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幼稚化された時代が求める「いい女」とは?[前編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.9

対談

多彩な肩書きを持ち、音楽、映画、グルメ、ファッション、格闘技などボーダレスな見識を披露するアーティスト菊地成孔と、写真、先端芸術からバリ島文化まで幅広く専門とする、美術史家にして東京芸術大学美術学部教授の伊藤俊治。アカデミックな2人が、世の中のニュースや日常の出来事、氷山のほんの一角の話題をダイナミックに切り崩しディープに展開する、かなり知的な四方山話。

 

Vol.9 幼稚化された時代が求める「いい女」とは?[前編]
萌え文化の発展、アイドル時代の再生etc.「少女趣味」が違和感なく蔓延する日本のカルチャー。そんな背景の中、男性たちはこのまま「少女趣味」に向かい続けるのだろうか? 今の日本でモテる「いい女」とは… 時代が求める女性像を探る。

 

カルチャーの幼稚化と、消失していく男性目線
 
菊地成孔(以下K)「日本って、国民的なアニメの主人公ってほとんどが少女ですよね。この少女趣味はアニメの世界に留まらず、今や「ニコニコ動画」とか「マグマグ」とか赤ちゃん言葉みたいなものほど汎用性が高くなっている。こういったカルチャーの幼稚化は、男性に影響を与えているんじゃないですか。昔の男性だったら拒否反応が出ていた小動物的で子どもっぽいイメージに対して、今の男性は全く抵抗がないですから。例えば、30代の証券会社勤務の一見普通に見える男性が、恋愛ではメールの文面に赤ちゃん言葉を使っていたりする。それを誰も気に留めないというか、麻痺しちゃっています」
 
伊藤俊治(以下I)「男を精神にも肉体にも実装できない感じですね。人間の本能の意味や性欲の追求の仕方も異なってしまった。成熟した男らしさを考えて行動している人なんて、もういないんじゃないですか。これって日本独特の動きのような気がします」
 
K「幼稚化に関して言うと、日本は異様なほどに加速しましたよね。ただしその背景にあるのは、アメリカのカルチャーの幼稚化。発端は1955年、マクドナルド、ミスタードーナッツ、ディズニーランドが同時に立ち上がり、時を同じくしてビルボードが集計を開始します。それまでかなり大人文化でヨーロッパの真似に必死だったアメリカが、この年から一変するんです。それまで紳士のたしなみとされていた音楽も、ヒットチャートの発表とともにレコード盤が廃れドーナツ盤が売れ始め、エルヴィス・プレスリーをはじめとするロックンロールが台頭。ティーンエイジャーのためのカルチャーとして玩具化、駄菓子化していきました。そんなアメリカのチャイルドカルチャー化に、ヴィヴィッドに反応したのが日本。とは言っても、日本は独自の根拠によって幼稚化していったのでアメリカも追い越しちゃって歯止めが利かなくなっている。後先考えず子供っぽくしてしまったのが20世紀。それらにどう帳尻を合わせて行こうかと奮闘しはじめたのが21世紀。幼稚化を阻止しようと、最近では大人戻し化っていうのも目立ち始めましたよね」
 
▶続きを読む/幼稚化に対する、大人戻し化の動きとは?

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