2010年代、写真はどこへ行く?[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.14 | Numero TOKYO - Part 4
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2010年代、写真はどこへ行く?[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.14

I「あまり他の国では聞かないですよね。きっとマンガやアニメの影響でしょう?」   K「大衆的な価値においては、目が小さいというのは絶対的に悪いことだという(笑)。オブセッションですよね。衣食住足りている人は料理は薄味のほうがうまいと言うけれど、労働者にとっては味は濃いほうがいいのと同じで、一種の階級格差ですよ。だからキャバクラ嬢にとっては目はデカいに越したことはないんです。さらにはホストの男の子もそうなってきた」   I「今はスマホにもそういうアプリがありますよね。仮面にも目が大きく突き出したものはたくさんありますが、『砂男』じゃないけれど、目を大きく突き出すというのは、逆に目を失うことと背中合わせなんじゃないですかね」   K「それから、最近のギャル雑誌の流行として、完璧にでき上がった写真の隣にすっぴんの写真を置いているんです。ある種の意識改革というか、絶対に見せられなかったすっぴんを見せられるようになった、というのは一つの解放になっているわけですよ。作ったほうが対外的、社会的な顔なんだから、パーソナルな顔はこれでいいんだ、という。昔だったらそれはイヤだったわけじゃないですか。なんとなく、パーソナルな顔もフォーマルな顔も同じだという不文律があったと思うけれど、別だと割り切ることですっぴんも出せるんですよね。芸事のために塗りたくる舞妓さん、あるいは京劇の役者の素顔は誰も気にしないわけで。アイドルもすっぴんをさらしていますが、これも同じように、「剥がすとこんな顔」というのが恥でも何でもなくなってきたと思うんですよね。これはフェミニズムの一環というか、女性の意識改革に属することだと思いますよ」   I「今の時代の写真と仮面とペルソナの関係って、なかなか分析しがいがありますね(笑)」  

 

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伊藤俊治(としはる・いとう) 1953年秋田県生まれ。美術史家。東京芸術大学先端芸術表現科教授。東京大学大学院修士課程修了(西洋美術史)。美術史、写真史、美術評論、メディア論などを中軸にしつつ、建築デザインから身体表現まで、19世紀~20世紀文化全般にわたって評論活動を展開。展覧会のディレクション、美術館構想、都市計画なども行う。主な著書に、『裸体の森へ』『20世紀写真史』(筑摩書房)、『20世紀イメージ考古学』(朝日新聞社)、『バリ島芸術をつくった男』(平凡社)、『唐草抄』(牛若丸)などがある。
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菊地成孔(なるよし・きくち) 1963年千葉県生まれ。音楽家、文筆家、音楽講師。85年音楽家としてデビュー以来、ジャズを基本に、ジャンル横断的な音楽活動、執筆活動を幅広く展開。批評家としての主な対象は、映画、音楽、料理、服飾、格闘技。代表的な音楽作品に『デギュスタシオン・ア・ジャズ』『南米のエリザベス・テイラー』『CURE JAZZ』、『ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ』(ewe)などがある。著書に、『スペインの宇宙食』(小学館)、共著『アフロ・ディズニー』(文藝春秋)、『ユングのサウンドトラック』(イーストプレス)など。映画美学校・音楽美学講座、国立音楽大学非常勤講師として教鞭もとる。PELISSE www.kikuchinaruyoshi.net/

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