なりたい自分になれているかは、今の私が今日と明日どうなっていたいかをクリアに想像すること。
数々の女性誌のスタイリングはもちろん、ブランドのディレクションなど多岐に渡り活躍する人気スタイリスト、辻直子さん。エレガンスの名手が考えるリップとファッションのバランス術、そして年齢の重ね方とは。
———— 早速ですが、スタイリストになろうと思ったきっかけは?
「幼い頃からとにかく洋服が好きで。両親も唯一、洋服だけに関しては『自由に好きなものを買っていいよ』と言ってくれましたね。昔から可愛い洋服を見ると何かに突き動かされるというか、気持ちがグッと高まっていたのを覚えています。スタイリストという職業を知ったのは、高校時代に眺めていた雑誌がきっかけ。“ファッションが好き”という気持ちの延長として、この職業に出合ったのかもしれませんね」
———— ご両親の影響はかなり大きいですね
「もう一つ、母から大きく影響を受けたのが実はリップとの付き合い方なんです。母はリップブラシで口角をかたどってしっかり口紅を塗る、いわゆる昔の日本人らしい女性。それこそ朝はもちろん、食後や人と会う前などきちんと塗り直す。子どもながらにその姿がとても女性らしくていいな、と憧れていました。いざ実際に私がリップと向き合う年齢になったとき、似合う色を見つけることの楽しさを感じ始めましたね」
———— では、辻さんならではの似合うリップカラーの見つけ方とは?
「撮影などのワークシーンに欠かせない赤リップはそれこそ深く考えず、直感的な“つけたい衝動”、ただそれだけなんです。今回の♯2773のようなパワフルなレッドリップは、気持ちの赴くままにラフにつけるのが良いですね。メンズTシャツ×赤い口紅のコンビネーションも、抜け感がありながらも緊張感があって好き。チャレンジングな分、昔は怖くてできなかったけど、年を重ねたことによって、いつの間にか簡単に使いこなせるようになっていたんです。
一方で、赤リップよりも♯2772のようなダスティローズは、シックでコンサバティブだからこそ、慎重になってしまうんです。アイシャドウもこういうときは陰影ぐらいにとどめて、肌にはコンシーラーを少しのせる程度。赤リップのように直感を信じることも必要だけど、この場合は自分を客観的に見つめながら、似合うバランスを見極めることが大事だと思っています」
———— ファッションとリップを上手に繋ぐためのバランス術はありますか。
「素敵だなと思う人って、なにがそう思わせるのかというと“その人らしいから素敵”なんですよね。髪の長さや肌の露出などではなく、トータルで見たときにその人の持つ雰囲気やパワーにマッチしているかということ。私の場合、何十年もずっとダークトーンのロングヘアをキープしているけれど、その分リップはカジュアルに塗る。つまりいい意味で足りない部分があった方が、くずしが効いていて似合う。その方がピックアップするファッションとも上手く馴染むんですよね」
音楽にコーヒー、そして暖かな日差し。辻直子さんが考える“ハッピー”とは
NARS パワーマットリップピグメントからインスパイアされた「NARS HAPPY TIMELINE-リップのある幸福な1日-」スペシャルコンテンツを展開中。