯がゆいと感じます。肉体や道具を介さず、自らの意識が直接ネットやデジタルと通じて、無限のイメージを感じられたら、それが理想に近いです。

 しかし理想と違って、脳内のイメージやデジタルのイメージを人に伝えるには、モニターやプリンター、紙やインクや絵の具が必要になります。現状の技術でより最適に理想の世界を人に伝えるために、このような制作プロセスを踏み続けています。その成果が今回の個展の絵画の作品やARの作品です。とくに、AR作品はタブレット越しに触れながらも、本当のデジタルのイメージは摘めないで崩れ去ってまた再構築していくような微妙な感覚があり、できあがったいまではそれがむしろデジタルや画像の本質に近いのでは考えています。
 『画像の質感』という概念が以前からずっと気になっています。そもそも触れられないものの触り心地を言及しているので、矛盾している表現なのですが、ずっと気になっています」
 

 ……消費され、無窮の仮想空間の彼方へと埋もれていく画像たちと、東日本大震災の被災地で目にした瓦礫(がれき)の山。
 現実と虚構をめぐる因果の断片を、河原の積み石のように積み重ねながら、近くて遠いネットの彼岸へと想いを馳せる……。哀歌に例えるならばそれはまさに嗚呼……“画像海峡・超景色”……。
 日々、激しさを増すストリームの最前線で、私たちの意識もまた、さらなる混迷を深めていくことだろう。

  
DIESEL ART GALLERY EXHIBITION『エクストリームAR画像コア』梅沢和木
期間/8月23日(金)〜11月15日(金)
場所/DIESEL ART GALLERY 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
(AR開発:AR三兄弟)
 
information
03-6427-5955
HP/www.diesel.co.jp/
 

※以下、梅沢和木が参加中の展覧会も併せてチェックを。
 
六本木ヒルズ・森美術館10周年記念展『LOVE展: アートにみる愛のかたち —シャガールから草間彌生、初音ミクまで』森美術館  開催中〜9月1日(日)
http://www.mori.art.museum/contents/love/
 
特別展『手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから』東京都現代美術館 開催中〜9月8日(日)
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/145/
 

profile

深沢慶太(ふかさわ・けいた)
 
フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN新社)など。

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