デザイナーとして何にも代え難い達成感。思い描いていたものが形になる時、それはハッピーの瞬間。 | Numero TOKYO
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デザイナーとして何にも代え難い達成感。思い描いていたものが形になる時、それはハッピーの瞬間。

22歳でパリの社交界にデビューし、昨年秋には日本の伝統技術と革新的なデザインを融合させたブランド「URAMUNÉ」を発表した浦宗美幸さん、郁枝さん。才気溢れる双子の姉妹が自ら切り開いてきた道と、自身に掲げるマニフェストとは。

———— ファッションや美容への関心は昔から高かった?

美幸さん「子どもの頃からロアルド・ダール(イギリスの小説家)や『ハリーポッター』など、想像力をかきたてられる本に夢中でしたね。それと同時に、美術館に足を運んでアートに触れるのも好きだった。自宅に飾ってあった(グスタフ・)クリムトの『接吻』もその一つで、気づいたらその絵のなかにあるゴールドやエキゾティックな紫、緑といった色彩に傾倒するように。この頃の経験が、デザインする上での美学に反映されていますね」

郁枝さん「デザイナーという職業については、ディズニーの『101匹わんちゃん』に登場するクルエラが子どもながらに印象的でした。実際に、両親を説得してダルメシアンを飼ったほど(笑)。高校卒業後はエスモード(ジャポン)でその技術を学びましたが、そこで『日本の伝統を継承していくことも大事』と先生方が話されていたのです。当時はピンときませんでしたが、今ではその言葉がブランドフィロソフィーの起点となっているのは面白いですね」

———— 着物をベースとしたデザインは、なにがインスピレーションに?

美幸さん「20歳のときに、1カ月ほどヨーロッパを周遊したのですが帰国後、日本の伝統工芸やアートに改めて触れたときに、それまであまり感じなかったフレッシュさやデリケートさに気がつき、魅力的に感じました。そこから日本の着物や美について調べ始めましたが、私たちが好きなクリムトをはじめとするアーティストが日本の琳派、当時流行したジャポニズムから影響を受けているということを知り、知らずに心惹かれていたもののエッセンスはそこだったのかと。繊細さと大胆さの両方が存在する日本の感性が改めて心に響きました」

郁枝さん「その頃、家で羽織れる着物のローブが欲しかったのですが、デザインが素敵でもポリエステル素材だったり外国製だったりで、納得のいくものがありませんでした。日本起源の着物なのに『どうして“本物”がないんだろう?』って。とはいえ、着物そのものを羽織るわけにはいかない。であれば、作ってしまおうと決意したことで、デザインの方向性が決まったのです」

———— 実際に作るにあたって苦労したことも多かったのでは。

美幸さん「コネクションも何もないゼロの状態だったので、まずはリサーチをして京都北部の丹後で織り元を訪ねるところからスタート。デザインもそうですが、生地も納得いくまで何回も染め直したり、表と裏地の色みが調和するよう試作を重ねたりと、細部にまで自分たちがこれだと思うものを追求しました。初めてサンプルができ上がったのが21歳でしたが、そこからローンチに至るまで4年半。時間はかかりましたが、自分が思い描いたものが現実になっていくのを見るのは、素晴らしい感覚です」

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リップは昔から、色鮮やかなマットを。浦宗姉妹が追求する美とは

 
———— 美容について、心がけていることはありますか?

郁枝さん「食べることとお酒が大好きなので、バランスを取るためにも週3回以上はジムへ。旅先ではまったく我慢しないかわりに、東京ではたまに甘いものを控えたりしますね。海外で心がけるのは、フレッシュなレモンを2〜3個絞った白湯を毎朝飲むこと。バランスが偏った体内を中和する効果があるんですよ」

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美幸さん「リップは私の表情を一番変化させてくれるアイテムなので、リップに対してはこだわりがあります。必ずバッグに3、4本はスタンバイさせているのですが、カラーはファッションや気分、レストランの照明によって変えます。テクスチャーはマットが多いですね。ツヤのある肌にグロスをのせてしまうと光が多すぎてしまうような気がして。今回、郁枝が纏ったバーガンディカラー(♯2763)は、発色が豊かなエモーショナルなレッド。ナイトシーンにも映えますし、今の気分にぴったりです」

———— では、浦宗さんの考えるハッピーとは?
 
美幸さん「黄昏れ時にテラスでワインを傾けながら過ごす時間は、この上なく幸せなひと時。自分の好きな洋服にメイクアップなら、よりリラックスした気持ちになります」

郁枝さん「夕暮れ時に、自宅でナイトアウトの仕度をする時間が好き。10代から聞いているフランク・シナトラやラテン調の音楽をバックに、メイクをして髪をとかし、最後に着物のローブを脱いでドレスアップする。実は『URAMUNÉ』のローブは、女性であればきっと楽しい時間であるはずのディナーやデート前のシーンを思い浮かべながら生まれたものなんです。女性にとって高揚感のあるひと時に、素敵なローブがそばにあったらいいなって。デザイナーとして、思い描いていたものを実際に形として表現できたことは、何にも代え難い達成感、つまりハッピーだと思っているんです」


 
———— 来たる30代をどのように迎えたいですか?
 
美幸さん「人生を謳歌している、インディペンデントな女性は魅力的。この先、仕事でもプライベートでも自分のパッションを持てることをずっと追求したいですね。充実した人生を生きていくのには、なにか情熱的になれるものがあるかないかで決まるのではないかと。挑戦はまだまだ始まったばかりですが、いかなるときも人生を楽しむ姿勢は忘れずにいようと思います」

郁枝さん「今後はもっと知識を深めていきたいですね。日本特有の技術に対してもそうだし、食をはじめとする文化もそう。そうすることで私たちのブランドも、伝統的な染色法や素材だけでなく、ほかの工芸の技術を取り入れたり、デザインの幅が広がっていくはず。将来的にはヨーロッパに進出して、日本の技法の可能性を発信したいですね」

Photos:Akihito Igarashi
Hair:Kotaro
Makeup:Yoko Mochizuki
Styling:Aika Kiyohara
Interview & Text:Nathalie Lima Konishi
Special Thanks:Crista
Editor: Hisako Yamazaki
 

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Profile

浦宗美幸・郁枝Miyuki/Ikue Uramune 1991年生まれ、東京都出身。2012年にデビュタントとしてパリで社交界デビューをした双子の姉妹。2016年に新世代に送る着物×ラグジュアリーモードを融合したブランド「URAMUNÉ」を2人で誕生させ、デザイナーとして本格的なデビューを。

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