幼稚化された時代が求める「いい女」とは?[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.10
I「老人が好きだというのは、骨と一緒に寝たいとか、そういうものにも繋がりませんか? 死を愛でるという心理」
──恋人には先立たれたくないのが人間の心理なのでは?
K「フェティッシュっていうのはイメージの問題。死にそうだというイメージや、死期の近さを感じとれる人に惹かれる。イメージというのは一般的に、現実と繋がっているとされていたのが昔。現実の行為をフックにして、イマジネーションが盛り上がるという順番でことが起こっていたので、大分制限されていました。現実に起こりえないことが前提になっちゃうと、イマジネーションするのは難しい事だったんです。だから、現実のフックなくてもイマジネーション出来る人はクリエイターだった。それが今、情報過多になったおかげであらゆる人が、現実というフック無しでも妄想できる、クリエイターみたいな脳になっている。だから男も女も混沌として、好みのタイプは毎日変わってもOK」
I「さっき男性がどういう女性を求めるか?という問題設定自体が成り立たなくなってきているのかもしれないと言いましたが、恋愛観もそうした状況に対応している」
K「マーケットに大きな傾向が生じないってことですよね。例えば、居酒屋の隣の席で行われている女子会が耳に入ってくると、もの凄いファンタジックな話をしている。老け専もジャニーズ専も韓流大好きな人もいて、趣味趣向の違う彼女たちが同じグループで男の話をしている。全マーケットに、全商品が取り揃えてありますよという世の中になったということ。だから、これからの考え方としては「今自分はこういう形で売り出すので、自分のマーケットの客は誰か」を探る恋愛方法になっていくんじゃないですか。自己紹介と希望を出して応えを募れば相違がないので、あっという間に結婚しちゃったりするかもしれません。混沌といえば混沌。だけど、どのセクションもそれぞれにその流れの事情の中できているから、個人的には面白く見ています。フィックスしていたものが動いたので、何かクリエイティブするとしたら楽しい状況ではありますよね」
I「特に若い人は現実とフィクションのずれを喪失しているので、あまり偏見のない人が多いかもしれないですね」
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